またも潜り込む竹中平蔵。岸田政権「新しい資本主義」の大ウソを暴く

 

「近代の超克」を目指した大平研究会

さて、この岸田流「新しい資本主義」実現の大きな柱と位置付けられているのが「デジタル田園都市国家構想」である。

「田園都市国家構想」は、岸田にとって宏池会の大先輩に当たる大平正芳首相が1979年~80年に、当時の錚々たる学者・文化人・官僚など200人余りを結集して政策研究会を作り、以下の9つのテーマで「21世紀へ向けての提言」として報告書をまとめさせた内の1つである(〔 〕内は座長)。

  1. 文化の時代〔山本七平〕
  2. 田園都市構想〔梅棹忠夫〕
  3. 家庭基盤充実〔伊藤善市〕
  4. 環太平洋連帯〔大来佐武郎〕
  5. 総合安全保障〔猪木正道〕
  6. 対外経済政策〔内田忠夫〕
  7. 文化の時代の経済運営〔館龍一郎〕
  8. 科学技術の史的展開〔佐々學〕
  9. 多元化社会の生活関心〔林知己夫〕

提言の「総説」が述べているように、9報告書を貫く基本的な問題意識あるいは時代観は、「近代を超える」というところにあった。総説は言う。

▼過去には西欧化、近代化、工業化による経済成長が強く要請される時代があった。そこではそれぞれの要請の内容が明らかで、目標とすべきモデルがあった。……明治以来のこのような状態は、主として対外的劣等感から生まれ、時にはそれを裏返した異常な独善的優越感ともなった。そこからの脱却をめざすのが、大平総理の「文化の時代」の提唱である。

▼日本で過度の中央集権化に偏った制度が採られたのは隋唐文化を大いに摂取した「律令化の時代」と、欧米文化を大いに摂取した明治以降の「近代化の時代」だけであった。

▼アメリカの明白な優越が、軍事面でも、経済面でも終了した。「アメリカによる平和」時代は終わり「責任分担による平和」時代へ。

ここには明らかに、明治以来(当時で)100年余りの、ひたすら領土拡張と経済成長を求めて行け行けドンドンで走り抜けてきた「発展途上国ぶり」をきっぱりと卒業して、文化の香り高い成熟先進国へと踏み込んでいくのだという歴史的な大転換の意識が溢れていた。

その上に立って、2.の「田園都市構想」では、梅棹(国立民族学博物館長=当時、以下同じ)の下で香山健一(学習院大学教授)と山崎正和(大阪大学教授)の2人が実際に報告書の起草に当たり、他にも飽戸弘、浅利慶太、石井威望、井出久登、黒川紀章、小林登、竹内宏なども研究員として参加して、「脱工業文明」の決め手となるべき国家・社会像として「物質的豊かさと便利さとともに、精神的・文化的豊かさを享受し、人間と自然の調和、人と人との心の触れ合いのある、総数200~300前後の個性豊かな『田園都市圏』のネットワーク」の形成を提唱したのだった。

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