またも潜り込む竹中平蔵。岸田政権「新しい資本主義」の大ウソを暴く

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岸田首相が成長戦略の1つとして掲げる「デジタル田園都市国家構想」。内閣官房HPによれば、「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていく」とのことですが、疲弊しきった地方をデジタルで救い起こすことは可能なのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、岸田首相が「引用元」とした大平正芳内閣の「田園都市国家構想」の概要を紹介するとともに、優れた思想性を高く評価。さらにその構想に「デジタル」の文字を冠しただけの現政権の姿勢を軽佻浮薄と切り捨てています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年11月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

日本政界を覆う「哲学の貧困」の深刻/例えば「デジタル田園都市構想」の浅薄極まりなさ

岸田文雄首相の旗印は「新しい資本主義」で、その中核をなすのは「デジタル田園都市国家構想」であるらしい。

「新しい資本主義」は、これまでの岸田の発言を見る限り「成長と分配の好循環」を実現することで、そうだとすると「古い資本主義」とは、日本では、中曽根康弘の国鉄・電電公社の民営化で始まって小泉純一郎=竹中平蔵コンビの郵政民営化などによって全開させられ、そしてアベノミクスにも引き継がれた、何でもかんでも規制緩和、民営化、対外自由化で資本のやりたい放題を招いた「新自由主義」ということになるだろう。

「新自由主義」によって荒廃した経済社会を修復するのが「新資本主義」だと言われても、何のイメージも湧かない。前者によっても一向に経済は成長せず、むしろ経済の格差と社会の分裂が深まったのを反省して、今後はもっと「分配」を重視するという程度のニュアンスしか伝わってこない。

しかも、その「新資本主義」を実現する中核が「デジタル田園都市国家構想」だと言うのだが、これがまた、大平正芳首相が1980年に打ち出した「田園都市国家構想」とは似ても似つかない浅薄極まりないもので、それを象徴するのが「デジタル田園都市国家構想実現会議」のメンバーに「新自由主義」の張本人である竹中平蔵=慶應大学名誉教授がちゃっかり潜り込んでいるという事実である。

「成長と分配の好循環」とは?

成長と分配の好循環では、「分配の原資を稼ぎ出す『成長』と次の成長につながる『分配』を同時に進めることが新しい資本主義を実現するためのカギ」だと、10月26日の「新しい資本主義実現会議」第1回会合に経産省が提出した資料が述べ、それを詳しく説明した図を提示している(図1)。

成長の牽引力は科学技術とりわけデジタル新技術で、地方の活性化もこれで行うことから「デジタル田園都市国家構想」とも繋がる。これで投資や消費が増え、企業の収益増、個人の所得増、国・自治体の歳入増になれば「分厚い中間層の(再?)構築」が可能となり、次への成長力が生まれる――と、まあ、都合のいいことだらけの机上の空論で、問題の焦点である「どうしたらこの好循環が動き出すのか」についてはこの図からは見えてこない。

先の総選挙では、野党は「分配なくして成長なし」と言い、それに対して与党は「成長なくして分配なし」と言ったが、これだけでは水掛け論のようなもので、だから経産官僚は「成長と分配を同時に進めることがカギ」と引き取って収めたのだろう。しかし結局、与党も野党も経産官僚も「日本経済は成長すべきである」という大前提の下でニュアンスの違いを競っているだけではないのか。

いずれにせよ、岸田の言う「新しい資本主義」の新しさとは何なのか定義が不明である。

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