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全世界が失笑。あの習近平政権が主張した「中国的民主」につける薬

アメリカ主催の「民主主義サミット」や、米英豪加と広がりを見せる北京冬季五輪の「外交的ボイコット」に対抗するかのように、「中国的民主」なるスローガンを喧伝し始めた習近平政権。しかし中国共産党が言うところの「民主」とは、私たちが用いるものとは概念自体が異なるようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、中国当局がどのような意味合いで「民主」という言葉を使っているかを、「馬鹿」の語源となった故事を引きつつ紹介。さらに彼らが何をもって「人民」と規定しているかについても解説しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年12月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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「馬鹿」の語源になった故事と瓜二つな「中国的民主」の噴飯

アメリカに加え、オーストラリア、イギリスも北京五輪の外交ボイコットを表明するなど、人権問題を理由とした五輪の外交ボイコットの輪が広がっています。

民主主義においてもっとも重要なのが人権であることは言うまでもありません。人権が守られなくては主権在民=民主は成り立たないからです。アメリカやオーストラリアの外交ボイコットは、中国が民主と人権を踏みにじっているからにほかなりません。

ところが中国は最近、「中国的民主」なるものをさかんに主張し、12月4日には「中国的民主」なる白書を発表しました。その内容は新華網などでも見ることができます。

中国的民主

しかも、ことあるごとに「中国こそ世界で最も民主的な国である」と主張しており、世界から失笑を買っています。

じつは、中国が「民主政治」を掲げて中国共産党の正当性を訴えたのは、これが初めてではありません。2005年10月に「中国の民主政治建設」という白書を発表したのが最初でした。今回発表した「中国的民主」の白書も、基本的にはこれを踏襲したものにすぎません。

中国の民主政治建設

言うまでもなく、「中国的民主」には、1989年6月4日の天安門事件における人民の民主化要求のことも、劉暁波が中国共産党に逮捕されるきっかけとなった民主化要求「08憲章」のことも書かれていません。都合の悪いことは完全になかったことにされています。

私は、これまでの著書で、中国の本質を読み解くには常に中国の主張の逆を考えればいいと述べてきました。つまり中国共産党が「中国的民主」を発表したということは、いかに中国が独裁国家であるかを証明している、ということにほかならないのです。

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中国には「鹿を指して馬となす」という有名な故事があります。秦の始皇帝が亡くなり、権力を一手に握るようになった宦官の趙高は、始皇帝の遺言を改ざんして傀儡皇帝を祀り上げますが、朝廷の臣下が、この傀儡皇帝の言うことを聞くのか、それとも実質的な最高権力者である自分の言うことを聞くか、テストを試みます。

趙高は皇帝に鹿を献上しましたが、そのとき「これは馬です」と偽ります。どうみても鹿ですから、皇帝は「鹿ではないか」と反論しますが、趙高はあくまで「馬です」と譲りません。そこで居並ぶ臣下に馬か鹿かで意見を言わせたところ、趙高の権勢を恐れるほとんどの臣下が「馬にまちがいありません」と答えたということです。もちろん趙高は、自分の権勢を恐れずに「鹿です」と本当のことを答えた臣下を後に処刑しました。

この故事が「馬鹿」の語源になったわけですが、「中国的民主」という言葉を聞くと、この故事を思い出してしまいます。「独裁を指して民主となす」というわけです。

中国共産党は人民こそが中国の主人公であるとして、毛沢東時代には「人民に奉仕する」というスローガンがさかんに叫ばれました。しかし中国共産党内部では人民に奉仕するどころか、熾烈な権力闘争と腐敗が繰り返されてきたというのが歴史の事実です。

「人民」というのは傀儡皇帝と同じお飾りであり、すべての権力を握っているのは中国共産党=趙高であり、自らの権勢の維持のために独裁を指して民主だと言い募り、人民を騙しているわけです。「人民が主」なのではなく中国共産党が「人民の主」であることを「民主」と呼んでいるのです。

ちなみに「人民」というのは「国民」とは違います。ヨーロッパで「人民」は貴族などの特権階級以外の階級を指しましたが、中国でも中国共産党が規定するところの労働者階級を「人民」と定めました。資本家やブルジョア階級は「人民の敵」でしかありません。要するに、中国共産党に従う者は人民ですが、これに反する者は人民ではないのです。だから、さまざまな価値観や複数政党で構成される国民ではなく、あくまで中国共産党支配に従う者たちが「人民」なのです。

だから中国共産党支配に楯突いた天安門事件の学生や劉暁波は人民ではなく、彼らの意思は人民の民主とは関係ないとされ、無視されるわけです。自分たちに楯突く、あるいは都合の悪い意見は「人民民主」の範囲から除外するのですから、どう考えても独裁なのですが、これを「中国的民主」という言葉で言い換えているだけに過ぎないのです。

このような本質をまったく正反対に捻じ曲げて規定するということが、中国には多々あります。たとえば文豪の魯迅が主張した中国人の「精神的勝利」というのもその一つでしょう。地主や軍閥などの支配者によって虐げられながらも、これに抵抗せず何も勝ち取ることなく、自らのプライドを保つために「精神的には勝っている」と自らを慰める態度のことです。

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「中国的民主」については台湾でも嘲笑をもって論じられています。かつて中国の民主化運動家で、北京大学の壁新聞「北京の春」の名誉編集長でもある胡平も、まったく私と同じ意見で、自身のツイッターでは、「中国では、一党独裁を守りたいなら、まず『独裁』を独裁と言わず、『独裁』を民主と言わなければならない。つまり、真実を言えず、嘘を言い、鹿を馬と言わなければならない」とツイートしました。

中國式「民主」現代版皇帝新衣 法媒:淪國際笑柄

ちなみに、かつての中華民国の国民党も、民主・人権・自由を主張、プロパガンダしていました。しかし、化けの皮が剥がれて、40年ほどで独裁政権は生涯を終えました。まったく同調されなかったのは、もちろんプロパガンダと実態が異なるからです。

毛沢東は国共合作のあいだ、孫文らの講演を目にしたことがあったものの、孫文のあだ名「孫大炮」のとおり、話はうまいものの内容がなかったと感想を述べたことがあります。国共ともに、主張と実態は正反対なのです。

京都大学出身の台湾数理学者・連根藤博士は、物理学・熱力学からビッグバン、ブラックホールの理論まで含めて、「一つの中国」つまり中国の目指す統一はエネルギーの過剰消耗によって必滅だと説いています。

いくら中国が歴代の「正統王朝」を中国史として主張しても、易姓革命と異民族王朝による支配が繰り返されてきたため連続性はありません。つまり「中国五千年」「悠久の歴史」というのもプロパガンダに過ぎず、現在は中華人民共和国が70年あまり続いただけに過ぎません。

古代から四書五経とその注疏(ちゅうそ)しかなく、現在もなお毛沢東思想や習近平思想を学ばせるという愚民教育が国策となっている国です。もちろん人民もそのことはわかっています。

1943年に作詞された革命歌に「没有共産党就没有新中国(共産党がなければ新しい中国はない)」というものがありますが、この歌をもじって中国共産党を批判する歌が地下で流行りました。以下のような歌詞です(出典は黄文雄『ジョークでわかる中国の笑えない現実』)。

共産党がいなければ新中国はなかった 共産党がいなければ新中国はなかった
共産党は勤労して私利を謀る 彼らが人民に施すのは残飯で
自分たちの子女には高官の高給をもたらす 彼らは賢良を迫害し人民を欺く
民族の背中を打ち断ち 中国の文明を腐敗させた
共産党がいなければ新中国はなかった 新中国がなければ人民はもっと幸福だっただろう

 

共産党がいなければ新中国はなかった 共産党がいなければ新中国はなかった
共産党は権力のために勤労する 共産党はひたすら官吏になろうとしている
共産党は人民を災難の方向へと導く 共産党は中国を没落へと導く
共産党は大功を好み環境を破壊する 民族の生存環境をも破壊する
独裁専制で血なまぐさい鎮圧もする 中華復興の道をも絶った
共産党がいなければ新中国はなかった 新中国がなければこの世はもっと美しい

中国人民ですら、誰も中国を民主主義社会だとは思っていないし、中国共産党が人民のための党だとは思っていないのです。

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image by: Twitter(@Lijian Zhao 趙立堅

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