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狙いを定めた中国。「情報はタダ」が日本政府の致命傷になる日

情報の重要性認識や漏洩への危機感が薄い日本ですが、その「脇の甘さ」が今後、致命傷となる可能性も大きいようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、習近平国家主席による「中国共産党の世界最強のデータセンター化」の実態を、NYタイムズの記事を翻訳し紹介。さらに日本社会に対しては「情報はタダと軽視する認識さえある」として、その姿勢に強い懸念を示しています。

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ビッグデータの覇権を狙う中国

「何気なく話していた製品が、携帯の広告に表示されるようになった」事はないでしょうか?

我々がしゃべっている言葉でさえ携帯電話は休まずに聞き耳をたてて情報を収集しているようです。恐ろしい事です。

こういったデータを蓄積してAIで分析し、その個人向けにテイラーメイドされた情報を提供することは、すでに可能になっています。さらに洗練化された方法でその人の思想にさえ影響を与えることができるようになるでしょう。

それは21世紀の最大の武器と言ってもよいものです。大量データを握るものが世界を支配するのです。

以下は2021年11月30日NYタイムズの記事からの抜粋です。

中国はすでに、ある重要な分野で米国とその同盟国を打ち負かしています。それはデータです。

 

ビッグデータは21世紀の石油であり、人工知能のアルゴリズムや経済力、国力を高めるための不可欠な資源です。このデータの源泉は、私たちです。私たちの健康記録や遺伝子配列、オンラインでの習慣、企業のサプライチェーンの流れ、電話やドローン、自律走行車が撮りためた画像などです。

 

習近平氏は、最近の法律や規則を駆使して、中国共産党を世界最強のデータセンターにしようと懸命に努力しています。

 

中国のデータを世界から遮断し、世界のデータの流れに新たな治外法権を行使し、中国で活動する外国企業を法的に窮地に追い込むことで、合法的、非合法的な方法で他国のデータを吸収しているのです。

 

2013年、国家主席に就任した直後、習氏は「広大なデータの海は、工業化時代の石油資源のように、莫大な生産力と機会を秘めている。ビッグデータ技術を制するものは資源を制し優位に立つことができる」と宣言しました。

 

それ以来、中国は大量に蓄積されたデータが中国共産党の戦略的利益に役立つようにするための枠組みを構築してきました。

 

中国は今年の9月に「データセキュリティ法」、11月に「個人情報保護法」という新しい法律を静かに制定しています。

 

これは、中国で活動する外国企業に大きな影響を与えます。海外企業が持つ中国のデータは中国国内に留まり中国政府がアクセスできるようにしなければならないのです。またデータを自社の本社に送るか、あるいは外国の法執行機関や政府に送るか否かを中国政府がコントロールできることを要求しています。

 

これらの法律の影響は明らかです。テスラやアップルをはじめとする海外企業は、中国の巨大な消費者市場へのアクセスを失うことを避けるため、中国専用のデータセンターを、時には中国機関と提携して建設することを選択しました。ゴールドマン・サックスは、米国本社へのメモの送付を禁止する圧力に直面しました。

 

米国にはデータガバナンスに関する連邦政府の包括的なアプローチはなくEUの一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)は主に消費者のプライバシーに焦点を当てています。

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では、アメリカとその同盟国の政策立案者たちは、中国への戦略的なデータの流れを制限すべきでしょうか。今のところ、バイデン政権の答えは「たぶん」です。

 

今年の夏、米国のジェイク・サリバン国家安全保障顧問は、「戦略的な競争相手(中国)は、ビッグデータを戦略的な資産と見なしており、我々も同じように見なければならない」と述べました。

 

データ問題に関する米国の外交官や通商交渉官の活動は、米国の大手ハイテク企業のプライバシー規則をめぐる欧州の国々との激しい争いが中心となっています。北京からのはるかに大きな脅威には、ほとんど対処できていないのが現状です。

 

良いニュースは、もし民主主義国家が行動を共にすれば、明らかなパラノイア(不安妄想)によって自らの進歩を複雑にしている中国よりも有利な立場に立てるかもしれないということです。

 

習近平はここ数カ月、アリババやテンセントといった中国の大手ハイテク企業を取り締まり、データを国が管理する第三者に提供することを強要しています。この取り締まりによって1兆円以上の市場価値が失われました。またこれらの企業の革新性は低下するでしょう。

 

賢明な政策は、バイデン政権が6月に発表した大統領令を強力に実施することです。そのためには、医療記録や携帯電話のアプリなどを通じて、大量の米国の機密データが中国に流れる仕組みを阻止する必要があります。これらはすべて現在、基本的に規制されていません。

 

また同盟国は、中国への流出を制限しつつ、自国内でのデータ共有を促進するために協力しなければなりません。日本の安倍晋三元首相は、ある青写真を発表しました。これは、「Data Free Flow With Trust」と呼ばれるもので、同盟国の政策とすべきものです。

 

ワシントンとその同盟国が強力な反応を示さなければ、習近平氏は将来のグローバルパワーの高みに立つことに成功するでしょう。

【解説】

中国は民主主義国の自由なデータ流通にアクセスがあるのに対して、逆がないのは不公平だという記事です。

しかし問題はそれだけではないです。

米国が自国のGAFAらの企業を警戒しているように、中国もアリババやテンセントを警戒しています。彼らの情報収集力は国を超えているからです。

そこに激烈な米中対立が加わるのですから、問題は複雑になります。

いずれにせよ、国にとっても企業にとってもデータ(情報)こそが最大の武器であることは間違いありません。日本はハードウエアの開発には強みがありますが、情報収集や分析については相当に弱い印象があります。そもそも情報はタダと軽視する認識さえあります。

それが国家や企業の致命傷にならないことを願います。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月12日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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