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2度目の敗戦危機。岸田首相「対中優柔不断」が日本にもたらす災い

岸田首相の中国に対する優柔不断な態度が、日本に大きな災いをもたらすことにつながりかねないようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、第2次世界大戦の敗戦をはじめ、日本の指導者たちが致命的な失敗を犯してきた理由を分析・解説。さらに岸田首相の近視眼的にすぎる姿勢を批判するとともに、一刻も早く北京五輪の外交的ボイコットの決断を下すべき訳を記しています。

日本が負けたのは【●●的視点】がなかったから。そして今も…

日本は戦後、GHQに自虐史観を植えつけられました。それで、いろいろ困ったことが起こりました。たとえば、

「日本が第2次大戦に負けた真の理由を分析することができなくなったこと」

なぜ?「自虐史観」というのは、要するに

ということ。それで、「日本が負けた理由」は、

で終わらされてしまった。しかし日本は、史上最悪の独裁者スターリンのソ連より悪いことをしたでしょうか?原爆投下より悪いことをしたでしょうか?大英帝国より広大な植民地をつくったでしょうか?

冷静に考えれば、「日本は悪い国だから、日本人は悪い民族だから、日本は悪いことをしたから負けた」というのが、「まったく論理的でない」ことに気づきます。

では、なぜ日本は負けたのでしょうか?

日本が負けた理由

私はかなり長い期間、「日本が負けた本当の理由」について研究しています。いろいろわかったことがあります。たとえば、

などなど、ざっくり書きましたが、敗戦の原因は山ほどあります。

こう書くと、「やはり北野は自虐史観だ」と思う人もいるでしょう。

いえ、そうではありません。私が書いていることは、「日本が負けにつながる行動をとった」という話。「日本が道徳的に悪かった」という話ではないのです。

日本が負けた理由は、いろいろいろいろあるのですが、一つ一つの「負けにつながる行動」のベースにある「見方」があります。なんでしょうか?

それは、日本の見方が、「近視眼的だった」ということ。別の言葉で、「戦術的だった」ということ。

たとえば、アメリカと南満州鉄道を共同経営するという話。日本政府が、「戦略的視点」をもっていたら、どういう決定を下したでしょうか?

当時日本最大の仮想敵は、いうまでもなくロシア帝国です。日本がもっとも恐れていたのはロシアの「南下政策」。これを防ぐための「緩衝地帯」として、朝鮮半島、満洲に進出した。

では、アメリカを南満州鉄道に入れたらどうなるでしょう。ロシアが南下してきたら、アメリカが戦ってくれるでしょう。そうなれば、どれほど日本は楽になったことか。こういう「戦略的視点」が、当時の日本にはありませんでした。

アサヒビール名誉顧問の中條高徳氏は、名著『おじいちゃん戦争のことを教えて~孫娘からの質問状』の中で、こう書いています。

日本にはもっと賢明な選択肢があったのかもしれない。たとえば、満鉄を共同経営しようというアメリカの鉄道王ハリマンの提案をそのまま受け入れていたら、昭和の歴史は大きく変わっていたのではないかとおじいちゃんには思えてならない。(p31)

今もつづく指導者の「近視眼」

日本の指導者たちの視点が「近視眼的」「戦術的」である問題は、現在もつづいています。たとえば、岸田さんは、いまだに「北京オリンピック外交ボイコット」の決断ができません。「中国の金は捨てがたい」「中国は怖い」などと考えているのでしょう。

しかし、世界はここ2年間で、はっきりと「反中トレンド」になっています。香港問題、ウイグル問題、台湾問題などで、かつては親中だった大国も、続々と反中になってきている。代表的なのは、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなど。さらに、バランス外交を志向していたインドも、昨年の国境紛争でインド兵20名が殺されたことから、はっきりと反中に変わりました。

日本は現在、はっきりとアメリカ側につくべきです。それが、日本勝利の道であり、長期的国益です(中国が勝利すれば、日本がウイグル化されるリスクすらでてきます。そうなると、天皇陛下は、ダライ・ラマ同様亡命せざるを得なくなるでしょう)。

岸田さんは、日本人らしく、アメリカにも中国にもいい顔をしようとし、逆に「狡猾な奴だ」と思われていることでしょう。

日本はかつて、ユダヤ人を大虐殺したナチスドイツを同盟国に選びました。そして今日本は、ウイグル人絶滅政策(不妊手術強制)を行っている中国に、忖度しつづけています。岸田さんのこの「近視眼的、戦術的見方」が日本に再び大きな災いをもたらすかもしれません。

私は、何がいいたいのか。日本人は概して、優しくて、勤勉で、誠実です。しかし、概して広い視点(戦略的視点)は、持っておらず、指導者たちがしばしば「致命的失敗」を犯します。そして、日本国民全般にも、そういう傾向があるといえるでしょう。

「戦術的視点」で、短期の利益を得ることはできます。しかし、長期的に勝ち続けることはできません。「戦略的視点」は、短期の利益を犠牲にしても、長期的勝利、成功、繁栄を手にすることを可能にします。皆さんも、是非「戦略的視点」を学び、身につけてください。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2021年12月21日号より一部抜粋)

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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