もうすぐ新しい年を迎え、子供がお年玉をもらう時期になってきました。お年玉を与えられるときこそが絶好の金銭教育の機会だと話すのは漫画『ドラゴン桜』の指南役として知られ、23年間の公立小学校勤務の経験を持つ親野智可等さん。親野さんは自身の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』で子供の金銭教育に役立つ3つの方法を説明しています。
お年玉・お小遣いで身につける金銭教育
お正月に子どもたちが一番楽しみにしているお年玉だが、むやみに与えるだけでは意味がない。このときこそ絶好の金銭教育の機会だ。
子どもにとってお年玉はかなりの大金であり、使い方を完全な自由放任にするのはリスクがある。とはいえ、すべてを取り上げて親が勝手に銀行口座に入れておくのもよくない。
それではお年玉をどのように金銭教育に生かすかというお話しをする前に、なぜいま金銭教育が必要なのか、金銭教育の基本は何かということからご説明したい。
買い物が金銭教育の第一歩
最初の金銭教育は、お母さんが買い物に連れて行くことだ。連れて行って、商品選び、鮮度の大切さ、表示の見方、値段の比べ方、代金の見方などを教える。
次に支払いを子どもにさせてみる。支払額に対して渡すおカネ、もらうおつりなどを考えさせながら教える。
それができるようになったら、買い物メモを渡していつも利用するスーパーなどでお使いを頼む。ただし、1人で行かせると子どもは買い物のことで頭がいっぱいになるので、周囲が見えなくなり、交通事故などの不安もある。慣れるまではスーパーの入口まで連れて行って、外で待っている方がいいだろう。
基本的な買い物ができるようになったら、だんだんとハードルを高くして、「安くて新鮮なもの」を選ばせるなど条件をつけたり、最終的にはシチューを作るのに必要な材料をメモに自分で書かせて買い物をさせよう。
買い物体験は金銭教育の土台になる大切なことだが、決して無理強いはしないことだ。1人で行くのを嫌がったら、一緒について行って商品選びをさせるなど、焦らずに少しずつハードルを上げていこう。
買い物の次がお小遣いだ。低学年のうちは欲しいものがあったらおカネを渡すというやり方でもいいが、高学年になったら、定期的に一定額を渡すようにするべきだ。それによって、おカネや欲望のコントロールを学ぶことができる。
つまり、「欲望のままにどんどん使えばおカネはなくなる」ということや「我慢してためていけばより価値のある物を買うことができる」ということを学ぶことができる。そこにこそ定額制の意味がある。
欲しいときにおカネを渡すことと定額制のお小遣いは次元の違う話だ。なかなかお小遣い制に移行できない親御さんも多いようだが、子どもの様子を見ながら少しずつ移行していくようにしたいものだ。
一番いけないのは、テストで100点を取ったら100円あげるとか、部屋を整理できたら50円あげるとか、何かと引き替えにおカネを渡すことだ。それを続けていると、「おカネをくれるなら○○する」とか「○○したらいくらくれる?」という子どもになってしまう。
定額小遣い制は計画性を養う
お小遣いとして最初から大きな額を渡すとコントロールできなくなるので、1日あるいは1週間単位で渡すとよい。そうすると、子どもは欲しいものを買うためにおカネをためるなど計画性が必要となる。
つまり、何を優先し、何をがまんするかを訓練するわけだ。欲望を抑え、がまんすることは大人になって必須の能力だ。
計画性を養うためにもお小遣い帳をつけた方がいいだろう。何をこれまで買ったのかという記録になるし、「こんなものを買っておカネを使っちゃったのか」という反省材料や、来月何を買うのかという予定表にもなる。
こうした定額制のお小遣いによる金銭教育を壊してしまうのが、おじいちゃん・おばあちゃん、あるいは親戚による臨時のお小遣いやお年玉だ。
1円単位で管理していたのに、いきなり数千円や何万円ももらったら、せっかく身につけ始めた金銭感覚が狂ってしまう。
そのため、臨時収入はお小遣いとは別に「特別会計」で処理する。すぐに使う予定がなければ、銀行や郵便局に預ける。ただし、親が取り上げて、「預けておいたよ」ではいけない。
子どもにとって何の勉強にもならないし、銀行に預けるということが実はよく分かっていない。だから、子どもといっしょに金融機関に行き、本人に名前を書かせて判子を押させ、子どもの名義で口座を開き、通帳を作っておカネを預ける経験をさせることが重要だ。
既に子ども名義の通帳があるのなら、ATMから入金する手続きを手伝ってあげる。すると、通帳の金額が増えているのが分かる。目に見える形にすることが大切だ。
お年玉をくれた人に感謝の手紙
同じ学年の子どもでも親からもらうお年玉の額は千差万別だ。3,000円以下の子もいれば、何万円ももらっている子もいる。高額のお年玉を渡すことはよくないと思うが、それぞれの家庭の事情があるのだろう。
冬休み明けのクラスでは、お年玉の額でいつも大騒ぎになる。お互いにいくらもらったと言い合っている。わたしは教師時代、そういう話が始まるといつも制止していた。
たくさんもらった子は自慢したいだろうが、それより額の少ない子やもらわない子もいるだろう。そういう友だちがどんな気持ちになるか想像できなければいけない。
低学年に対してもわたしは世の中には言うべきではないことがあると理由を話して教えた。そういう振る舞いが思いやりにつながる。
たくさんもらったからといって、それは自分の努力とは何も関係ない。親御さんはお年玉を渡した後、そのことを子どもに伝えて、学校で金額の話などしないように教えてあげてほしい。
お年玉はいくらもらったかより、どう使ったかの方が大切だ。
買いたい物があれば、いくら銀行に預けて、残りのいくらで買い物をするのか親と子どもが相談する。買った後は、お年玉をくれたおじいちゃんやおばあちゃんなどにお礼の手紙を送ることが大切だ。買った品物の写真を撮って添付すれば、さらに喜ばれる。
おカネに感謝するだけでなく、おカネをくれた相手や、その気持ちに感謝し、その感謝をちゃんと伝える。こうした気持ちや振る舞いがおカネを本当に生かすことになる。
初出「親力養成講座」日経BP 2007年12月27日
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