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落ちぶれる中国。2つの大失策で4000年の歴史を失う習近平の夢の跡

先日掲載の「習近平の止まらぬ暴走。クリスマス禁止令で世界を敵に回した隣国」でもお伝えしたとおり、その国際感覚を「ウォールストリートジャーナル」にも否定的に扱われた中国ですが、2022年にはさらに苦しい立場に置かれることが確実なようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、昨年までの米中関係を振り返りつつ2022年に世界各地で起こりうる事象を予測。中国の孤立化を含め、3つのトレンドを挙げています。

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2022年、世界はどうなる?

私はいつも、大局の話をします。大きな流れです。

1945年から1991年は、「冷戦時代」、別の言葉で「米ソ二極時代」でした。アメリカとソ連が覇権を争っていたのです。

冷戦は1991年12月、ソ連崩壊で終結しました。二極のうち一極が消滅し、一極だけ残った。1992年から世界は「アメリカ一極時代」に突入しました。

この時代は、今もつづいているのでしょうか?それとも、すでに別の時代になっているのでしょうか?そう、「アメリカ一極時代」は2008年、リーマンショックからはじまった「100年に1度の大不況」で終わったのです。

2009年、「米中二極時代」が到来しました。世界には、アメリカ、中国、二つの超大国がある。さらに2018年、ペンス副大統領(当時)の、「反中演説」から、「米中覇権戦争」がはじまりました。

今は、「米中二極時代」の「米中覇権戦争時代」です。そして、「米中二極時代」がはじまった2009年から、2020年まで、重要なファクターがありました。それは、2009年から2020年まで、「中国が有利だった」と
いう事実です。

たとえば2015年3月、「AIIB事件」が起こりました。中国が主導して作った「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)。中国は、「皆さんAIIBに入ってください!」とよびかけた。アメリカは、同盟国、親米諸国に、「AIIBに入るなよ!」と要求しました。

ところが、「特別な関係にある」といわれるイギリスが裏切った。それにつづいて、日本をのぞくほとんどすべての「親米諸国」がAIIBに入ってしまったのです。ちなみにAIIBの参加国は、すでに100か国まで増えています。この事実から、「2015年時点で、中国が有利だった」ことがわかります。

では、2020年はどうでしょうか?2020年といえば、「中国発新型コロナウイルスの年」です。しかし、中国は強権を発動し、新型コロナの感染拡大をおさえこむことに成功しました。一方、アメリカは、感染者数、死者数とも世界一でボロボロ。この事実から、2020年の時点でも、まだ中国が有利な状況であることがわかります。

2021年は逆転の年

しかし、2021年は状況が変わりました。アメリカでは、「親中」といわれるバイデンさんが大統領になった。彼は、「反日」でもある。

私は一昨年末から昨年初め、「バイデンは、確かに親中反日です。しかし、米中覇権戦争はつづいていくし、日米関係はむしろよくなります」といいつづけてきました(うそかホントか確認したい方は、2020年12月発売『日本の地政学』をご一読ください。日本が中国に勝つ、確実な方法もわかります)。

バイデンというか、側近のブリンケンさんとかサリバンさんが優秀なのでしょう。2021年、アメリカは、「反中包囲網」を強化拡大することに成功しました。日米豪印の「クアッド」が強化された。トランプ時代バラバラだったG7が再結束し、しかも反中になった。トランプ時代バラバラだったNATOが再結束し、しかも反中になった。

BBC NEWS JAPAN 2020年6月15日を見てみましょう。

北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が14日、ベルギー・ブリュッセルの本部であり、中国の軍事的脅威に懸念を示す首脳宣言を発表した。中国の行動は「全体にとっての挑戦」だとした。

このことは、とても重要です。なぜ?そもそもNATOは、「反ソ連、反ロシア軍事同盟」です。それが去年、「反中国の軍事同盟」にもなった。9月には、アメリカ、イギリス、オーストラリアの反中同盟「AUKUS」ができました。「クアッド」「G7」「NATO」「AUKUS」これらは、すべて「反中包囲網」です。

2020年まで、世界の「バランスオブパワー」が崩れていました。要するに、中国が強くなりすぎていた。バイデン政権は、1年かけて「バランスオブパワー」を回復させたのです。

自滅にむかう中国

一方の中国はどうでしょうか?これは、習近平「二つの失策」で自滅にむかい始めました。「二つの失策」とは何でしょう。

一つは、「戦狼外交」。中国は、どの国に対しても強硬なのです。それで、どんどん敵が増えています。思い出してください。「AIIB事件」があった2015年、世界の大部分の国がアメリカより中国を選びました。しかし、その後、「香港問題」「台湾問題」「ウイグル問題」「新型コロナ起源問題」などで、どんどん反中の国が増えていった。

ここ数年で、「親中」から「反中」になった国。たとえば、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなど。さらに、中印国境紛争再燃で、インドもさらに反中になりました。反中になったのは、いずれも強力な国です。

中国は最近、台湾大使館開設を許可したリトアニアを「ゾウの足の裏にいるネズミかノミ!」と呼び、バルト三国を敵に回しました。中国外交、万事こんな感じなので、今後ますます敵が増えていくことでしょう。

もう一つの失策は「共同富裕」です。最近、習近平は、こればかりですね。意味は、「皆で金持ちになりましょう」。しかし、実際は、「ただの金持ちバッシング」になっています。

そして、習近平は昨年、歴史的迷言によって、バブルを崩壊させました。その「迷言」とは、「マンションは住むためのもので、投資するものではない」です。怖い独裁者がこんなことをいえば、誰も不動産投資できなくなります。それで、「恒大ショック」が起こり、中国はバブル崩壊過程に入ったのです。

というわけで、2021年は、

といえるのです。

2022年のトレンド

では、2022年はどんな年になるのでしょうか。

まず新型コロナ。現在オミクロン株が猛威を振るっています。しかし、ワクチンがあり、飲み薬も出てきている。2020年、2021年とは、状況が異なっています。それで、20年、21年より、ずいぶんマシになっていくでしょう。経済活動の再開が進み、世界経済、日本経済復活の原動力になります。

一方、世界経済のマイナス要因は、「中国バブル崩壊」です。「経済活動再開」というポジティブ要因を、「中国バブル崩壊」というネガティブ要因が相殺する。とはいえ、「経済活動再開」というポジティブ要因の方が強く、緩やかに回復するでしょう。

世界情勢を見ると、アメリカの反中包囲網は、ますます強化され、中国の孤立はさらに進みます。注目地域は、台湾とウクライナですね。皆さんご存知のように、ロシアは、ウクライナ国境に大軍を集結させています。これは何でしょうか?プーチンは、「アメリカは中国との戦いで手いっぱいだ。ウクライナにかまっている暇はない。妥協を引き出せる」と狡猾に状況を読んでいるのです。彼の望みは、ウクライナをNATOとの緩衝地帯として残すこと。アメリカとロシアの交渉がつづいています。

というわけで2022年の世界は、

ということですね。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年1月4日号より一部抜粋)

image by: photocosmos1 / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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