この世の地獄。中国とロシアが糸引く「紛争地」で起きている惨劇

 

【東アフリカ地域の崩壊のトリガーを弾いたエチオピア・ティグレイ紛争】

親中でありながら、北京詣でに参加できていない国々があります。それはエチオピアをはじめとする東アフリカの国々です。

エチオピアについては、このメルマガでも何度か触れていますが、2020年11月4日以降、時折“まやかしの”停戦を挟みつつ、現在に至るまでティグレイ紛争が継続し、昨年6月以降はエスカレーションが止まらない状況です。

当初は国内紛争として、短期に終わるものと考えられていましたが、隣国エリトリア軍による越境しての介入、ティグレイ州のみならず、隣接するアムハラ州やアファール州での残忍な虐殺の横行、そして極めつけは、政府側による対ティグレイ民族浄化ともとれる蛮行に発展しています。

その事態に危機感を抱いた国連はティグレイ紛争を重大な危機として扱ってきましたが、例のごとく、中ロによるブロックをベースに、安全保障理事会決議には至っていません。

しかし、ティグレイ紛争により、ティグレイ州から隣国スーダンに逃れた避難民への支援と、ティグレイ州に留まり食糧支援をはじめとする人道支援を待つ約1,000万人の人々への支援の必要性では、中ロも同意しており、結果としてUN-OCHAを中心とした国連の人道支援活動が行われることになりましたが、その人道支援でさえ、エチオピア政府による妨害に遭い、おまけに国際人道支援要員も拘束されたり、攻撃対象にされたりと、最近まれにみる惨状です。

私の国連時代の元同僚の表現を借りると、まさにこの世の地獄が表出している悪夢のような状況だそうです。民族浄化、性的暴行、表現の自由のはく奪、集団虐殺…背筋が凍りそうな表現が並ぶ事態で、すでに国際社会は、エチオピアを、そしてティグレイ州をあきらめたかのように、挙ってエチオピアを離れています。

そして2022年に入っても事態の深刻化は止まりません。政府軍によるティグレイ州への空爆、そして1月12日に行われたと言われている政府軍によるドローン攻撃も、この紛争のレベルがもう一段階上がり、攻撃の執行がエチオピア政府のみによって行われておらず、国際化している様相を示しています。

ドローン兵器の投入については、12日の攻撃の情報はティグレイ州で活動する人道支援人員の目撃情報がベースになっているようですが、攻撃を受けたことは事実だと思われますが、それがドローン兵器によるものかどうかを目視で確認できたとも思えませんので、ちょっとこの情報の扱いには注意が必要です。

しかし、このドローン兵器がエチオピア政府に提供されており、それがティグレイ州に投入されているという噂は以前から存在します。

多くの場合、中国が提供したのではないかとの見解が多いようですが、実際にはトルコ製の兵器が用いられているのではないかと見ています。

それはAI兵器がもち得る非人道性への懸念から国連での交渉マターになっているLAWS(自律型致死兵器システム)の典型例であるトルコ製KARGU-2が、昨年のエルドアン大統領のエチオピア訪問時に、アビー政権に提供されたと言われており、今回、ドローン兵器と判断されたものは、もしかしたらこのKARGU-2だったのではないかという情報も入ってきています。

すでにこのKARGU-2は、シリア、ナゴルノカラバフ紛争、リビアなどで実戦配備された経験があり、今回のティグレイ紛争でも政府側の兵器として投入されている可能性が高いと思われます。

もし本当にそうだとしたら、この紛争はすでに私たちが近未来的に恐れる段階にまでエスカレートしていることになり、地域のパワーバランスを一気に変えるきっかけになるかもしれません。

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