エチオピア情勢が緊迫化する中、まさにそれに影響されるかのように、周辺国の情勢も緊迫・不安定化しています。
報道上では、その典型例はスーダンですが、独裁政権から脱して民主的な政府への移行を目指していた矢先、国軍勢力によるクーデターが起こり、首相が拘束、再任、そして離任という状況が続いています。そして国内におけるデモも過熱化し、軍による介入で多くの市民が命を落としている状況になっています。この背後にどうもエチオピア政府がいると言われています。
エチオピアとスーダンは、ナイル川の治水をめぐるルネッサンスダム問題でも係争中ですし、アビー政権になってからは、エチオピア―スーダン国境沿いにある肥沃な農業地の帰属をめぐって交戦状態にあります。エチオピアの高成長率に支えられる経済力を呼び込みたい国軍関連と、アメリカやイスラエルとの関係深化を通じて経済発展を呼び込みたいと考えた民主勢力との対立構造という火に油を注いだのが、エチオピアのアビー政権だと言われています。
エチオピアは国内情勢がもう収束不可能なレベルまで混乱していますが、その混乱の影響が、図らずもスーダンにまで汚染が広がっているともいえます。
そして12日、ソマリアも内政不安の状況に陥りました。ISの残党の仕業と言われていますが、首都での爆破テロが実行されて一般市民が多く犠牲になっています。このテロを受けて政府側の対応力のもろさが露呈し、ISとその仲間たちに対するコントロールが効かないことにより、ソマリアから周辺国に対するISの拡大の危機が顕在化し始めました。
その影響をもろに受けているのは、現在、内戦状態にあるエチオピアやスーダンだけではなく、ソマリアの隣国であり、地域の大国でもあるケニア、そしてタンザニアに広がっています。
そしてアフリカ全土を襲うコロナの感染拡大と、コンゴ発の死傷力の高いと言われる変異株の広がりが見られ始めたことで、地域の混乱への共同対応力が著しく低下しているという悪循環が襲っています。
この悪影響の波及を止めようと、ケニアやチュニジアが音頭を取って地域的な結束を保とうとしていますが、残念ながらあまり功を奏していない模様です。
先に述べたルネッサンスダム問題の当事者にはエジプトもおり、すでにアフリカの混乱は北アフリカにまで到達しています。北アフリカと言えば、モロッコのポリサリオ(西サハラ)紛争、リビアの内戦、アルジェリアの政情不安をはじめ、混乱材料の宝庫になっていることから、東アフリカにおけるデリケートな和平バランスが崩れることで、その混乱の波が一気にアフリカ全体に及び、大きな渦となってアフリカの力のリシャッフルが行われる可能性が見えてきました。
2022年は、恐らくそれが顕在化してくるのではないかと考えています。
世界はまだコロナを克服しておらず、社会・経済はまだ混乱したままですが、そのような状況下でも、私たち人間の戦う本能は休むことを知らず、残念ながら戦争・紛争も頻発傾向にあり、そして何よりも残虐化の様相を呈しているように思えます。
すでに私のところにも調停案件が数件来ていますが、どのように対応すべきか、非常に苦慮しています。
いろいろと挙げてみましたが、読者の皆さんはどうお考えになりますか?
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2022年1月7日号より一部抜粋。この続きをお読みになりたい方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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