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年金収入も確定申告が必要?対象になるのはいくら以上の受給者か

確定申告の季節が今年もやってきました。年金受給者の人にも源泉徴収票が送られてきますが、実際にどのような人が確定申告をする必要があるのでしょうか?今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、年金にかかる税金と確定申告について詳しく解説しています。

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年金の繰下げで天引きされる年金の源泉徴収税額と確定申告時の税額

こんばんは!年金アドバイザーのhirokiです。

年が変わりましたが、新しい年になると年金受給者の人には送付されてくるものがあります。

それは源泉徴収票です。

源泉徴収票は前年に支払った年金額や天引きされた所得税、社会保険料などが記載されています。

これをもって確定申告をしていただく事になります。

確定申告は必ずやらなければならないというイメージがありますが、そういうわけではありません。

公的年金収入(厚生年金、国民年金、確定拠出年金、基金等を合わせて)が400万円以下、かつ、年金以外の所得が20万円以下なら確定申告する必要はありません。その条件を満たしていたとしても、納めすぎた税金がある場合は確定申告(還付申告)して納めすぎた税金を還付してもらう事は出来ます。

ちなみにこの条件は所得税のみに当てはまるものなので、住民税については別途市区町村に申告する必要はあります。

ただし、収入が老齢とか退職年金のみの場合は、年金機構や共済から市区町村当てに支払い報告書が送付されるので、住民税の申告はする必要はありません。

また、障害年金や遺族年金は非課税なので源泉徴収票は送付されてきません。

あくまで老齢や退職にかかる年金を受給してる場合に送付されてきます。

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年金にも税金がかかるというのはけしからん!と思う人も多いですが…雑所得として所得税や住民税がかかります。

税金がかかる理由の一つとしては、今まで年金保険料を支払う事で社会保険料控除として税金を軽くする事が出来たからというのがあります。

年金保険料相当分の所得が社会保険料控除によって課税されていないんだから、老齢の年金を受ける際は課税すべきであろうという事ですね。

税制の中で言われる入口非課税、出口課税という考えです。

とはいえ、年金に税金がかかるというのはそれほど大したものではありません。

課税されるのは65歳未満の人は108万円以上で、65歳以上の人は158万円以上の人の場合が課税対象だからです。

その金額に満たない人は所得税はかかりません。

それに、年金は老後の大切な生活資金ですので年金には公的年金等控除という大きな所得控除が用意されており、税金がかかる対象でもできるだけ低くなるように配慮されています。

よって、年金に税金がかかるなんて嫌だなあ…とそこまで心配する必要は無いです。

今の新しく年金世代になったばかりの60代から70代の人でそこまで高額な年金額の人は少ないと思います^^;

ちなみに年金の手取りに影響するのは税金よりも介護保険や国保、後期高齢者医療などの社会保険料のほうが影響が大きいですね。

社会保険料はどんなに年金額が低かろうが基本的に免除にならないし、終身で支払わないといけないからですね。

さて、年金の税計算をする時は公的年金等控除という大きな控除が用意されているし、年金受給額そのものがそんなに高額な人がいないから税金はそこまで気にする必要は無い事ではありますが、年金の繰下げを受給する場合はちょっと気を付ける必要はあります。

令和4年4月1日からの制度変更で、昭和27年4月2日以降生まれの人(令和4年4月1日以降に70歳になる人)は65歳時点の年金額を75歳まで遅らせて最大で84%も増額させる事が出来ます。

65歳に貰うはずだった年金を75歳で貰うようにするという事は、10年間年金を眠らせておくという事ですね。

65歳以降1ヶ月遅らせるごとに、0.7%増えていきますので10年間の120ヶ月遅らせると84%という事です。

例えば100万円の年金が184万円になるため、非常に年金は増えますが支払わなければならない税金や社会保険料も増えます。

なので、84%増えますよ~といっても、手取りで考えると60~70%くらいはなってしまいます。ただし、収入は増えるので生活がグッと楽にはなるはずです。

支払う税金や社会保険料が増えますが、繰り下げる意味は十分にあります。

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というわけで、今回は年金の繰下げとそれに伴う税金について考えてみましょう。

1.昭和28年5月4日生まれの男性(今は68歳。令和4年に69歳になる)

(令和3年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!
絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。

15歳年度末の翌月である昭和44年4月から平成26年3月までの540ヶ月間は厚生年金に加入。なお、平成15年3月までの408ヶ月間の平均標準報酬月額は50万円とし、平成15年4月から平成26年3月までの132ヶ月間の平均標準報酬額は58万円とします。

平成26年3月31日をもって退職したあと、この男性は61歳になる平成26年5月3日に厚生年金の受給権が発生し、翌月6月分から年金が支給されます。

・61歳からの特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)→50万円×7.125÷1,000×408ヶ月+58万円×5.481÷1,000×132ヶ月=1,453,500円+419,625円=1,873,125円

なお、65歳未満で厚生年金が貰える人の内、44年以上(528ヶ月以上)の厚生年金期間があるとオマケで定額部分の年金が貰える(長期加入者特例という)。

ただし、44年以上になっても厚生年金に加入中は定額部分や加給年金は加算されないので注意。

・61歳からの特別支給の老齢厚生年金(定額部分)→1,628円(令和3年度単価)×480ヶ月(上限月数)=781,440円

更に男性が61歳時点で、65歳未満の生計維持してる2歳年上の妻(昭和26年3月14日生まれ)あり。そのため、配偶者加給年金390,500円(令和3年度価額)も付いた。

加給年金は妻が65歳になる平成28年3月分まで貰える。

本来は加給年金はこの男性の生年月日だと夫が65歳になった時に、65歳未満の妻が居たら加算されるというのが共通認識ですが、44年以上の厚生年金期間があって定額部分が加算される場合は定額部分が加算される時点で生計維持されていたら加給年金が付く。

——

※ 補足

定額部分の上限月数はなぜ480ヶ月なのか。

昭和61年3月31日で加入期間に比例した年金である定額部分の年金は廃止され、65歳以降は同じ加入期間に比例する老齢基礎年金に引き継がれました。この時に老齢基礎年金の条件にできるだけ合わせるために、加入月数もどれだけ増えようが同じ480ヶ月にそろえました。

なお、計算に使う期間や計算式が両者で異なるので、その辺の微差は65歳の時の老齢基礎年金を支給する際に、定額部分と老齢基礎年金の差額を差額加算(経過的加算)として支払います。

ちなみに、報酬比例部分には月数の制限はありません。

——

よって、61歳からの年金総額は特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分1,873,125円+定額部分781,440円)+加給年金390,500円=3,045,065円(月額253,755円。偶数月に支払われる2ヶ月分は507,510円)

——

※ 注意

今回は計算を省いておりますが、退職後は失業手当を受給する場合が多いです。
失業手当はハローワークに求職の申込をしてから受給する事になります。

ただし、求職の申込をした翌月からは失業手当を貰い切るか、退職の翌日から1年を過ぎるまでは老齢の年金は全額停止する。

よって、年金が多いか失業手当が多いかの試算を求職の申込前にやっておく事が望ましいです。
大抵の人は失業手当が多いですけどね…

ちなみに失業手当は非課税。

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さて、65歳未満で年間108万円以上の年金が貰える人は課税対象になり、毎年10月になると扶養親族等申告書が送付されてきます。
これは翌年2月からの年金からの源泉徴収額を計算するための大切な申告書です。

源泉徴収税額を計算しますが、まず「基礎控除額」を算出します(以下は令和3年度時点の計算をしています)。

・基礎控除額(計算しやすいように2ヶ月分で計算します)→年金507,510円×25%+65,000円×2ヶ月=256,877円

なお、基礎控除額は最低控除額9万円×2ヶ月=18万が最低でも使えます。

さらに、妻は所得が95万円以下だったものとし、控除対象配偶者として月額32,500円の控除が使える(2ヶ月分65,000円)。

本人や妻には障害は無いとします。

そうすると、年金額507,510円-(基礎控除256,877円+配偶者控除65,000円)=185,633円(課税所得)

課税所得185,633円×5.105%=9,476円(源泉徴収税)

偶数月に2ヶ月分の年金507,510円ー源泉徴収の所得税9,476円=498,034円で支払われる。

ちなみに社会保険料や住民税(介護保険、国保、個人住民税)が年金から天引きされるのは65歳からなので、65歳前の年金からは天引きされない。徴収は口座振替とか、厚年加入して働いてる人は給与天引きになる。

社会保険料は年間20万円支払ったとします。

この社会保険料は全額を社会保険料控除として使えますが、これを使って税金の還付を求めたい場合は確定申告(還付申告)してもらうしかないです。

さて、社会保険料を年間20万円支払ったので、これを社会保険料控除として所得税の還付をしたい場合は確定申告するしかないですが、毎年1月に年金の源泉徴収票が中旬から下旬の間に送付されてくるのでそれを使って確定申告をする。

他に生命保険料控除として年間2万円使えるものとします。

所得税の計算をしますが、まず公的年金等控除が65歳未満の場合は最低60万円使えます。

・この男性の年金額の場合の公的年金等控除額→3,045,065円×25%+275,000円=1,036,266円

公的年金等控除(国税庁)

基礎控除は48万円で、配偶者控除は38万円で社会保険料控除20万円。

・年金の雑所得→年金年額3,045,065円-公的年金等控除1,036,266円=2,008,799円

この所得2,008,799円から所得控除を引く。

年金にかかる雑所得2,008,799円-(基礎控除48万円+配偶者控除38万円+社会保険料控除20万円+生命保険料控除2万円)=928,799円(課税所得)

・所得税→課税所得928,799円×5.105%=47,415円

なので源泉徴収で引かれてきた9,476円×6回=56,856円-確定申告できちんと精算した47,415円=9,441円が還付。

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さて、この男性は平成30年5月3日に65歳になりましたが、65歳になるとそれまでの「特別支給の老齢厚生年金」から、新しく老齢厚生年金と老齢基礎年金としての年金が始まる。

ただし、老齢厚生年金と老齢基礎年金の年金を増やすためにしばらくは受給せずに年金を繰り下げ中としました。

繰下げは1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ増えますが、最低でも66歳に到達するまでは待たないといけない。たとえば66歳になる前の65歳8ヶ月とか中途半端な時に繰下げ年金8ヶ月分を増額させるというのは不可。

先に老齢基礎年金を計算。

老齢基礎年金は20歳から60歳前月までの480ヶ月間の間での被保険者期間で見る。

この男性は20歳から60歳まではずっと厚生年金に加入していた。

・老齢基礎年金→780,900円(令和3年度満額)÷480ヶ月×480ヶ月=780,900円

・老齢厚生年金(報酬比例部分)→この部分は65歳前と変わらず1,873,125円

・老齢厚生年金(差額加算)→定額部分781,440円ー780,900円÷480ヶ月×480ヶ月=540円

加給年金は妻が2歳年上ですでに妻が65歳になったので消滅したとします。

——

※ 補足

差額加算の計算は、定額部分から基礎年金に移る時に生じる差額を意味します。

——

よって、年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分1,873,125円+差額加算540円)+基礎年金780,900円=2,654,565円

この年金を65歳から75歳までの120ヶ月間繰下げします。

そうすると、計算を短縮しますが2,654,565円+2,654,565×84%=4,884,400円(2ヶ月分の年金814,066円)

あまりお目にかかれないほどの年金額になりましたが…84%の繰下げって強力ですね^^;

75歳になる令和10年5月3日の翌月6月分からの年金となります。

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さて、この年金を75歳からずっと受給するわけですが、当然税金がかかりますし社会保険料や個人住民税は年金からの天引きとなります(繰下げ中で受給していない間は、口座振替や納付書などの普通徴収で社会保険料を支払う)。

なお、社会保険料の天引き開始は年金受給が始まってから約半年から1年くらいはかかります。市役所の事務処理のために時間がかかる。

事例としてはもう75歳以降の年金から社会保険料天引きされてるものとして話を進めます。

年金額が158万円以上なので課税対象者ですから、扶養親族等申告書が当然10月ごろに送られてきます。

ちなみに申告書は提出しなくても基礎控除を使って計算するので、極端に高額な税金にはなりません。
提出してくれれば各種扶養控除を使う。

提出したとして源泉徴収税を計算します。

まず、基礎控除額→814,066円×25%+65,000×2ヶ月=333,516円。

最低でも控除は135,000円×2ヶ月=27万円が使えますが、高いほうの333,516円を使います。

妻は70歳を超えてるので老人配偶者控除4万円×2ヶ月=8万

男性本人は普通障害があり、障害者控除22,500円×2ヶ月=45,000円

年金から天引きされた社会保険料は介護保険と後期高齢者医療合わせて年間30万円(年6回の年金振り込み時に毎回5万円天引き)とします。

・課税所得→814,066円-(基礎控除333,516円+老人配偶者控除8万+障害者控除45,000円+社会保険料控除5万円)=305,550円

・源泉徴収税額→課税所得305,550円×5.105%=15,598円を毎回年金から徴収する。

年間で源泉徴収する所得税は15,598円×6回=93,588円

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さて、年金収入が400万円以上なので必ず確定申告しないといけない。

確定申告時の公的年金等控除を計算する。

・公的年金等控除→4,884,400円×15%+685,000円=1,417,660円

・年金にかかる雑所得→4,884,400円-公的年金等控除1,417,660円=3,466,740円

基礎控除48万円、老人配偶者控除48万円、社会保険料控除30万円、障害者控除27万円。

・課税所得→3,466,740円-(基礎控除48万円+老人配偶者控除48万円+社会保険料控除30万円+障害者控除27万円)=1,936,740円

よって、所得税は1,936,740円×5.105%=98,870円となり、源泉徴収よりも多くなったのでちょっと追加で支払わないといけないですね。

というわけで、75歳までの繰下げで年額400万円以上の年金になったので、どれほど高い所得税になるのか…と思ったんですが、結構低く抑えられましたね(結構控除を使ったからかもですが…^^;)。

他に住民税も支払わないといけないですが、年金にかかる住民税は年金からの天引きになります(住民税に関しては市町村の市民税課に問い合わせを)。

※ 追記

個別の税務相談は税理士さんや税務署にご相談ください。

それでは今日はこの辺で。また来週お会いしましょう。

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image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【月額】 ¥770/月(税込) 初月有料 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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