不気味な中国の動き。ロシア「ウクライナ侵攻」に沈黙を貫く隣国の思惑

 

欧米の首脳は挙ってロシアを非難しつつも、バイデン大統領に至っては「まだ外交的な解決はあきらめない」と発言していますが、ロシアはもう本気には捉えないでしょう。

これまでロシアへの圧力として、一応、ウクライナやルーマニアに米軍やNATO軍を派遣するというプレゼンスは見せていますが、実質的には経済制裁を課すにとどまっていますし、お世辞にも効果的な厳しい内容だとは思えない内容です。

そしてこれまでにもそうであったように、ロシアに経済制裁は効果がないと言えます。精神論のお話をするつもりはないのですが、これまでにもソビエト連邦時代を生き、その崩壊とともに闇の10年を送った人たち曰く、意外とロシアは自給自足が可能で、その10年の経験から制裁や困窮状態を生き抜くすべがシェアされているそうです。

そして、プレゼンスはあってもロシアに攻撃を加えることが出来ないと踏んでいるからこそ、プーチン大統領は大きな賭けに出たのだと考えます。

バイデン大統領が繰り返す“重大な結果”(significant consequence)はいったい何を意味するのか皆目分かりませんし、バイデン大統領の関心が中国との対峙、そして台湾情勢に向けられているがゆえに、今、ロシアと戦火を交える時間も余裕もないことを見透かしていると言えます。

そして欧州も「ロシア許すまじ」と言いつつも、まだエネルギー安全保障上、ロシアへの高依存度という悪循環から抜け出せる道筋が描けずにいるため、ロシアを100%敵に回しきることが出来ずにいます。

結果どうなったか?ウクライナ情勢が緊迫化し、ついにはロシアによる全面的な侵攻に発展する事態を受け、世界の株式市場は乱高下していますが、それ以上に天然ガス・原油価格ともに大幅な値上がりを記録しています。そしてそれが誰を利するか?

ロシアであり、イランであり、そしてその両国から原油・天然ガスの供給を約束されている中国です。

では欧米諸国とその同盟国はどのような対応を取るべきでしょうか?

まず、ロシアの行動に対する非難のトーンを決して緩めないことです。これは先週号でもおすすめした交渉スタンスにもつながるのですが、厳しい非難と態度を一致団結して取ることが必要とされます。

対ロ経済制裁が(これは対ミャンマー、対中制裁も同じようなものですが)機能しない理由は、制裁を課している国の企業の行動をどこまで本気で縛るための方策を明確化していないため、必ず抜け駆けをする企業が出てくることと、同盟国の結束も、よく似た理由で脆く崩れやすいからです。

先述したとおり、UN安全保障理事会は中ロの反対により、対ロ制裁の決議をすることは叶わず、欧米諸国側としてもロシア攻撃のための国際的なお墨付きを得ることが出来ていません。

それでもロシアになめられ、ひいては中国にもなめられることは防ぎたいと願うのであれば、アメリカとその仲間たちはお得意のCoalition of the Willingを募って独自の軍事行動に進むのでしょうか?

ご存じの通り、かつてのイラクへの攻撃(2003年)も、コソボ紛争時のセルビア共和国への空爆も、結局はNATO側の理由の正当化で実施されたと言えます(どちらも当事者として関わりましたが…)。

Concerted actionsが取れないと思われるため可能性は低いと考えますが、もしNATO他が今回の事案に対して軍事的な行動を取るとしたら、どのような形式が予想できるでしょうか?

1つはウクライナ国内のロシア軍限定での攻撃を行うという手段です。これは、今回のロシアによる侵攻時と同様に、プーチン大統領に「ロシア人の生命を守る」という大義名分を与えてしまいます。

しかし、限定的な範囲の攻撃に絞ることで、ロシアとの交渉の糸口をつかむことが出来る可能性があります。手打ちとでもいいましょうか。これはロシアのプーチン大統領がどの時点でその可能性を匂わせるかにかかりますが、主導権をロシアに握られることになります。

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