不気味な中国の動き。ロシア「ウクライナ侵攻」に沈黙を貫く隣国の思惑

 

私も先週号で「オリンピック閉会式の次の日に大きな展開が」と言ったのですが、これ、報じられているように2008年の北京オリンピック、2014年のソチ冬季五輪の閉会式の次の日に、グルジア(現在のジョージア)への侵攻、そしてクリミア半島への侵攻が実施されています。

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ゆえに「今回も同じようなことをしたのだから、予想できたこと」と欧米の政府は口をそろえて言うのですが、これまでの2例と今回の案件は違うのにお気づきでしょうか?

グルジアへの侵攻時も、クリミア半島への侵攻時も、今回当初予想されていたように“地域限定”の侵攻だったのですが、今回はウクライナ全土に向けた本格的な侵攻の形式をとっていることです。

一応、プーチン大統領は「ロシアはウクライナを占領することは計画していない」と発言していますが、これはあくまでも侵攻のスタートをドンバス地方の平和維持のためのロシア軍派遣、そしてSpecial military operationという位置づけにしたことに沿った理由付けでしょう。

それは、そういいつつ、ウクライナ軍に対して武装解除するように要求し、それが受け入れられない場合は相当の措置を講じるとも言っています。また、「ロシアおよびロシア人民の平和・権利に対して土足で踏み込んでくるものに対しては、容赦しない」とも警告しています(この発言、ロシアは核兵器の使用も厭わないという意味だと理解されているようです)。

つまりは、ウクライナ全土への侵攻を否定していないとも解釈できます。

その証拠に、ほぼ同時多発的にウクライナの首都キエフを含む、主要都市に位置する“軍事施設”への攻撃を加えています。

ロシア側の発表では「高度精密兵器を使っての攻撃なので、民間の被害は出ていない」と言っていますが、この真偽は分かりません。

ただ、ウクライナへの大規模攻撃のための戦略は、かなり綿密に時間をかけて練られていたように思われます。

ところで、24日の軍事行動ですが、本当に直前に決定されたものでしょうか?

皆さんもお気づきだったかと思いますが、24日に宣戦布告ともとれるドンバス地方への軍派遣とSpecial military operationの発表時の服装と、ドネツク州とルガンスク州の独立承認を行った21日のテレビ演説時の服装が、全く同じスーツとネクタイでした。

これは推測に過ぎませんが、21日に行動を起こした段階で、すでにウクライナへの全面攻撃の決定は下されており、それを正当化するためのシナリオを練っていたとも考えられます(そして24日のメッセージは21日に録画されたもの!?)。

まず21日に、それまで8年間こだわってきたように見せかけてきたミンスク合意を破棄してウクライナに圧力をかけ、それを受けて22日に欧州各国や日本が相次いで発表した対ロ制裁の強化にむけた協調行動をもって、これを「ロシアとロシア人民の権利と平和に対する挑戦」と位置づけ、ウクライナのみならず、その背後でロシアの国家安全保障を脅かす欧米諸国に矢を放つべく、24日にウクライナへの侵攻をスタートするという大きな一線を越えて見せました。

その直前にはロシア・ウクライナ国境地域における飛行禁止区域を設定して見せ(一応国際法にそった動き)、ウクライナのゼレンスキー大統領とのコミュニケーション手段を断って、侵攻に向けたカウントダウンを始めたわけです。

その後は、ドンバス地方のみならず、オデッサへの上陸、ハリコフおよびキエフへのミサイル攻撃、ウクライナ軍施設へのピンポイント攻撃などなど一気に攻勢をかけました。

結果、当たり前なのですが、ウクライナはロシアと国交断絶を宣言し、外交手段による解決の道を途絶えさせるように仕向けたとも考えられます。

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