不気味な中国の動き。ロシア「ウクライナ侵攻」に沈黙を貫く隣国の思惑

 

そして、「台湾進攻の際、欧米社会そして国際社会が中国を激しく非難し、対中制裁を課す場合、頼れるのはロシアだけだろう」と考え、ロシアとの“健全な”距離感を保っているように見えます。

憎たらしいほど、綿密な計算に基づいた対応だと考えます。

このメルマガを書いている間にも、ウクライナで多数の死傷者出たという情報や、ロシア軍の動き、ウクライナ軍の動きなど、刻一刻と情報が入ってきます。

すべてを鵜呑みにすることはできませんが、もろもろの情報をディスカウントして取り入れるとしても、すぐに何と答えたらいいかわからないような状況を突き付けられています。

これまで「同盟国と協力して断固たる対応を行う」と言ってきたNATOは、ストルテンベルク事務総長が「東欧での増強は行うが、NATOはウクライナには部隊を派遣しない」と明言したことで、「欧米はウクライナを見捨てた」と解釈されることになるでしょう。

ウクライナのクレバ外相は「ウクライナはアメリカによる防衛を28年間当てにして核兵器を放棄したのに、アメリカは結局逃げた。1994年当時に約束した安全保障を今こそ履行せよ」と発言することを厭わないほど、ロシアに対してはもちろんながら、アメリカとその同盟国に対しても不満感を募らせている様子が伝えられてきます。

「ロシアがいくらウクライナを攻撃しても、アメリカは軍事的に介入できない。NATOも動けない。そして経済制裁もさほど痛くはない。自らの帝国を築くには今しかないだろう」

もしプーチン大統領とその仲間たちがそう考えているのだとしたら、大きな被害を受けるのは、ウクライナの一般市民でしょう。

国際政治の混乱の渦は、アフガニスタン、ミャンマー(ビルマ)、イラクなどを結局めちゃくちゃにしてきました。

それから結局何も学ぶことなく、今はウクライナを見捨てようとしています。

なんとかならないものでしょうか?

最後に日本政府も、今回は遅れることなく迅速にG7との連携を強調し、対ロ制裁の実施の輪に加わりました。ついに日和見から、サイドを取るシフトをしたように思われます。

それが賢明だったかどうかは後日分かりますが、今回のウクライナ危機に対する国際社会の対応を見て、今、ウクライナで起きている惨事、戦いが、日本にとって対岸の火事として高みの見物をしていられる状況にないことにお気づきでしょうか?

ウクライナを日本に置き換えてシナリオを見てみた時、大きな違いは「米軍基地の有無」ですが、先ほどのクレバ外相の吐露の内容を思い起こした時、北東アジア地域で周辺国すべてと緊張関係にある日本の状況を見てちょっと背筋がヒヤッとするのは私の思い違いでしょうか?考えすぎでしょうか?

プーチン大統領が、繰り返し核兵器の使用の可能性に言及し、ベラルーシ国内からウクライナに向けて短距離の弾道ミサイルが発射され、ウクライナ全土で交戦が行われる今、今後、世界各地で様々な紛争が引き起こされ、人類が再び悲劇を体験する大きな一線を越えるか否かが決まる瀬戸際に立っているような気がします。

恐らく次の戦争では、勝者は存在しないのでしょうが。

一刻も早く解決の糸口が見つかることを祈りながら。

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