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現場教師たちをがんじがらめに縛る「教育心理学」という名の“印籠”

「どんな話をすれば、聞く人のやる気を引き出せるのか」。悩む教師や職場のリーダーなど、人を教え導く立場の人たちに向けて、ロングセラー『君と会えたから』『手紙屋』などの著者で作家の喜多川泰さんがメルマガを創刊。配信1回目の『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』のテーマは、教師にとって黄門様の“印籠”のような効果があるという「教育心理学」。ときには教師たちをがんじがらめに縛ってしまうほどややこしく、だからこそおもしろく、学びがあると伝えています。

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教育心理学という印籠

先生になるためには「教育心理学」を学ぶ必要があります。「心理学」というのは、「人間にこういう環境でこういう刺激を与えたらこういう反応を示します」という臨床実験を集めて体系化した学問ですから、人を指導する立場の人は当然興味を持つ必要があるし、知っていなければならないと考えるのが自然です。

有名なものをいくつかあげると、例えば「ピグマリオン効果」というのがあります。教師の期待によって学習者の成績が向上するという教育心理学の効果のことですね。学習者に、先生が「君には才能がある」と期待をしてたくさん誉めて教育をしたら、実際に学習者の成績が向上したという実験結果があるんですね。

一方で「ゴーレム効果」というのもある。これは「ピグマリオン効果」の対義語的効果で、指導する側が、相手に見込みがないと思っていると、実際にその通りになっていくという心理効果。部下などに対して「こいつは絶対に伸びない」と思っていると、その通りになる。言葉にしなくてもそう思っているだけで成長に悪影響を及ぼすことがあるそうなんですね。

他にも、人は何かを禁止されると、逆にそれをやりたくなってしまうということがわかっています。伊邪那美命に「この扉を開けてはいけませんよ」と言われた伊邪那岐命も扉を開けてしまった。人どころか神様だって抗えない。これを心理学では「カリギュラ効果」と呼ぶ。

人を教える上では「返報性の原理」なども知っておいた方がいい。これは、人間はよくしてもらったままでは居心地が悪く感じてしまい、何かお礼をしたくなるという心理のこと。例えばモニターとしてある商品をタダで使わせてもらったら、結局それを買い取ってあげなキャいけない気がしたり、友人に勧めたり、試食をしたら商品を買わなきゃいけないような気がしてしまったり。

さらには「バーナム効果」も面白い。「あなた、いつもは元気に振る舞っているけど、本当は人に言えない悩みを抱えていて、一人の時には、どうしようもないほど苦しくなることがありますね。それに、今のままでいいのだろうかと心配になるけど、ずっとそのままにして放置している大きな問題を抱えている」など、実は誰にでも当てはまる曖昧な表現を、自分だけに当てはまるものだと捉えてしまうという効果。

占い師がよく使う手口ですね。ある心理学者がおこなった実験では、学生に心理テストを実施し、その診断結果が自分に当てはまっている度合いを5段階評価で評価してもらったら、平均で4.26だったそうですよ。返却した診断結果は全員に同じものを返したにも関わらず。

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こういうことを学習していくと、学べば学ぶほど、知れば知るほど、「いやぁ、いいこと知ったなぁ」と思う一方で、誰かを育てるときには「注意しないと」と思うことが増えていって、頭の中が付箋でいっぱいにならない?つまり、自分の中で「縛り」が増えてがんじがらめになっていく。

「それは触っちゃダメ」と言わなきゃならないときって、子育てをしているときや、指導の場では必ずある。ところがそのときに、「おっと、カリギュラ効果があるから…」と思い出して、咄嗟に言葉を引っ込めてしまったり。

何の努力もしない、授業では周りの子に迷惑ばかりかけて授業の妨害をするといった生徒に対して、「このままだと、将来苦労するぞ」と喉元まででかかって、「うっ、ゴーレム効果があるから」となって「先生は、君は優しい人になれると思うんだ」なんて思ってもないことを顔をひきつらせながら言ったりして、余計に図に乗るような結果になったり。

それだけでも、どうしていいかわからなくなるのに、教育評論家や研究者と呼ばれる人たちが「最近の研究では」とか「教育心理学では今の時代では常識」とか言いながら、指導者がやってはいけないことや、やらなきゃいけないことを自信満々に発信するのを見ると、それも無視できないし。もう「教育心理学では」という言葉は例の「印籠」のように強い効果を持って迫ってくる。「はは~」としか言えなくなる。(メルマガ『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

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1970年生まれ。2005年「賢者の書」で作家デビュー。「君と会えたから」「手紙屋」「また必ず会おうと誰もが言った」「運転者」など数々の作品が時代を超えて愛されるロングセラーとなり、国内累計95万部を超える。その影響力は国内だけにとどまらず、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、ロシアなど世界各国で翻訳出版されている。人の心や世の中を独自の視点で観察し、「喜多川ワールド」と呼ばれる独特の言葉で表現するその文章は、読む人の心を暖かくし、価値観や人生を大きく変えると小学生から80代まで幅広い層に支持されている。

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