1983年以前に建てられたマンションは「標準管理規約」が定められておらず、管理上の問題が多いとされています。その管理上の問題を浮き彫りにするべく東京都が動き出しているそうです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では一級建築士でマンション管理士の廣田信子さんが、管理不全のマンションの調査について語っています。
1983年以前のマンション、15%に管理不全兆候
こんにちは!廣田信子です。
管理不全マンション対応に一番取り組んでいるのが東京都です。
東京都が1983年以前に建てられたマンションを対象に実施した管理状況の調査では、15%に管理不全の兆候があることがわかりました。
なぜ1983年以前なのかというと、昭和58(1983)年に区分所有法が改正され管理組合に関する明確な規定ができました。
モデルとなる標準管理規約が示されたのも1983年です。
それ以前に建築されたマンションほど、管理上の問題が多いと言われます。
また、1981年に耐震に関する建築基準法が改正されましたが、それらのマンションの竣工は、1983年と推測され、1983年が、実質的な新耐震基準と旧耐震基準を分ける一つの境目になると考えられるためです。
東京都は2019年、管理状況の届け出を管理組合に義務づける条例を制定しました。
条例に基づき、管理組合に関する明確な規定が定められた1983年より前に建てられた住戸数6戸以上のマンション約1万2,000棟(戸数ベースで全体の約2割)を調査しました。
届け出のあった管理組合だけでなく、届け出がない管理組合にも個別に訪問しています。
たいへんなエネルギーを使って調査をしているのです。
東京都が、古いマンションの管理状況の把握に大規模に乗りだしたのはこれが初めてです。
管理不全を予防するための必須事項として定めた7項目(管理組合や管理費、修繕積立金、総会開催、管理者、管理規約、修繕の計画的な実施の有無)のいずれかが「ない」としたマンションを「管理不全の兆候がある」と判定しました。
2021年9月末時点で都に届け出を済ませた9,101棟(約77%)のうち、15.2%にあたる1,386棟で、兆候があるとされました。
「ない」が1項目のマンションが774棟、「ない」が2項目が217棟。全項目が「ない」マンションも29棟ありました。
また、「修繕を計画的に実施していない」は9.4%、「修繕積立金を積み立てていない」は4.5%、となっています。
マンションは私有財産である一方、管理状況は地域全体にも影響を与えるため、今後行政がどのように関わっていくかが課題です。
東京都は、管理不全の兆候があるマンションに、区や市などの自治体と訪問調査を進め、マンション管理士などの専門家の派遣を無料で行うなどの対策をしています。
これまで規模の大きい調査は初めてなので、不全の兆候をつかめたことは大きいとして、管理組合の自主的な管理の適正化に向けて支援しく方針です。
マンション管理に関しては、2020年6月に、適切な管理を行政が後押しする改正マンション管理適正化法が成立しました。
行政も管理にかかわる流れが強まっていますが、管理不全予備群のマンションへの対策が一番重要です。
4月1日から、管理計画認定制度がスタートしますが、こういったことを第一に考えた、マンションの適正化推進計画がきちんと定められ、実行されることが不可欠なのです。
他の地方公共団体も、これに続くことになりますが、なかなか、ここまでは進んでいないようです。
それにしても、東京都で、1983年以前のマンションで15.2%に当たるマンションに管理不全の兆候がある…という実態があるのです。
他の地方公共団体でも早急な調査が必要です。
今回のマンション管理適正化法改正は、管理計画認定制度より、こちらの方が一番重要な点だと改めて思います。
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