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渡辺直美さんの「ネガティブな自分も大切にして」という言葉が響くワケ

ものごとを前向きに、積極的に、肯定的に捉えるポジティブシンキング。軽やかに楽しく生きていくために身につけたい思考法と言われることがありますが、「ネガティブな自分も大切にして」と話した渡辺直美さんのインタビューへの反応で、日本人の“ポジティブシンキング疲れ”を感じたのは、ニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんです。今回のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』では、ポジかネガかよりも大切なのはその後の「行動」にあると、わかりやすい“コップの水”の例をあげ、“カラフルな人生”を送るコツを伝えています。

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ネガティブシンキングをワルモノにしなくていい

渡辺直美さんへの2021年7月の3度目のインタビューの際、彼女は「実は、自分はネガティブ」だといった。「でも、ポジティブすぎる自分もいる」とも。

「やっぱり両面ないとダメだと思うんです。ポジティブすぎる人は、ネガティブな人の気持ちをわかってあげられない人も多くて。両面あって、初めて人の気持ちがわかるっていうか。なので、みなさんにも“ネガティブな自分も大切にしてください”っていいたいです」

最後の彼女のセリフに対し、YouTube上にコメントが集まった。「なんだかホッとしました」「周囲がポジティブ(すぎる)人が多い中、自分だけそうなれずにいたたまれなかったけど、直美ちゃんのセリフに涙が出ました」「時にはネガティブでいいんだって、言われてすごく勇気が出ました」etc……。

それを読みつつ、「日本国民、みんな“ポジティブシンキング疲れ”してるんじゃないかなぁ」と思ったりした。

誤解して欲しくないのは、ネガティブよりポジティブの方がもちろんいいに決まっている。でも、ネガティブを遠ざける風潮が広がる日本では、物事の本質から目を背けてしまっているのではないだろうか。ひょっとすると、逃げることも、負けることも、挑戦しないことも「ポジティブ風な言葉」で正当化しようとしてるんじゃないか、と。

僕がインタビューした人たちは正面から自分の夢や性格、弱さや欠点を見つめてきた。そして、落ち込み、負けて、復活した。逃げるくらいなら、短期的なネガティブシンキングは必要な過程なのではないか、と思う。

ポジティブや、コスパや、ウィンーウィンのような耳あたりのいい言葉で埋め尽くして、その場だけの幸福感を得られてホッとするくらいなら、ときにはどん底まで落ち込もう。自分を疑って、粗末に扱ってみよう。

僕自身、日常生活においてはまったく自分を信じない。油断したらすぐにサボろうとするし、逃げようとする。こんなヤツ、信じられるわけがない。大切になんかしちゃったら、すぐに調子に乗る、つけ上がる。誰でもなく自分でそう思うのだから、間違いない。

「おまえのことだから、またラクな方に行こうとしてんだろ」「おまえのことだから、また上手いこと言って誤魔化そうとしてんだろ」日常では、いつだって頭から疑いにかかる。疑ってきたから、そうじゃないと証明するために行動できた。自分を大切にしなかったからこそ、負けるかもしれない勝負に出れたのだと振り返る。

だから、これからも、僕は日々、自分を疑って、疑って、疑い続ける。で、死ぬ時に「なーんだ、もうちょっと信じてやってよかったんじゃん」と笑って最期を迎えたい。

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「成功する人生よりもカラフルな人生を」

要は、日常生活において、逃げ出したいことや先送りにしたいことを耳障りのいいポジティブ“チック”な言葉で、自身を正当化するのは今日限りでもう終わりにしよう、ということ。ときにネガティブになっても正面から受け止める勇気を持とう。後ろ向きな自分を認め、その上で前に進もう。

確かに、夢を実現するためには人生という長期的スパンにおいて、まちがいなく「ポジティブシンキング」でなければいけない。世界の強豪に打ちのめされても、打ちのめされたからこそ強くなると信じていく。世間の評価を気にする前に、今、手掛けている作品をとことん愛しちまう。成功するかどうかを気に病むよりは、自分が作りたい!と思った作品を撮っていく。人生の真理をいちいち考えずとも、ひたすらワクワクする曲を奏でていく。どんな時でも無条件で自分を信じる、ポジティブシンキングとはそういうことだ。

キレイゴトやポジティブワードで埋め尽くすだけの日々はもう卒業しよう。自分の性格はなかなか変えられずとも、少なくとも、今、目で見えているこの世という「世界」は、明るくなっていくモノだと思い込む。色々苦しいことがあったとしても、ネガティブな自分を認めた上で、長い目で見れば「結局のところ、オレは(アタシは)なんとかする、できる、なる」と思うようにする。

もっと正直にいうなら──。僕自身は、ポジティブでも、ネガティブでも、実はどっちでもいいと思っている。どっちでもいいなんていうと、怒られそうだが、肝心なのはその思考の後。やはり「行動」が大事なのではないかな、と。

心理学のありがちなテストで「コップの水が今、半分あります」という例のアレ。同じ状態でも「まだ、半分もあるのか!」と前向きに捉えるか、「もう、半分しかないのか、、」と後ろ向きに捉えるのか、ってやつ。当然、前者のポジティブシンキングの方が褒められる。

でも、僕にとってはどっちでもいい。なぜなら、今すぐ、汲みに行くから。ポジティブだろうが、ネガティブだろうが、重要なのは「汲みにいく」という次のアクション。まだ半分ある!と考えた方が汲みに行きやすいなら、ポジティブに考えればいい。人によっては、もう半分しかない!と焦って初めて行動できるなら、ネガティブに考えるのもそう悪くない。要はどちらにしろ、次のアクションにつながらなければ意味がない。

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「まだ半分あるから幸せ」と、ポジティブシンキングとやらだけで、何も動かなければ、水だっていつかは腐る。古い水を後生大事に抱えたまま死にたいのか。そして、誤解して欲しくないことは、大切なのはコップに水をいっぱいにした「結果」ではなく、水を汲みに行く行動そのものだということ。

もしかすると、水を汲みに行こうとしたところで、転倒して残りの水まで全部ぶちまけちゃうかもしれない。汲みに行かなきゃ(行動しなきゃ)よかったと思うことだってあるかもしれない。でも、水をぶちまけて後悔したとして、老後、笑いのネタにはなるかもしれない。これは、行動によってもたらされた自分だけの「勲章」だ。

日本に帰国するたびご挨拶に行く、ベストセラー作家の本田健さんは、僕にこう話してくれたことがある。「僕の師であるユダヤ人の先生にいわれたんだよね。『成功する人生よりもカラフルな人生を送りなさい』と。それが自身の生き方のベースになっている」。

人の成功体験談や自慢話なんて、誰も聞きたくない。それより失敗談を面白おかしく語る人の方が、ずっと魅力があって、ずっと人が集まってくる。

「だから、将来僕は老人ホームでいっぱい失敗談を周囲に話そうと思って」ポジティブな気持ちも、ネガティブな気持ちも、上手に飼いならして、行動していく。結果、人生を彩るカラフルな毎日がきっとやってくるのだから。

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image by: Shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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