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ロシアが日本に侵攻しない理由はない。それでも日本人が戦争に備えぬ訳

先日掲載の「平和ボケよりタチ悪い。自分は大丈夫という思い込みが日本を滅ぼす」等の記事で、日本人の自然災害以外に対する危機意識の低さを指摘してきた、ジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さん。その理由は何に起因するのでしょうか。宇田川さんは今回、自身のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』で、欧州や中韓と日本の歴史的相違点を紹介しつつ、その理由を解説。我々日本人の多くが抱いている、「人は困った時は助けてくれる」という思考自体に疑問を投げかけています。

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ウクライナ情勢を見て思う「我が国は生きのこれるのか?」:日本人の「戦争」に関する意識

前回までに、日本人の「危機」に関する意識を見てきました。

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日本人は、自然災害には非常に敏感に反応しますが、人的災害について、これは戦争ばかりではなく、犯罪や、広域犯罪、テロなどを含めてですが、「人が起こす危機」に関してはあまり備えていません。

ヨーロッパだけではなく、韓国も中国も、基本的には人間が敵になるというような状況を作りだし、そのような歴史になっていますが、しかし、日本の場合はそのような歴史がないので、人の作り出す危機に備えるということが少ないということになります。

単純に、日本の場合「人は困った時は助けてくれる」というものであるというように思っているということになっています。

「困った時は助け合い」などというような標語があり、昔は「歳末助け合い」など取って、年末には寄付をするというような者があったのです。

あの、テレビ番組『笑点』でさえも、一年の最後は「歳末チャリティ」と称して、座布団や出演者の個人の宝物などをオークションにかけて困った人に寄付するというイベントが恒例になっていたのです。

まあ、司会が三波伸介氏の時であり、それ以降はなかったような気がしますが、それでもそのようなことが通常に行われていました。

つまり、日本は基本的には「人は善人しかいない」という「性善説」で動いているということになります。

もちろん人が犯罪を起こすこともあるし、戦争を起こすことがあっても、その戦争が無くなれば、元通り仲良くなれるというような感覚でいるということになります。

これは、日本の歴史がそのようになっていたということを示しているのです。

日本は世界で最も古い王朝であるということがギネスブックに出ています。

それは、一つの王朝が滅ぼされなかったということを意味し、戦争などにおいて主権を奪われた経験がなく、日本人は常に日本人の政治の中にいたということを意味しているのです。

当然に「異民族や異宗教の人々に戦争に負けた場合、どのようになるのか」という経験はないということになります。

そのような経験がある国が、ヨーロッパや韓国や中国ということになります。

ヨーロッパは、まさに戦争の歴史を繰り返しているということが言えます。

そもそもギリシアという、民主主義的な最も古い議会制政治を行っていた国が、すぐにローマ帝国に変わられ、その後ローマも滅びて様々な王族が出てきて封建制になるのです。

世界史的には1618年から1648年にかけて、神聖ローマ帝国(現在のドイツの位置)を中心にヨーロッパ全土で行われた「三十年戦争」があり、それによって、ヨーロッパの人口の3分の1が犠牲になったといわれ、その時から国際法の概念が出てくるということになります。

この戦争は宗教的、政治的な戦争で「旧教徒と新教徒の対立」「神聖ローマ皇帝と領邦君主の対立」「国際的な主権国家間の対立。特にハプスブルク家とブルボン家の対立。」という三つの対立点が争点となりなかなか終わらなかったということになる。

当然に「困った時は助け合い」などというような話がなく、他国の人を見れば殺してしまうなどというような話があったのです。

三十年戦争の同時代に生きたフランスの銅版画家ジャック=カロは、戦争の実際に遭遇して、『戦争の惨禍と不幸』という連作を残していますが、その絵は気に多くの遺体が吊り下げられているような者であったり、今では考えられなおようなものが大きのです。

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同様のことは、中国でも韓国でもあったということになります。

中国では、日本で最も有名な例では三国志で、劉備が南に移動するときに10万人の農民が一緒に移動し、そこを攻めた曹操との間に長坂の戦いがあったという話があります。

劉備の妻が追い詰められたうえで井戸に身を投げて自殺し、子供を趙雲が鎧の内側に入れて守ったという話です。

しかし、これは見方を変えれば、劉備という君主と一緒に移動しなければ、奴隷にされてしまうということを意味しており、それは、自分の父祖伝来の地を捨てて移動しても、奴隷になるよりはよいということであったのではないでしょうか。

その後も、モンゴル帝国や満州族に占領された経験のある中国は、辮髪(騎馬民族の髪型)を強要されたり、資産を失ったりします。

その後共産主義が勃興し、国共内戦の後に「文化大革命」が出てくると、中国の人々は自分たちの歴史も、資産も全て没収され、また知的な内容も失われる「批林批孔運動」などが行われることになるのです。

この事から、現在でも、中国人は金のネックレスなどをしている人が少なくありません。

これはいつ「革命」が起きてもよいように、資産の多くは自分の身に着けていて、一旦緩急の時があった場合は、そのまま逃げだして、それらを換金して生きのこるということなのです。

中国の場合は「その土地に残る」という前提ではなく「異民族や異国が攻めてきたら逃げる」ということを常に覚悟しているということになるのです。

逆に言えば、三国志の時代から土地に執着するよりは、命を失わないように逃げるということになります。

韓国の場合は、そもそも中国に対して「女性」を貢いでいたという歴史があり、それでも中国が元の時代などは元寇の先鋒を務めさせられてしまいます。

その上、「朝鮮戦争」がありました。

朝鮮戦争は、一次プサン以外の都市が全て北朝鮮になったこともあり、一方で、北朝鮮が全て負けるのではないかというような時期もあったのです。

つまり、朝鮮半島全てがほとんど戦場になり、なおかつ、そのすべてが昨日までの敵が日付が変わったら、別な国が支配しているというような感じになっているのです。

もともと、日本軍がピョンヤンやソウルの地下に陣地を築いていました。

これは、アメリカからの空襲を警戒して作られたもので、現在では地下鉄の駅などになるなど、様々に利用されています。

しかし、その後朝鮮戦争で砲撃があるなどのことがあったので同様に「防空壕」「砲撃壕」を作らなければならないということになります。

その結果、現在ソウルではソウルの人口の3倍の人数を収容できる防空壕(砲撃用シェルター)が備わっているのです。

そのうえ、現在でも抜き打ちで「防空訓練」があり、ソウル市内で突然空襲警報がなり、我々観光客や外国人も、一度地に伏せ、その後防空壕に入るというようなことを行います。

基本的に興味があったので、喜んで中に入りましたが、ホテルの地下に6階までの施設があり、棚の中に水や食料や毛布だけではなく、銃や爆弾などの「抵抗するため」もしくは「自決用」の武器が備わっているのです。

逆に言えば、そのような戦争に備えて、既に様々な内容のものが作られているということになります。

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さて、このように文化そのものが違い、戦争に対して全くその認識がないというのが日本の戦争への認識であるということになります。

この事は、さまざまな間違いがあったりまたは様々な問題を起こしたりしてしまうということになります。

まずは、最も多いのは「日本が戦争に巻き込まれるはずがない」というような認識の人が少なくないということになります。

ウクライナの戦争の事を見ても、実態として、日本が「同じように危機にさらされている」というような感覚は全くないということになるのです。

ロシアは、ウクライナに侵攻しましたが、実際に日本に侵攻しない理由はありません。

そもそも北方領土において、最近では「北方領土はロシア固有の領土」というように主張しています。

日本の主張などは全くお構いなしです

そのうえ、北海道もウクライナの東部と同じように「日本とは別の民族がいて、日本が虐殺している」というような主張をしているのです。

つまり、ロシアの主張している論理をそのまま使えば、ウクライナと同じようになってしまうということになります。

要するに、いつ戦争になってもおかしくはないということになります。

また、最近では「日本を非友好国に指定する」というようなことを主張し、日本との平和条約締結交渉を中断すると一方的に主張してきたのです。

要するに「日本との間は平和である必要はない」ということになります。

逆に言えば、日本はいつロシアと戦争になってもおかしくないということになりますし、またロシアはそのような主張をしているということになります。

しかし、日本の国民の中に、そのようなことを考えている人はいるのでしょうか。

もちろん少なくない人が、そのリスクを考えていると思います。

しかし、ではそのリスクに対して何か備えている人がいるかといえば、それはNOですね。

もちろん武器を準備することもできませんし、また建物を頑丈にするなどの事もありません。

当然、シェルターを作るなどという人もいません。

また集落が皆で集団避難するような場所もないですし、家族で避難所を決めている人もほとんどいません。

地震や津波の時の避難所はありますが、ウクライナの都市、マリウポリのように、ロシアの攻撃に何日も耐えられるような防御を固めた避難所はないのです。

また同時にそれを作ろうという動きもありません。

ネットの中で、ロシアの危機を叫ぶ人もいますが、では避難先や防御を固めるというようなことを主張する人はいないのではないでしょうか。

何か知っているようなことを言う人も、具体的に日本の防御をいう人は少ないのではないでしょうか。

基本的に政府を批判したり、ロシアやウクライナの政権について語る人はいますが、それ以上の事をする人はほとんどいません。

その状況で、本当に日本の安全、我々の安全を守ることができるのでしょうか。
甚だ疑問です。

もちろん、脅威はロシアだけではありません。

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ではなぜ、「知ったようなことを言う人も、日本の防衛について語らない」のでしょうか。

それは、やはり上記に書いたように、日本人の歴史の中に「占領された」「主権を国家全体が失った」「文化を強制された」というようなことがないからではないかと思います。

広島や長崎の原爆も、それを落としたアメリカではなく、なぜか日本の政府に賠償請求をしていますし、戦争責任として、日本の政府を攻めるようなことはします。

では、アメリカや当時の連合国について、本当に原爆の使用が正しかったのかということを追求した日本人は何人いるのでしょうか。

もちろんいないとは言いません。

しかし、それが表にならない、そのような人が称賛されない世界が日本なのです。

そのようなことでよいのかということを考えなければならないのではないでしょうか。

日本は、日本が悪い、日本が何もしなければ戦争は起こさないなどという考えを持っていますが、本当にそうなのでしょうか。

さて、そのように日本人に日本の防衛を説く前に、まず次回からは「日本の周辺の脅威」ということを考えてみましょう。

実は、これは第54話でやろうと思いましたが、このまま53話の中で続けてゆきたいと思います。

もう少しお付き合いください。(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年4月25日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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