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プーチンがG20出席で目論む悪巧み。「ロシア排除」しか叫ばない弱腰な西側を挑発する狙いとは

世界中から批判を浴び、制裁を受け続けてもなおウクライナへの侵攻をやめないプーチン大統領。今年11月のG20サミットにも出席の意向を示したようです。それに対しザワついたのは西側諸国でした。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、周囲の国々がロシアを排除しようとしている動きについて語っています。

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ロシアとプーチンを「排除」でいいのか?

今年11月にインドネシアで開催されるG20サミットですが、招待状を出したところロシアのプーチン大統領が出席の意向を表明してきました。ちなみに、議長国インドネシアのジョコ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領も招待したと明らかにしています。

これに対して、アメリカのバイデン大統領は「ロシアの参加には反対」という立場を表明。これを受けた格好で、岸田総理は先週にインドネシアを訪問した際に、ジョコ大統領に対して「ロシア排除」を説得したようです。

しかし、毎年思うのですが、総理にしても各大臣、そして一部の議員などが日本のゴールデンウィークに外国出張するというのは、いつも不自然な印象を感じてしまいます。

本当に必要な出張なら、平日でも行くべきであり、役所と国会がスローダウンしている週にまとめて出張するというのは、結局は「不要不急」ではないかという印象を与えるからです。

それはともかく、今回のロシア排除ですが、賛成できません。ロシアが来るというのであれば、堂々と受け止めて批判の場、あるいは必要であれば交渉の場とするべきです。

仮に、バイデン大統領(高齢のため?)、岸田総理(政府のシステムのため)などが「ガチンコの交渉に向かない」ので、プーチンが来ると「引っ掻き回されて」不利になるというのなら、そのこと自体が問題です。

そんな体たらくではG20以外の場でも外交でロシアを追い詰めることは難しくなります。

例えばですが、G20にプーチンが来ると、BRICSなどはロシアと組んでしまって、G7+の方が押されてしまうという可能性を感じているのかもしれません。

これも同じことで、そんなことではダメであり、あの程度の横暴なレトリックに対しては、直球変化球交えて「退治」できるようにしておかねばダメでしょう。

とにかく「ロシア排除」という姿勢そのものに「弱腰」が透けて見えるというのは、これだけで外交失点だと思います。

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この「ロシア排除」ですが、とにかく行き過ぎです。例えば、ロシアで行われている「チャイコフスキー国際音楽コンクール」(チャイコン)というのは、ピアノ、バイオリン、チェロ、声楽、管楽器などを含む大規模で権威のある大会ですが、「国際音楽コンクール世界連盟」は戦争を理由にこのチャイコンを連盟から追放してしまいました。

アートというのは戦争の対極にあるものであり、アートの交流は戦争の抑止にもなるのですが、ロシア側から脱退するのではなく、連盟側が追放するというのは問題だと思います。

また、英国の作家J・W・ローリング氏は、自分の著作である「ハリー・ポッター」シリーズの電子版を、ロシアから引き上げてしまいました。

つまり、ロシア国内にあるアカウントでは、読者のKindleなどの端末からシリーズは消滅してしまったのです。

ハリー・ポッターの読者は、ロシア国内では親西側に近いはずで、そうした読者を裏切る行為にどんな意味があるのか、私には理解できません。

同時に、こうしたデジタル焚書というのは、今後、著作権者の側からも、政権の側からでも、あるいは配信会社の側からでも、いくらでも可能になってしまうわけで、「読者の読む権利」の確定が急がれると思います。

例えばですが、購入したコンテンツは、ユニバーサルなフォーマットでのDLを可能にして、オフラインでの購読権を永久保証するなどの対策を考えるべきです。

いずれにしても、今回の「ロシア排除」に関しては、排除することで、相手を利するような行為になってしまう例が横行していると思います。

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image by: ID1974 / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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