MAG2 NEWS MENU

Psychology Personality Concept. Extrovert Person. person who Happy and Enjoy by Talking, Interaction, Party Often. presenting by wooden peg dolls

「コスパ」は個性を殺す。効率を重視することで失われる“自分らしさ”

「自分らしさとは何か」というテーマのセミナーにゲストに呼ばれたニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さん。今まで考えたことがなかったその内容を突き詰めてみると意外なことがわかったそうです。今回のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』では、高橋さんなりの自分らしさである、”非コスパ主義”という答えに至った経緯とその詳細を語っています。

マンハッタンの最前線からニューヨークの今がわかるメルマガ詳細はコチラ

 

自分らしさとは何か 非コスパ主義へ

先日、あるズームセミナーの主催者からゲスト出演を依頼されました。テーマは「自分らしく生きる」。

自分らしく、と言われても、48年間、自分らしく、なんて考えたことがない。講話ゲストとして呼んで頂いたことは光栄であり、嬉しくもあったのですが、何をどう話していいかわかりませんでした。

まず、自分らしく生きている人間で、自分らしく生きようといちいち考えている人間なんていないのではないか。

明日から自分らしく生きようと思っている時点で、今日、自分らしく生きていないことになる。自分らしくと言い聞かせている前に、自分らしくない、、ていうか、自分らしくてなんなんだ。

考えても、考えても、自分らしさ、なんてどう説明していいかわからない。みなさんは皆さん以外になれない時点で、もう自分らしさ、なのではないでしょうか。そんな禅問答のような解答で逃げようか。

それはつまり、明日から自分らしくと言っている時点で、今日、自分らしくない、その自分らしくない今日も、それも含めてまるまる自分らしさなのだ、と、言っている今も、すでに混乱しかけています。

やっぱ、自分らしくてなんなんだ。

それでも強引に考えた結果、それを言葉で言うなら「コスパをド無視する」ことではないでしょうか。コストパフォーマンスとやらを度外視して生きる。

マンハッタンの最前線からニューヨークの今がわかるメルマガ詳細はコチラ

 

今や日本は、猫も杓子も「コスパ」、「コスパ」と連呼します。僕がアメリカで暮らし、20年間日本を離れている間に浸透した言葉の第1位ではないでしょうか。

ちなみに第2位は「サスティナブル」。第3位は「伏線と回収」(笑)。もちろん僕が日本にいた21年前から、コストパフォーマンスという言葉は存在しました。特にビジネスシーンでは当時からよく使われていた。

例えば、試験勉強、例えば、ダイエット。短期間で達成すべき目的に向けて、より効率のいい展開を目指す際に使われていた言葉だったと記憶します。

そこから、いまや人生自体に、夢実現に、生き方そのものにさえ適用されるようになっていった。なんだよ、コスパ、コスパってうるせえな(笑)。言葉は悪いですが、その風潮を俯瞰で見た、母国を離れて長く暮らしている僕の率直な感想です。

「コスパ、コスパって連呼してるやつに限って、スッカスカな人生送ってそう」クラブハウスやウエビナーでスピーカーとして話す際、わざと悪ぶって嘲笑しながら吐くセリフです。

もちろん褒められた表現ではないのは自覚しています。我ながら極端な結論だなとも思っています。

なによりコスパは悪いより、良いに越したことはない。僕自身、いちおうは経営者です。経営する際に最も大切なことはコストパフォーマンスの向上です。

経営者になって20年、常にコストパフォーマンスを意識しています。コストに対するリターンの割合で商売の質が決まる限り、コスパを意識しない経営者はこの世にいない。いたら失格です。

たとえば「わずかな投資で億万長者」「最短で10キロ痩せる!」。

こんなタイトルの本があれば、お金を出してでも買いたい。実際、買ってきました。何冊も(笑)。資産運用もダイエットもコストパフォーマンスがすべてです。僕も、わずかな投資で億万長者になりたいし、できるだけ短い期間に、標準体重を計測したい。

つまり、こういう僕だって、間違いなく「コスパ」を重視したいし、意識する。こと、資産運用、ダイエットに関しては。

でも、生き方、人生そのものを「コストパフォーマンス」を基準に考えるのは、反対です。というより、不可能だと思っています。

マンハッタンの最前線からニューヨークの今がわかるメルマガ詳細はコチラ

 

コストパフォーマンスの究極を言うと、それは「同一」ということになります。

わかりやすく説明すると、たとえば、ニューヨークにいる僕が、東京の友人宅を尋ねるとして、「最短距離」は、この世で一つしか存在しません。たったひとつです。

ひとつ駅を乗り過ごすと、ひとつ角を曲がると、それは「最短距離」でなくなってしまう。うちの家のドアから、彼の自宅のドアまでの最短距離はこの世でひとつしかない。

ということは、究極、みんなが同じ道程を辿ることになります。全員が、同じ線をなぞることになる。

で、その一方で、個性、個性と騒いでいる。このことからも、日本は常識枠内での「個性」と呼ばれるものを目指していることがわかる。

ひとつ駅を乗り過ごすことで、お気に入りになるかもかもしれないレストランを発見できるかもしれない。

ひとつ角を遠回りすることで、なつかしい友人に会えるかもしれない。今まで気づかなかった河川敷に咲く花に見惚れることができるかもしれない。

もちろんできないかもしれない。わからない。わからない限りは、最短距離だけが至上とは言えない。

もっと言うなら、わざわざ友人に会うのに太平洋を横断しなくても、リモートで用件を済ませればいいじゃないか。そう思わない可能性もない。

つまりはコスパの究極はそういうことです。全員がリモートに「同一化」すれば、極論、友人との思い出も激減してしまう。ちょっと極論?かな。

でもコスパがすべてだと言うのなら、全世界の人間がトヨタ カローラを乗らないと辻褄が合わないと思うのです。価格のリーズナブルさ、燃費、運転のしやすさ。それだけを考えるなら世界一です。まちがいなくベンツより、BMWより上です。みーんなカローラで統一しちゃえ。

以前、テレビでタレントの堺正章さんが、アメ車のしかもビンテージ車が大好きで、何台も保有していると話していました。

「でも、ガソリン撒き散らして走ってるようなもんなんだ。燃費、サイアクなの。あと、高いだけで、すーぐ故障しちゃうしねぇ、、、、でも、それが可愛いんだよねえ」そう話すマチャアキさんは子供のようなキラキラした目で、なんだか素敵だなぁと思いました。

経済評論家という肩書のただの倹約家の先生がホワイトボードをバックに節約術を話す時のドヤ顔より、よっぽど(ま、この例え話はちょっと違う気がしないでもないけど)。

つまり、コスパを極めれば極めるほど、「同じになる」ということです。

マンハッタンの最前線からニューヨークの今がわかるメルマガ詳細はコチラ

 

その一方で、、個性、個性、という話題になった際、必ずこんなことを言う人がでてきます。

「アタシ、すぐに誰とでも仲良くなれちゃうんですぅ~」

「オレ、曲がったことが嫌いで、納得しないと上司にでも言いたいこと言うしね!」

それ、「個性」じゃなく、「性格」な。しかも、自己判断による自己申告の。自己申告である限りは勘違いしちゃってるかもしれない。世界基準とくらべて突出しているかどうかもわからない。自己申告による性格は個性ではない。

意外と、いざとなったら、緊張して仲良くなれないかもしれないし、損得勘定によっては曲がりまくるかもしれない。実際、よく見ます。本当の意味で「誰とでも仲良くなれ」る人は、そう意識すらしていないし、「曲がったことが嫌い」な人が、リアルに清廉潔白だった試しがない。

個性とは、実は、その人に対する過去のメモリーです。他者から見たその人の通ってきた曲線と言ってもいい。

自分がどうなんですというアピールより、自分が実際に過去通ってきた道筋を他者が俯瞰してみた時、その人の「個性」になる。

そこで思い出して欲しいのは、コストパフォーマンスを重視しすぎると、同一化してしまうということ。

生き方自体が、単純で、最短なただの一直線になる。そこからどうやって個性とやらを見出せるのか。

一方で個性、個性と騒ぎ立て、同時に他方で、コスパコスパと連呼する。同一化を目指すコスパ重視、と、自分らしさとは対極なのです。

そのWEBセミナーの際、主宰されている司会者が「たしかに、コストパフォーマンスいいと思ってやったことが、後々、そう役に立たなかったり、遠回りだなぁとおもって手掛けたことが、将来自分の身を助けたりすること、普通にあるよね」とおっしゃいました。

結局、僕が言いたかったことは、このセリフに尽きます。それこそが人生であり、「コストパフォーマンス」なんて人生において計算できない。

特に、僕なんて大学を中退して、英語も話せず、海外旅行の経験もないどころか、飛行機に乗ったことすらないのに、今、ニューヨークでメディア業に従事している。

「最短距離」を考えれば、外国語大学を卒業して、アメリカの大学に入学して、ローカルの新聞社にインターンとして入社し、数年後に正社員になり、そこからキャリアを積んで、30代後半で退職して、投資を受け、独立する、のが、普通です。

でも、その「最短距離」は、僕にとっては、かなりの「遠回り」でした。人生は数学の方程式のようには運ばない。

マンハッタンの最前線からニューヨークの今がわかるメルマガ詳細はコチラ

 

みなさんも思い当たることがあるのではないでしょうか。書店に行くたび、多くのマニュアル本、自己啓発本のタイトルに囲まれ、心の中で「今日から、ちゃんと」と思い立つ。

その熱量は24時間も続かない。コスパを考えて、何かをやり始めるも、続かない。世間では、これがコスパのいい方法と言われ、義務感で始めるも、ワクワクすることじゃない限り、人間、継続できない。

仮にやり遂げられたとして、数年後、あれはなんだったのだろう、と思い返すほど、今の生活に直結して効果があるわけじゃない。逆に義務感のように嫌々やり続けたことが、今の自分の生活を支えていることもある。

そう、コストパフォーマンスばかりを気にする生き方が良いとか、悪いとかの前に、コストパフォーマンスの良い生き方、なんて、未来を予言できる予知能力者じゃないかぎり、できないのです。

じゃあ、どうすりゃいいんだ。

今やっていることが、本当にコスパいい結果になるかどうかわからないなんて、やる気なくすじゃないか! そう言われるかもしれません。

なので、自分らしさやコスパなんかを考えずに、今日やるべきことをしっかりやる。精神論やガッツ論じゃなく、それ以外、人間は方法がない。

で、後々、その通ってきた動線が、俯瞰で見た時、結果的に「自分らしさ」のようなものになっていたりする。

冒頭に書いた、自分らしく生きている人間で、自分らしく生きようと思っている人はいない、とは、つまりはそういうことだと思うのです。

マンハッタンの最前線からニューヨークの今がわかるメルマガ詳細はコチラ

 

image by: Shutterstock.com

高橋克明この著者の記事一覧

全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明 』

【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け