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力こそ正義?習近平は中国共産党と台湾の関係をどう考えているのか

先日シンガポールで開催されたアジア安全保障会議の席上、戦争も辞さないとして台湾の独立阻止に強い姿勢を見せた中国代表。かつて習近平氏も武力による台湾併合を口に話題となりましたが、独裁体制を強める中国の指導者はどのような「台湾観」と歴史認識を持っているのでしょうか。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』ではジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、習近平氏のこれまでの発言の分析を通して、その解明を試みています。

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風雲急を告げていた中国の台湾侵略計画の新たな展開 2 習近平国家主席の歴史認識を考える

前回は中国共産党の支配する「中華人民共和国」と、中国国民党の支配する「台湾(中華民国といってよいかどうかは微妙)」の関係をかなり簡単にお話してきました。

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実際に、その歴史にとらわれるような書き方はしたくありません。

そのような歴史の話ばかりをしても、あまり意味はありませんし、また、そのような話は様々なところで見聞きすることであると思います。

そこで、「習近平国家主席の考え方」ということと、人民解放軍の動きそして、それに対する国際情勢の動きということに焦点を当てて話をしてみたいと思います。

もちろんその中で「歴史」にかかわりがあることは、見てゆきたいと思います。

さて、まずは習近平国家主席の考え方ということを解明してみたいと思います。

もちろん、現在の段階で習近平国家主席の考え方は「私が推測する」ということしかないので、この内容が正確であるかどうかは不明でしかないということになります。

もちろん、私のように習近平国家主席の周辺の人にも嫌われている場合、様々な人との会話で大体の事を推察することもできませんので、より正確性はおちてゆくということになります。

そのような場合は、習近平国家主席の基本的な性格と、一方で様々な発言や出来事から変化する心を推測し、どのようなことになっているのか調べるしかないということになります。

さて、たった今「歴史」は関係ないといったばかりですが、このように習近平国家主席の思考を追うためには、最低限、「習近平国家主席が中国共産党と台湾の関係や歴史をどのように認識しているのか」ということを見なければならないということになります。

そこで、その一つの指針となる内容を見てみましょう。

昨年、2021年の10月9日に、辛亥革命100年の記念式典がありました。

その中で習近平国家主席は、「平和的な方法」での統一が「台湾の同胞を含む中華民族全体の利益に最も合致する」と述べています。

ただ、「国家の主権と領土保全を守るという中国国民の固い決意と確固たる意志、高い能力を誰1人として過小評価すべきではない」とも付け加えています。

「祖国の完全統一という歴史的課題は必ず果たされなければならないし、必ず果たされるだろう」ということを言っているのです。

これは、習近平国家主席が、当初は平和的な手段で国家統一を図るということを目指しますが、最終的には軍事的な威圧または手段を厭わないということを主張しているということになります。

それ以前の7月1日の演説を解析すると、習近平国家主席の考え方はこのようになっているということが見えてきます。

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第一に、冒頭で5,000年以上にわたるとされる中華民族の過去に、次いで1840年のアヘン戦争に言及しています。

それにより、中国が半植民半封建社会に陥ったと解釈しています。

これは、アヘン戦争という軍事的な行為によって中国全土が反植民地的な状況になったという「侵略される側の論理」があったことを言っているのです。

そのうえで、中国共産党は「強くなければ、同じような歴史を繰り返す」という認識を持っていることがわかります。

この事は、これまで習近平国家主席だけではなく、他の国家主席も同様のことを言っていたので、伝統的革命史観の叙述を継承したものだと言えるのではないでしょうか。

その後、太平天国運動、戊戌変法、義和団運動、辛亥革命などが挙げられ、「各種の救国方案が順番に提起されたがいずれも失敗に終わった」などと言っています。

つまり、一度植民地的な内容になってしまうと、それを撒き返すのは難しいということを言っているのです。

そのために、「中国は国家の滅亡を救う運動を牽引する新しい思想や、革命の力量を凝集していく新たな組織が、とりわけ必要とされ」、その必要性もあって1921年に中国共産党が登場したということになっています。

その結果、中国共産党の成立は、マルクス・レーニン主義との関係性、すなわちマルクス・レーニン主義と「中国人民と中華民族の偉大なる覚醒」との結合によって導かれた、と主張しているのです。

要するに、辛亥革命によってなされた中華民国は、弱者の歴史を反転させることができなかったということになります。

そして、それは一部の指導者が躍起になっただけで、中国人民全体が覚醒していなかったからであるということになるのです。

その人民全体の覚醒を得られたのは、中国共産党の成立と共産主義革命によるものであるとしています。

まさに、共産党がどうして中国の中で出てきたのかということを言っているのです。

欧米による半植民地状態、そして、それを反転させることのできなかった中国国民党、それらに嫌気がさした中国人民の総意に基づいて中国共産党が成立し、人民全体を覚醒させて、欧米を追い払ったということになるのです。

この事は、「中華人民共和国憲法の前文」にも記載されていることですから、その歴史認識を繰り返しただけであるということが言えます。

第二に、中国共産党の成立以後は新民主主義革命を成し遂げ抗日戦争へと至る過程として描かれ、北伐戦争、土地革命戦争、抗日戦争、解放戦争などが相次いだと主張しています。

この過程では中国共産党が人民を率いて、帝国主義、封建主義、官僚資本主義を打破したことが大きな成果だとされ、それが中国の半植民半封建状態を終わらせたということになります。

もっと端的に言えば、中国人民は、共産党の指導により戦争と革命によって「反植民地・半封建状態」を終わらせたのであるということを言っているのです。

まあ、ここによって、共産党の存在とその活躍を肯定するということになります。

この中に「解放戦争」つまり「国共内戦」もこの中に入っているということが特徴的です。

それにより、数千年続いた封建制度が崩れ、また帝国主義にも勝利したのであり、それこそ中華民族の有史以来最も広範で重大な社会変革なのだといいます。

逆に言えば、「国民党」つまり「現在の台湾」は封建主義・帝国主義の中国国内における象徴的な存在であって、それに勝利したことによって、中国人民は解放されたのであるということになっています。

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もちろん、これが共産党のトップや指導者層の認識であり、中国人、特にウイグルなどを含めた多くの人々の総意ではないことは明らかでしょう。

しかし、そのようなことを宣言することができるくらいに、中国共産党の上層部は安定しているということになります。

同時に、そのようなことを言葉にして宣言しなければならないほど、中国共産党内部で習近平国家主席の立場は安定していないということになります。

少し複雑なので、まとめていえば、共産党の支配ということは固まっているのかもしれないが、共産党内部での習近平国家主席の天下が安泰であるとは限らないということになるのです。

そして、ここで中国共産党が勝利して中華人民共和国が成立したことこそ、貧しく立ち遅れ、人口が極めて多い東方の大国が社会主義社会へと飛躍的していく大きな一歩であり、また中華民族が偉大なる復興を遂げる上での根本的な政治的前提、基礎となったとしています。

社会主義でなければ中国を救うことはできず、また社会主義でなければ中国を発展させられず、そして中国共産党でなければ中国を導くことはできない、という論理がそこには見られるのです。

第三に、改革開放の部分は、「我々は新中国成立以来、党の歴史において最も深遠な意義のある偉大なる転換を行」ったとされ、「党が社会主義の初級段階にあるという基本路線を確立し、改革開放を強い意志の下に推進」されたとしています。

つまり、改革開放もまた、あくまでも社会主義の下にある歴史展開であるということになります。

「高度で集中的な計画経済体制から、活力に満ちた社会主義市場経済体制へと、また閉鎖的、半閉鎖的な状態から全方位的で開放的な状態へという歴史的な転換を遂げ」たということになっているのです。

実際に、政治や経済の改革開放と共に、教育の改革開放も1970年代に行われています。

教育の改革開放によって、中国の大学や高等教育は英語や外国語を学べるようになりましたし、市場主義経済の経済学などを取り入れるようになりました。

また、中国人がアメリカや日本に資本主義や法制度などの「文系科目」つまり「社会システム」を学ぶために、留学しに来ていたのです。

逆に言えば、中国共産党政府は、それだけ計画的に「社会システム」「経済」「市場」というようなことを学び、そのうえでここ数年になって「科学技術」「IT」などを学んでいるということになります。

社会システムなどの「文系科目」に関しては、「産業スパイ」のような内容はありません。

そのことからあまり大きな問題にはならなかったと思います。

しかし、今日になって、無体財産権や科学技術ということを「スパイ的に盗む」ということになると、これは穏やかではないということになるのです。

同時に、法制度や経済を学びながら、それを取り込むのではなく、それを利用して相手国を交錯するというようなことになってきているのですから、あまり良い話ではないのかも知れません。

その他にも、マスコミなどの利用の方法を学んでいることは間違いがないようです。

この7月の演説の中では、GDPが世界第2位になったとか、中国社会を「総体的な小康」へと導いたとかいったことが成果として挙げられますが、改革開放もまた中国共産党、社会主義の発展という主旋律の中に位置付けられていることに変わりはないのです。

さて、このような資料から導き出されることはいったい何でしょうか。

(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年6月13日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Kaliva / Shutterstock.com

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