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「葬式代さえあればOK」が危ない。誰もが落ちる老後資金の落とし穴

誰にでも平等に訪れる老いですが、その生活の質を決める大きな要素となるのが「老後資金」であることは異論のない事実ではないでしょうか。気になるのは具体的な額ですが、「介護が必要になった場合の総額」をレクチャーしてくださるのは、ファイナンシャルプランナーで『老後資金は貯めるな!』などの著書でも知られ、NEO企画代表として数々のベストセラーを手掛ける長尾義弘さん。長尾さんは今回、老後資金を巡るさまざまな「誤り」を正しつつ、安心できる老後生活を送る上で必要となってくる金額を提示するとともに、その確実な「調達法」を紹介しています。

プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

「老後は元気なあいだにお金を使わないと損!」と思う人の落とし穴!

「老後のお金は、元気なあいだに使わないと、もったいない!だって歳をとって身体が動けなくなったら、お金を使うことができない」

なんて、思っている人が多いのではないかと思います。その気持ちはわかります。

しかし、「元気がなくなったら、お金は使わない」というのは誤りです。

むしろ介護になった場合には、どんどんお金が必要になるってこともあるのです。

介護にかかる総額の費用として、800万円ぐらいの備えが必要になります。もし、老人ホームなどの高齢者施設を利用すると、もっとお金が必要になるのです。

「なら、特養(特別養護老人ホーム)」に入ればいいや!」なんて、甘い考えはやめた方がいいですよ。特養は、原則要介護3以上でないと入居できません。要介護3に認定されるまでの間、どうしますか?

歳をとっても、やっぱりお金は必要なのだという話をします。ちょっと暗い気持ちになるかも知れませんが、心構えとして知っておいてください。

◎出歩くことが少なくなってもやっぱり「お金」はそれなりに必要

歳をとると、いずれどこにも行けなくなるから、お金を使わなくなるだろう。だから、動けるうちにお金を使わないと「損」。「歳をとったら、後は葬式代ぐらいあればいいな」なんていうのは勘違いです。

たしかに、歳をとってからは、そんなに頻繁に旅行にも行けないし、そもそも出掛けることも少なくなります。きっと、飲みに行ったりすることも少なくなりますね。

当然、レジャー・旅行費っていうのは、減っていくでしょう。ですから、ある程度の生活費があれば、それなりに暮らしては行けるかも知れません。

しかし、もし介護になったときには、どうなるのでしょうか?

生活費のほかに介護のお金がかかってきます。

でも、公的介護保険があるから、そんなにお金は必要ないのでは?と思いますよね。

たしかに公的介護保険があり、1割の負担で、さまざまな介護サービスを受けることができます。

介護費用の総額は約800万円!

では、実際にどのくらい介護による負担増があるのでしょうか?

生命保険文化センターの調査によると、住宅の改造や介護ベッドの費用など一時的にかかった費用として74万円。それに月々の費用が平均8.3万円。介護を行った期間は、平均で5年1ヵ月(61.1ヵ月)です。

介護にかかる総額としては、約581万円になります。

認知症の場合には、さらに費用がかかると言われています。認知症の人と家族の会の調査によると介護期間は平均6~7年、10年以上という人が3人に1人強というのですから、かなりの長期になる可能性があります。ですので、800万円くらいは準備しておいた方がいいでしょう。

高齢者施設を利用するとさらに「お金」が必要に

要介護2の場合、介護保険を使って介護サービスを受ける限度額は約20万円です。利用者は原則1割負担(所得により2割負担)ですので、介護サービスを限度まで利用すると月額約2万円の負担になります。さらに限度額を超えた分については、全額負担になります。また介護保険の適用外のサービスも全額負担になります。

もし施設介護を希望する場合は、その負担もグッと増えます。

公的な老人ホームを利用すれば、費用は安くなります。しかし、公的な施設の場合には、要介護などの条件があり、すぐに入れないこともあります。冒頭に述べましたが、特養には要介護3以上でないとダメという条件があります。特養の費用というのも、さまざまですが、だいたい月額15万円はかかります。

民間の施設を検討した場合は、負担はもっと増えます。たとえば、サービス付高齢者住宅では、入居金は、安いところで数十万円。なかには億という超高級な施設もあります。月額の料金も20万円から100万円近いところまでピンキリです。もし首都圏の中程度だとすると家賃分の前払い金は500万円で、月額25万円ぐらいでしょう。

「公的年金」を増やして、安心できる老後生活を目指す

こう考えると、元気なときにお金を使わないと「損」なんて言っていられません。将来の備えもなく、お金を使ってしまうと寂しい老後になってしまいます。

つまり、人生の後半もお金を持っているかどうかで、生活の質が変わるってことにもなりますね。ということは、死ぬまでお金が必要ですが、死んでからお金は必要なくなるということです。これはとても難しいです。だっていつ死ぬのかは、誰にもわからないことです。ぴったりお金を使いきって死ぬってことはできませんからね。

それが可能な老後資金というのは、唯一、公的年金です。年金は、死ぬまで受け取れますが、死んでからは受け取れません。

老後の介護を安定させるには、年金をできるだけ増やすようにすることが大切です。なぜなら介護になったときでも、受給額が多ければ、介護費用もそれで支払うことができます。また施設介護になった場合でも、月額の使用料は、年金を使うことで安定して支払うことができます。

プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

image by: Shutterstock.com

長尾 義弘

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