幕を開けた新冷戦。欧米日本vsプーチン習近平の時代を日本はどう生き抜くか

2022.07.03
 

先鋭化する中露の結束と共闘

一方、欧米日本vs.中露と定義づけるのであれば、中露側の動向も見る必要がある。これまで中国はロシアの侵攻を直接非難せず、対ロ制裁も一切実行せず、むしろロシアの孤立は避けるべきで経済的には接近する姿勢を示してきた。たとえば、中国の税関総署は6月、5月のロシアからの原油輸入量が前年同月比で55%、天然ガスが54%それぞれ増加したと明らかにしたが、これはウクライナ侵攻とは別に中国がロシアとの経済関係を重視してきた証となろう。習国家主席は6月に開催されたロシア主催の国際経済フォーラムの場で、欧米による一方的な対ロ制裁は排除する必要があるとの認識を初めて公言した。また、プーチン大統領も6月、オンライン形式で行われた新興5カ国BRICS首脳会議前のビデオ演説で、ロシアは経済や貿易を中国やインド、南アフリカやブラジルなど信頼できるパートナー国に振り分けていくとの意思を示した。

この両者の意思表明からは、“欧米に屈しない”、“我々は我々の陣営を築いていく”、そして“そのために今後中露は結束を深めていく”ということが読み取れる。近年、そして今年5月や6月にも、中露の戦闘機が日本周辺上空を共同飛行し、軍艦やフリゲート艦などが津軽海峡を超え、日本の太平洋側を一緒になって南下する姿が相次いで目撃されているが、これも米国や日本に中露共闘の姿勢をアピールする狙いがあることは疑いの余地はない。今後、中露による結束、共闘はさらに先鋭化することだろう。

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一方、欧米日本vs.中露の構図が先鋭化した際、ポイントになるのが大国インドの立ち位置だ。インドはロシアの武器供与などで伝統的な友好関係にあり、インドは対ロ制裁に加わっていない。むしろ、ウクライナ侵攻後、両国間の石油貿易は活発化している。日米豪印によるクアッド首脳会合が5月に開催された際、日本は共同声明でロシア非難の文言を入れるつもりだったが、クアッドの一体性を内外に示すためにもその時はインドの立場を考慮し、ロシア非難の文言を避けた。

“欧米日本vs.中露”の時代にどう日本は生き抜いていくのか、国民は真剣に考える時に直面している。

image by: 首相官邸

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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