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サラリーマン大家は本当にトク?元国税調査官が教えるカラクリと落とし穴

否応なしに引かれるサラリーマンの税金も、アパートやマンションの賃貸経営をすれば節税できると、広告で見聞きしたことはないでしょうか?どんなカラクリで、何か落とし穴はないのか、メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』著者で元国税調査官の大村さんが、わかりやすく教えてくれます。不動産投資の場合、減価償却などで税金は確かに3分の1から4分の1になるケースが多いものの、しっかりと利益が出る賃貸物件は市場に出回ることも少なくなっていて、「節税」という甘い言葉に乗ってしまうのは注意が必要と、大村さんは伝えています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年9月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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サラリーマンが不動産経営すれば税金が安くなる?

昨今、アパートなどの販売広告で「不動産経営をすれば税金が安くなる」というような文言をよく見かけます。普通の人にとっては、なんか意味がわからないことだと思います。サラリーマンも不動産経営すれば税金が安くなるのでしょうか?それはいったいどういう仕組みなのでしょうか?今回はこのことについて取り上げたいと思います。

賃貸アパート、賃貸マンション、貸家などの不動産事業は、確かにやり方によっては税金が安くなります。それはサラリーマンでも同様です。とういうことかというと、不動産経営をすることによって、サラリーマンとして源泉徴収された税金が還付されることもある、ということです。

簡単にいえば、不動産経営で赤字が出れば、その分を給料所得から差し引くことができるので給料の税金が安くなる、ということです。個人の所得にかかる税金(所得税、住民税)というのは、いくつかの所得を合算して税金の申告をするようになっています。

そしてサラリーマンがアパート賃貸などの不動産業をしている場合、サラリーマンでの給与所得と、アパート賃貸での不動産所得は合算して、その総額に対して税金がかかるようになります。

もし不動産所得が赤字だった場合、その赤字分は給与所得から差し引かれることになるのです。たとえば、給与所得が5百万円あって、不動産所得は赤字3百万円ある人がいるとします。この人の税金は、5百万円-3百万円で差し引きが2百万円が「課税される所得」となります。しかし会社の経理では、5百万円の所得として税金が計算され源泉徴収されていますから、当然、払いすぎているということになります。なので、この人は確定申告をすれば、源泉徴収された税金がかなり戻ってくるのです。この方法で、給与所得の税金を還付してもらっている人はけっこういるのです。

儲かっていても経理上は赤字になる?

「不動産経営で赤字を出して税金を安くする」というと、どうしてもこういう疑問が起きることでしょう。「税金が減っても不動産業で赤字を出せば元も子もないじゃないか?」と。確かに、不動産経営で大きな赤字を出してしまえば、給料の税金が安くなったところで、収入自体が大きく減るわけなので、本末転倒ということになります。

が、ある理由により、不動産経営では実質赤字になっていないのに、経理上は赤字になる場合があるのです。それは「減価償却」というマジックです。

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減価償却、会計の初心者の方は知らない方も多いでしょう。でも基本的な仕組みは非常に簡単です。減価償却というのは、一年以上使えるもので10万円以上の高額なものを事業のために購入した場合、その耐用年数に応じて、購入費用を各年に案分して費用化するという制度です。

たとえば、耐用年数10年で、200万円のものを買った場合、最初の1年間に全部費用として計上するのではなく、毎年20万円ずつ10年間にわたって費用化していくのです。本当はもう少し複雑な計算があるのですが、ざっくり言えばこういうことです。不動産経営を行うために、マンションやアパートを購入した場合、その建物も当然、減価償却をすることになります。

減価償却というのは、実際に費用として、お金が出て行くわけではありません。なのに、帳簿上だけ費用として計上されていくわけです。

また家族を不動産事業に従事させていることにして、家族に給料を払ったりすることもできます。これは、おおむね10部屋以上の貸室があるなど一定の条件が必要ですが、普通に不動産経営をしていれば特に難しいことではありません。

「儲かっているのに赤字」のカラクリ

実質的には利益が出ているのに、帳簿上は赤字になるというカラクリ、会計初心者の方には、若干、わかりにくいところですね。ここで実例を挙げて、ご説明しましょう。木造モルタル建てのアパート(10部屋)を8000万円で30年のローンを組んで建てた人がいるとします(説明の便宜上、土地は最初から持っていたことにします)。

家賃収入は、ひと部屋あたり月5万円、年間60万円。10部屋とも一年間埋まっていたら600万円の収入になるというわけです。部屋は年間8割程度埋まっていたとしまして年間収入が480万円ということになります。

で、減価償却の話です。この建物の資産価値は8千万円です。木造モルタルの建物は耐用年数が20年なので1年間に5%ずつ減価償却していくことになります。ということは8千万円×5%で400万円です。つまり、この400万円を減価償却費として計上できるのです。さらに、この人はローンを組んでアパートを建てていますから、その支払利子も経費として計上できます。利率が2%として、8千万円×2%で160万円。この160万円が支払利子として計上できます。減価償却費400万円に支払利子160万円を足せば560万円です。この時点ですでに家賃の年間収入480万円を大きく超えています。

これに、家族に給料を払ったり、不動産屋への支払いとか、建物の修繕費とか、様々な雑費とかの経費が全部で200万円あったとします。すると経費は全部で760万円となり280万円の赤字になるのです。この280万円を給料から差し引くことができるのです。年収500万円であれば、差し引き220万円となります。ざっくり見て、税金は3分の1から4分の1程度になります。

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サラリーマン大家の落とし穴

では、サラリーマンは不動産経営をした方がいいのか?というと決してそうではありません。

というのも、現在、不動産経営で儲けることは非常に難しくなっているからです。少子高齢化が人口が減っているにも関わらず、マンションやアパートなどは増えています。だからよほどいい場所、いい物件ではないと、不動産経営で儲けを出すことはできません。

一昔前であれば、サラリーマンが不動産経営をするようなことはあまりありませんでしたので、それなりに旨味がありました。しかし、サラリーマンがアパートを購入して不動産経営をするケースは非常に増えており、条件のいい物件などめったにないのです。

不動産業者が売り出している賃貸アパートや賃貸マンションなども、本当に儲かるのであれば、不動産業者は売らずに自ら経営しているはずなのです。儲かる可能性が低いから人に売っているわけです。多少、税金が安くなったとしても、不動産事業で「本当の赤字」がでてしまえば、自分の資産は減少することになります。つまりは損をするということです。

だから不動産経営をする場合、「節税」ということは副次的なものとして、ちゃんと利益がでるかどうかを研究しなければならないといえます。「節税になりますよ」という不動産業者の売り言葉に乗って不動産経営を始めるようなことはしてはならないということです。

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image by:Hannari_eli/Shutterstock.com

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