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武富士創業者一族による「史上最大の節税」はなぜ可能だったのか?

超富裕層一家が何よりも頭を悩ますのは、相続税の問題なのかもしれません。控除などありますが、ざっくり相続する遺産が6億円を超えると、55%が税金で持っていかれてしまうというのですから、無理もないことのように思います。そして過去には、法の網をかいくぐって1600億円もの“節税”に成功した例があるのだとか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では、元国税調査官の大村さんが、武富士の創業者から長男への贈与税が無税となった仕組みを紹介。最高裁まで争われ国税が敗訴し、利子分400億円まで支払うことになり、法改正にもつながった「史上最大の節税」作戦の全容を伝えています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年10月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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武富士一族の伝説的節税スキーム

税務の世界では伝説となっている「史上最大の節税」というものがあります。これは、武富士の創業者一族が行った相続税の節税スキームです。

武富士という会社は、創業者が一代で築き上げたものです。東証1部上場もしていたので、創業者が保有している株式の資産たるや非常に巨額になっていました。

もちろん、そのまま創業者が株を持ち続けて死亡してしまえば、遺族には莫大な相続税が課されるはずでした。その相続税を逃れるために、武富士一族はあっと驚くような節税を行ったのです。

そのスキームとはこうです。武富士の創業者は、オランダに会社をつくり、自分の持っている武富士の株をそのオランダの会社に保有させました。オランダは、ヨーロッパの中では税金が安く、また銀行の情報秘匿の伝統もあり、いわゆる「タックスヘイブン」のような国です。

オランダの会社の株は武富士の創業者が持っており、実質的には武富士の会社です。が、形式の上ではオランダの会社ということになっており、その会社の株は「海外資産」ということになっていたのです。

そして、そのオランダの会社の株を、香港に在住している息子に譲渡し、日本の贈与税を免れたのです。贈与税というのは、相続税の抜け穴を防ぐためにつくられた税金です。自分の資産を生前に家族などに贈与してしまえば、相続税は課せられなくなります。それを防ぐために、生前に贈与した場合も税金が課されるということになっているのです。

しかし、武富士一族は、海外で資産譲渡を行うことにより、この贈与税を逃れたのです。つまり、武富士一族の贈与税を逃れるスキームは「海外の資産を海外に居住している者に譲渡すれば贈与税はかからない」だから「資産を海外に移し、親族を海外に居住させ、海外で譲渡を行う」ということです。

創業者氏から長男へ贈与された株式の時価は推定2600億円以上でした。2600億円を普通に贈与していたならば、贈与税として1300億円以上を払わなければなりません。それを無税で乗り切ったのです。

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国税が裁判で敗北

国税当局も、それでは腹の虫がおさまりません。実質的に日本の企業である武富士の株を自分の息子に譲渡しているのに、贈与税をかけることができないのです。だから、国税当局は、「長男は香港に住民票を移しているが、実際は日本で生活しており香港に住民票を移したのは課税逃れのために過ぎない、実際は日本に住んでいたのだから日本の贈与税はかかる」として追徴課税を課しました。

しかし、武富士創業者一族はその課税処分を不服として裁判を起こしたのです。この裁判は、最高裁まで争われ、最終的に国税は敗けてしまいました。

最高裁では「当時、長男は香港に居住の実態があった」として、贈与税は課せられないという判断を下したのです。国税は徴収していた税金を創業者一族に返還しただけではなく、税金を仮徴収していた期間の利子約400億円までを払うことになったのです。

「海外の資産を海外に居住している者に譲渡すれば贈与税はかからない」というのは、法律の欠陥のようにも思われます。実はこのとき国税当局は、この抜け穴をふさごうとしていました。平成15年の税制改正で「外国に住んでいる者に、外国の資産を贈与しても日本国籍を有していて海外生活が5年以内するならば贈与税がかかる」ということにしたのです。

しかし武富士の創業者一族は、この税制改正の直前に駆け込み的に贈与を行ったのです。平成15年度の改正により、「海外に5年以上居住し、日本国内に5年以上住所がない人が、海外の資産を贈与された場合は、贈与税がかからない」ということになっています。だから、資産を譲渡される人が5年以上海外に住まなくてはなりません。(※編集部注:その後の法改正により、2022年現在では贈与者受贈者双方が10年以上国内に住所なしの必要あり)

しかし、武富士一族がこの節税スキームを行ったときには、この「5年以上」という縛りがなく、ただ海外在住であればよかったのです。そのため、このような莫大な贈与税を簡単に逃れることができたのです。

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