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小林よしのり氏が猛批判。ロシアを擁護する鈴木宗男氏の呆れた「北方領土」発言

これまでもロシアの立場を代弁するかのような発言で、たびたび炎上騒ぎを巻き起こしてきた鈴木宗男参院議員。ウクライナ戦争勃発後もロシアを擁護する姿勢を貫いていますが、ここに来て日本の国益を毀損しかねない主張を展開し始めています。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』等の人気作品でお馴染みの漫画家・小林よしのりさんが、「北方四島は日本の領土」としたゼレンスキー大統領を「有難迷惑」と言い放った鈴木氏を強く批判。さらに鈴木氏の言う「ロシアによる北方領土支配を正当化する論理」を完全論破しています。

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鈴木宗男の呆れた北方領土発言

いよいよ23日は『ゴーマニズム宣言SPECIAL ウクライナ戦争論』の発売日だ。これはウクライナ戦争を他人事としか思わず、「どっちもどっち」などと平気で言っている平和ボケ日本人に「覚悟」を迫る書である。

ウクライナのゼレンスキー大統領は7日夜、ビデオ演説の冒頭で「本日、重要な決定がなされた。歴史的だ」と述べた。

その歴史的に重要な決定とは、「ロシアに一時的に占領された北方領土を含め、日本の主権と領土の一体性を尊重することを再確認する」というものだった!

そしてゼレンスキー大統領は同じ趣旨の大統領令に署名し、ウクライナ最高会議(議会)も同じ内容の決議を採択したことを明らかにした。

確かにこれは、歴史的な決定である!

ウクライナ議会の決議は、「日本の北方領土は1945年にソ連が何の法的根拠もなく占領した」「全ての日本の市民を強制的に追放した」と強調した上で、「(北方領土は)ロシアの占領下にあり続けている」として、ロシアに返還を求める日本の立場を支持し、国際社会が解決のためにあらゆる手段を講じるように訴えている。

そしてゼレンスキー大統領も演説で北方領土について、「ロシアはこれらの領土に何の権利も持っていない。世界中の人々がよく知っている。我々は行動しなければならない 私たちはロシアが占領する全ての土地を解放するため行動しなければならない」と重ねて述べ、こう訴えた。

「ウクライナと国際法秩序に対する今回の戦争によって、かつてロシアに奪われたものすべてが真に解放されるのも時間の問題になった。ロシアはこの状況に自ら陥った」

「侵略者は敗北しなければならない。戦争が再び起きないように。そして平和が本当に長く続くために。侵略者には何も残すべきではない。我々のパートナーの国々のために正義が復活すると信じている」

よくぞ言ってくれた、ゼレンスキー大統領!

ロシアに領土を不法占拠されているという点においては、ウクライナも日本も同じである。

現在ロシアと領土問題を抱えている国は、他にもジョージア、モルドバがあり、さらに歴史をさかのぼれば、フィンランド、ポーランド、バルト三国など、ロシアに侵攻され、泣く泣く領土を放棄させられた国は数多い。

このようなロシアの横暴は、今度こそ終わらせなければならない。これは、世界史的な転換点となる戦争である。

ロシアに対するウクライナの戦いは、日本にとって決して他人事ではない。むしろ積極的にウクライナと共闘し、日本もロシアから北方領土を取り返し、世界に正義を復活させるための戦いを展開すべきなのである!

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ところが、このウクライナの歴史的決定に対する日本のニュースの扱いは、極めて小さかった。

しかも報道はしても「日本政府に対して、ロシアへの制裁とウクライナへの支援を継続してほしい意向があるものとみられる」などと、いかにもウクライナ側の「打算」の産物のように示唆する、冷ややかな論調が目立った。

何が何でも「他人事」にしておきたい、どんな事情があろうと戦争にだけは関わりたくない、頑としてお花畑に居座り続けたいという情けない日本人は、まだまだ多いと言わざるを得ない。

とはいえ、関わり合いたくないと逃げる臆病者は、まだマシな方だと言うべきなのかもしれない。

中には「他人事」どころか完全にロシアの側に立って、ゼレンスキーを非難する信じられない人間までいるのだ!

日本維新の会副代表の参院議員・鈴木宗男は、ゼレンスキーの北方領土発言について10日のブログにこう書いた。

「単純に考えれば日本を支持する立場のように見えるが、有難迷惑な話である」

宗男が「ロシアの手先」だということは、知ってる人にとっては「何を今さら」の事実なのだが、ウクライナ戦争開戦以降は、もうそれがなりふり構わぬ様相と化している。

宗男は開戦直後・2月26日のブログで、「ゼレンスキー大統領になってから、ミンスク合意、停戦合意を履行しなかったことが今日の事態を招いている」と述べ、メディアについても、「一方的にロシアを批判する前に、民主主義、自由主義は約束を守るのが基本である。その約束を守らなかったのはどの国で誰かをメデイアは報じないのか」と非難した。

宗男は戦争の原因がゼレンスキーの約束違反であり、正義はロシアの側にあり、ウクライナの自業自得であると決めつけ、その後も何があろうがロシアの立場を正当化する発言のみを続けている。今回のゼレンスキーの発言に対する非難も、その一環である。

宗男は北方領土についても、ロシアの支配を正当化してこう言う。

それは、戦後の国際的諸手続き(ヤルタ協定、国連憲章、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約等)で、ロシアが現在実行(ママ)支配しており、二国間で解決すべき問題であり、いわんやロシアを刺激しても何も得るものはない。

まず、これが何を言っているのかよくわからない。

普通は「国際法に基づきロシアが実効支配」と書くはずだ。

国際法ではなく「戦後の国際的諸手続き」によって「ロシアが実効支配」とは、どういう意味なのだろうか?

わかりにくいのも無理はない。これは宗男が自分で考えて言っているわけではなく、現在のロシアの主張をそのまんま鵜呑みにして言っているだけなのだ。

「ヤルタ協定、国連憲章、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約」を基に、北方領土は合法的にソ連に移り、それをロシアが引き継いだというのは、ロシアの言い分そのものであり、鈴木宗男は忠実なるロシアの手先として、それを繰り返しているのである。

国連憲章の「旧敵国条項」には、第2次世界大戦中に連合国が、日本を含む「旧敵国」に対して起こした行動や許可した行為について、国連憲章は無効にしたり制限したりはできないという規定がある。

そして、1945年2月にアメリカ・イギリス・ソ連の間で交わされた「ヤルタ協定」では、ソ連が対日参戦の見返りに南樺太と千島列島を獲得することを約束している。

以上のことからソ連は、国連憲章の旧敵国条項を根拠に、ヤルタ協定の有効性を主張して、北方領土の領有は合法であると言い続けていた。

だがこれは、全くの詭弁である。

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ヤルタ協定は、ドイツ軍の最後の猛反撃を受けて一時守勢に立っていたチャーチルと、日本軍との決戦を前に北方からの支援を欲していたルーズベルトが、スターリンに譲歩しまくってまとめた「秘密協定」であり、国際法としての効力を持たない。

実際、日本は当事国であるにもかかわらず、当時はその存在すら知らなかったとして無効を主張しているし、アメリカも戦後になって「政府の公式文書ではなく無効」と表明している。

したがって、ヤルタ協定は合法性の根拠とはならないのである。

国連憲章の「旧敵国条項」については、1995年には国連総会で「時代遅れ」として「将来の最も早く、適切な会期に憲章改正手続きを開始する」との決議を賛成155、反対ゼロで採択している。

実際には手続きが大掛かりになることなどから作業が進まず、条文は今も残っているが、この決議で事実上条項は効力を失っていると言っていい。

しかもそれ以前に、旧敵国が国連に加盟した時点で条項は無効になっているという解釈もあり、ドイツは「既に死文化している」として問題視していないという。

さらに、旧敵国条項を根拠に北方領土占拠の正当性を主張してきた当のソ連も、冷戦終結と共に態度を軟化させ、1991年にはゴルバチョフ大統領が海部俊樹首相との「日ソ共同声明」において、「旧敵国条項がもはやその意味を失っていることを確認する」としている。

また、ロシアも旧敵国条項を「時代遅れ」とする1995年の国連総会決議に反対していない。

ポツダム宣言では第8条で「カイロ宣言の条項は履行されるべき」とした上で、日本国の主権は「本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島」に限ると規定されている。

ロシア(と鈴木宗男)はこれを根拠に、北方領土は日本の領土ではなくなったと主張している。

ところがポツダム宣言では、どこが「我々の決定する諸小島」になるのか、具体的には指定されていない。

しかも、ここで「履行すべき」としているカイロ宣言には、日本に対する要求を記した条項と共に、「同盟国(アメリカ、イギリス、中華民国)は、自国のためには利得も求めず、また領土拡張の念も有しない」との一文が明記されている。

ポツダム宣言に基づき日本がカイロ宣言を履行するならば、戦勝国側もカイロ宣言に基づき、日本から領土を奪って自国の領土拡張をしてはならないのであり、ソ連が北方領土を奪ったことは、明らかにカイロ宣言に違反する。

それとも、ソ連はカイロ宣言に加わっていないから適用外で、日本から領土を奪ってもいいとでも言うのだろうか?

また、サンフランシスコ平和条約には「日本国は、千島列島並びに日本国が1905年9月5日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」という条文がある。

ロシア(と鈴木宗男)は、これも北方領土の占拠を正当化する根拠としている。

だが日本政府は、北方領土は千島列島に含まれず、放棄していないとしているし、そもそもソ連はサンフランシスコ平和条約に署名しておらず、同条約上の権利を主張できる立場にないのである。

そして何よりも強調しておかなければならないのは、ソ連は当時まだ有効であった日ソ中立条約を無視して対日参戦し、日本のポツダム宣言受諾後も攻撃を続け、1945年8月28日から9月5日までの間に、北方四島を不法占領したという事実である。これが全ての前提であることは絶対に忘れてはならない。

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宗男は偉そうに「外交は積み重ねであり、正しい歴史の事実に基づいて努力していくしかないのである。この事を多くの人に理解して戴きたい」と言っているが、この言葉はそっくりそのままお返ししたい。

宗男の言う「正しい歴史の事実」とは「ロシアが言ってる歴史」である。

そしてロシアの言う歴史とは、中国や韓国と全く同じで、自分に都合よく捏造しまくった歴史でしかない。

しかもロシアにとって条約とか国際法とかいうものは、自分に都合いいようにどんなに曲解してもよく、都合が悪ければいくら破ってもかまわないものなのだ。

むしろ条約なんてものは、相手国を油断させるためのものでしかなく、条約を破るために条約を結ぶという感覚の国がロシアである。

これこそが本当に「正しい歴史の事実」であり、それを詳細に描いたのが『ウクライナ戦争論』なのだ。

宗男はゼレンスキーの発言を「有難迷惑」とまで言い、決してロシアを刺激せず、友好関係を保っていけば北方領土が帰ってくると主張しているわけだが、そんなことは絶対にありえない。それは、安倍政権の日露外交がとっくに証明している。

宗男は「とにかくプーチンと仲良くすれば北方領土が戻ってくる」とばかりに安倍晋三を騙して日露外交を推進したが、結果はただ無駄に経済支援をさせられただけで、何にもならなかった。

むしろ、「二島先行返還」の甘言に乗せられて、国後・択捉を永遠に放棄しかねないほどの状態になっていて、何にもならなくてまだよかったと言うべきところだったのである。

そんなことをやった人間がまだ国会議員をやっていて、しかも野党第2党の副代表だというのだから、悪い冗談というしかない。

宗男に言わせれば、ウクライナ戦争勃発を受けた日本政府の対露政策までが、「日本が経済制裁、人的制裁など、先に喧嘩を売った形になり、日本は非友好国になった」と非難の対象になってしまう。

ロシアが侵略しようが、虐殺しようが、略奪しようが、破壊しようが、強姦しまくろうが、とにかく日本はロシアと仲良くしなきゃダメ!プーチン様を怒らせちゃダメダメ!!というのが鈴木宗男なのだ。

それは、もはや「北方領土返還のため」というタテマエすら消失してしまっていて、プーチンのご機嫌をとること自体が目的化してしまっているようにしか見えない有様である。

宗男の発言は逐一ネットニュースになって「炎上」している。もちろん炎上を狙って取り上げているのだろうし、狙い通りにその都度炎上し、「どこの国の政治家だ!」という非難が殺到しているから、まだいいと言えなくもないが、いちいちこんな売国奴の発言がニュースとして配信されるのは日本の恥である。

もっとも、ウクライナはそれより遥かに深刻な事態になったことがあり、親露派の政治家・ヤヌコビッチが大統領になってしまい、ロシアとウクライナを一体化させる売国政策を推進、マイダン革命によって辛うじて最悪の事態は阻止され、ヤヌコビッチはロシアに亡命している。

鈴木宗男もさっさとロシアに亡命してほしいところだが、ウクライナに比べれば、ネットで売国奴の本性をさらけ出して、袋叩きにされるような小物しか生まなかった日本は、まだ幸運だったと言うべきなのかもしれない。

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とはいうものの、そんなロシアの手先の小物売国政治家の、さらに下僕みたいな存在だった元外交官・東郷和彦に教えを乞うて、「どっちもどっち」だ、いや、むしろウクライナの方が悪い!という愚にもつかない言論を吐き散らしている者がいて、それがあろうことか「保守」を名乗っているのだから、日本の言論界はもはや壊滅していると言うしかない。

だからこそ、もう誰も頼りになる知識人がいないと思い詰め、上梓したのが『ウクライナ戦争論』である!

ウクライナ戦争はまだ続く。そしてこれは、間違いなく世界史的な転換点となる。

それを記録するために、『ウクライナ戦争論2』の製作は既に始まっている。

日本もウクライナ・ゼレンスキー大統領と共闘してロシアと戦い、北方領土を取り戻さなければならない!

当然のようにそう考えられる日本人を育てなければならないのである!! (『小林よしのりライジング』2022年10月18日号より一部抜粋・文中敬称略)

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image by: 鈴木宗男 - Home | Facebook

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【著者】 小林よしのり 【月額】 ¥550/月(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4火曜日 発行予定

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