「変わらない」ということは簡単なように見えて、実は一番むずかしいことなのかもしれません。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、 50年以上変わらない内装とメニューで人気を保ち続けている大阪の近未来風レトロ喫茶店を紹介しています。
変えない、変わらないことで、ファンに支えられている老舗喫茶店
宇宙大作戦(スタートレック)に登場する宇宙船「エンタープライズ号」内のラウンジをイメージしたような喫茶店が、大阪駅前第一ビルにあります。
その空間は、「宇宙」をテーマにしており、天井から下がるライトは「輝く星」、天井には「クレーター」を思わせるデザインが施されています。
壁の絵は、近未来の都市を描いたもの。
鏡が多く取りつけられ、ミラーハウスのようでもあります。
50年以上前に誕生したこのお店は、大阪市が認定する「生きた建築ミュージアム 大阪セレクション」にも選定されています。
昭和レトロなのですが、近未来レトロという表現の方がしっくりときます。
このお店は、第一ビルが誕生した1970年にオープン。約150坪300席という巨大喫茶店です。
元々は、1947年、戦後の闇市で開店した名曲喫茶でした。
約15坪の小さなお店で、ショパンやモーツァルトなどのクラシック音楽と丁寧に淹れた珈琲が大人気となり、連日大盛況でした。
しかし、1970年に駅前再開発の波に飲み込まれ、第一ビルに入居することに。
その新規オープンの際に、現在の宇宙空間が誕生しました。
当時、アポロ11号が月へ行ったことや大阪万博の話題で持ちきりだった世の中を感じ取り、宇宙をテーマにしたのです。
これが当たり、常連さんで賑わうお店へと発展していったのです。
ただし、順風満帆で現在に至るわけではありません。経営危機もあったようです。
その時、創業者の息子である二代目が、定食などのご飯メニューもやってみようかと、父親である創業者に提案しましたが、即座に却下。
変える必要はない、と断固として主張を曲げず、危機的状況であっても、どっしりと構えることで、お客さまを安心させることを選んだのです。
お客さまは、変化に敏感です。変化を嫌がるお客さまもいます。
変化があると、お店の危機を感じ取ってしまうことも。
そうなると、客離れを起こす可能性があります。
創業者は、長年の経験から、直感的に判断したのだと思います。
その結果、現在までの繁盛を守り続けることができたのです。
開店以来、メニューも内装もほとんど変えていません。50年以上、そのままなのです。
老舗というものは、伝統を守りながらも、少しずつ世の中の流れに合わせて、マイナーチェンジを繰り返すものですが、このお店は何も変えていません。
流行も追いません。昔のままを守っています。
変えないということは、もっとも簡単なようで、一番難しいことです。
流れに逆らい、その場に踏みとどまるには、強靭な体力が必要です。
その体力を維持しているのは、創業者の熱い想いです。
昔のままのおもてなしをすること。お客さまにゆったりとした時間を過ごしてもらうこと。
現在102歳となっている創業者は、いまなお元気な姿で、毎日お店の前に立って、お客さまをお迎えしています。
「いらっしゃいませっ!」「ありがとうございますっ!」
ワイシャツに蝶ネクタイを締め、黒い“チョッキ”を着て、大きな声でご挨拶しています。
素晴らしい商売人。尊敬できる人物。愛すべきおじいちゃん。
いつまでも、お客さまを出迎えて欲しいと思います。
MENU:珈琲300円・クリームソーダ380円・レモンスカッシュ350円・トースト300円・ミックスサンド500円・純喫茶のナポリタン500円・チョコレートパフェ600円・モーニング400円など。
image by:Willrow Hood / Shutterstock.com