最も衝撃的な事件は前日の2日に東海(日本海)上に短距離ミサイルを発射し、海上境界線(NLL)を越えたこと。北朝鮮は労働新聞を通じてこれを否定する趣旨で主張した。韓国軍が東海(日本海)から引き揚げられたミサイルの残骸が当初予想していた短距離弾道ミサイルではなく、ロシア製SA-5地対空ミサイルであることが明らかになり、一部では北朝鮮の誤発の可能性も提起されているが、専門家は北が寿命の尽きた地対空ミサイルを活用して対南攻撃に活用する狙いがあるとした。南北軍事境界の弱点ともいえるNLLにちょっかいをかけたもの。
韓米軍当局や専門家が懸念しているのは、戦術核攻撃能力を持っていると主張する北が、これを踏まえ、韓国戦争以降守られてきた韓半島の軍事境界を崩すという野心を抱くことになることだ。北はこれまでアメリカの「孤立圧殺政策」に対応し、自分たちの自主権を守るという防御的目的だとして核やミサイルを開発してきたが、今はこれを攻撃的に活用して国境地域の軍事経済を崩す全く違う目的で使うのではないかということだ。
国際政治学ではこれを「現状維持」と「現状打破」に厳しく区分する。アメリカ国際政治学のテドゥ・ハンス・J・モーゲンソシカゴ大学教授は、『国家間の政治』でこのように喝破した。
既存の権力を維持するだけで、自国に有利な権力分布上の変化を望まない政策的立場を取る国は、現状維持政策(apolicyofthestatusquo)を選んでいる。既存の権力関係を覆し、現在の状態より大きな権力を得ようとする政策を追求する国は、すなわち権力関係で有利な変化を追求する外交政策を選んだ国は帝国主義政策(apolicyofimperialism)」に従う。
ハンス・モーゲン著(イ・ホジェ訳)、『現代国際政治論』(博英社、1987)、53頁
主に大国間の政治を論じたハンス・モーゲン教授にとって現状維持の対義語は帝国主義政策だが、今の韓半島の状況で北朝鮮が追求する政策は「現状打破」と一般化することができそうだ。北朝鮮は今でも韓国戦争を自分たちが犯したものではないと強弁し、戦後停戦状態で守られた東西海NLLなどを受け入れていないのが現状だ。大韓民国に対する戦術核攻撃能力を持ってこれを法制化したとまで主張する北朝鮮が、これを活用して領土変更に乗り出す状況は、これまでの北朝鮮問題とは全く異なる状況を意味する。カンボジアのプノンペンで続いている周辺国の深刻な議論は、まさにこのような状況変化を反映したものといえよう。(東亜日報ベース)
(無料メルマガ『キムチパワー』2022年11月14日号)
image by: Shutterstock.com