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Combat rockets with the symbols of the atomic weapon displayed in a row. 3d illustration

もはや自衛ではない。今後の「北朝鮮問題」が大きく変わる可能性

北朝鮮の核問題について多くの関係国が公に言及し、厳しく非難しています。今回は、ASEAN+3の首脳会議で話された内容を、韓国在住歴30年を超える日本人著者が発行するメルマガ『 キムチパワー 』で詳しく解説しています。   

戦術核兵器

カンボジアの首都プノンペンで開かれている「東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(韓中日)」首脳会議で、北韓の核問題が断然浮き彫りになっている。13日に韓日-韓米-韓日米首脳会談が開かれる前から、北韓の核脅威の当事国である韓国はもちろん、アメリカや中国、日本など関係国の高官が北韓の核問題について公に言及していた。

最も強力な発言はアメリカ側から出た。ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安保補佐官は11日、「習近平主席に北朝鮮が韓米だけでなく、地域全体の平和と安定に脅威になるとの見解を伝える」としたうえで、「北朝鮮が挑発を続ける場合、これは域内でアメリカの安保・軍事駐留(military and security presence)の強化につながるしかない」と述べた。この発言が「在韓米軍増強」を示唆したことが12日までに明らかになり、国際社会の関心が高まった。これについて大統領室の関係者は「アメリカ軍の増強ではなく、アメリカの戦略資産の展開と関連して、より積極的な措置について話したのではないかと思う」と言及した。

中国の李克強首相も12日、現地で尹錫悦大統領に北の挑発に対する懸念を示し、「韓半島の非核化に向けて中国が建設的な役割を果たしていく」との考えを明らかにしたと大統領室は伝えた。北朝鮮をかばう中国も最近、状況が厳しいとの認識を示したもの。日本のメディアによると、岸田文雄首相も北の大量破壊兵器(WMD)・弾道ミサイル問題に関連し、「CVID」の原則を強調したという。北朝鮮の核を完全かつ検証可能で不可逆的な方法で廃棄するよう国際社会の協力を訴えたということ。

関係国が声を上げる理由について、北朝鮮の7回目の核実験の可能性が言及されているが、これよりも早急に「現存する脅威」として浮上したのは「韓国や日本などを相手にした戦術核兵器攻撃能力」ということで専門家の意見が一致している。北朝鮮は9月以降、韓米合同演習に対する対応訓練を口実に戦術核を搭載できる短距離ミサイル攻撃能力はもちろん、これと結びついた空軍戦闘機攻撃能力、南北国境地域での放射砲など通常兵器攻撃能力などを総合的に誇示した。

韓米連合空中訓練である「ビジレントストーム」に対応して実施した11月3日の訓練では「敵の作戦指揮体系を麻痺させる特殊機能戦闘部の動作信頼性検証のための重要な弾道ミサイル試験発射を進めた」と労働新聞を通じて公開した。韓米軍当局は、火星17型長距離弾道ミサイル(ICBM)を発射し失敗したものとみているが、火星15型弾道ミサイルを活用した電磁衝撃波(EMP)弾の試験発射を行ったと主張したわけだ。

最も衝撃的な事件は前日の2日に東海(日本海)上に短距離ミサイルを発射し、海上境界線(NLL)を越えたこと。北朝鮮は労働新聞を通じてこれを否定する趣旨で主張した。韓国軍が東海(日本海)から引き揚げられたミサイルの残骸が当初予想していた短距離弾道ミサイルではなく、ロシア製SA-5地対空ミサイルであることが明らかになり、一部では北朝鮮の誤発の可能性も提起されているが、専門家は北が寿命の尽きた地対空ミサイルを活用して対南攻撃に活用する狙いがあるとした。南北軍事境界の弱点ともいえるNLLにちょっかいをかけたもの。

韓米軍当局や専門家が懸念しているのは、戦術核攻撃能力を持っていると主張する北が、これを踏まえ、韓国戦争以降守られてきた韓半島の軍事境界を崩すという野心を抱くことになることだ。北はこれまでアメリカの「孤立圧殺政策」に対応し、自分たちの自主権を守るという防御的目的だとして核やミサイルを開発してきたが、今はこれを攻撃的に活用して国境地域の軍事経済を崩す全く違う目的で使うのではないかということだ。

国際政治学ではこれを「現状維持」と「現状打破」に厳しく区分する。アメリカ国際政治学のテドゥ・ハンス・J・モーゲンソシカゴ大学教授は、『国家間の政治』でこのように喝破した。

既存の権力を維持するだけで、自国に有利な権力分布上の変化を望まない政策的立場を取る国は、現状維持政策(apolicyofthestatusquo)を選んでいる。既存の権力関係を覆し、現在の状態より大きな権力を得ようとする政策を追求する国は、すなわち権力関係で有利な変化を追求する外交政策を選んだ国は帝国主義政策(apolicyofimperialism)」に従う。

ハンス・モーゲン著(イ・ホジェ訳)、『現代国際政治論』(博英社、1987)、53頁

主に大国間の政治を論じたハンス・モーゲン教授にとって現状維持の対義語は帝国主義政策だが、今の韓半島の状況で北朝鮮が追求する政策は「現状打破」と一般化することができそうだ。北朝鮮は今でも韓国戦争を自分たちが犯したものではないと強弁し、戦後停戦状態で守られた東西海NLLなどを受け入れていないのが現状だ。大韓民国に対する戦術核攻撃能力を持ってこれを法制化したとまで主張する北朝鮮が、これを活用して領土変更に乗り出す状況は、これまでの北朝鮮問題とは全く異なる状況を意味する。カンボジアのプノンペンで続いている周辺国の深刻な議論は、まさにこのような状況変化を反映したものといえよう。(東亜日報ベース)

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年11月14日号)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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