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東大出だけど賢くない。「死刑ハンコ」で判った葉梨法相の頭の中

死刑に関する不謹慎極まりない発言が問題視され、初めて手にした大臣の座をわずか3ヶ月で追われることとなった葉梨康弘元法相。著しく良識に欠けたと言っても過言ではない葉梨氏とは、一体いかなる人物なのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんが、元法相の経歴を紹介した上で、「賢い人とは到底言えない」と一刀両断。さらに即更迭の手続きを取らなかった岸田首相を強く非難するとともに、首相をとことん追求しないマスコミに対する苦言を記しています。

【関連】人命軽視する“金の亡者”。葉梨「死刑ハンコ」大臣の笑えぬ自虐と無責任

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賢い人とは到底言えぬ葉梨ハンコ法相と岸田政権の大問題:「デモくらジオ」(11月11日)から

悲しい火事というか、まあ、悲しくない火事はないのですが、村田兆治さん、マサカリ投法で有名な、あるいはサンデー兆治として復活した、復活という意味でもそうですし、トミージョン手術を最初にやった方、日本のプロ野球選手としてですね。ということでも有名なロッテの大投手でした。村田さんが東京の成城にご自宅があったということですけれども、そこで焼死されたということです。まだどういう状況だったのかについては分かっていないようですので、今後、分かるのかもしれませんが、とにかく亡くなった命は返ってきませんので、悲しいことであります。

まあ、命の重さということに関しては有名な人でも有名でない人でも同じなわけですが、犯罪を犯した人の命を奪うという刑罰を続けて良いのかという根本的な疑問が呈されている、そういうふうに考えられるようになってもうずいぶんたつのだと思いますが、何十年もそういうことが言われてきていると思うのですが、その最終的な死刑判決が確定した後、最終的な死刑の執行を行うその許可を与える権限を持っている法務大臣という、これ、他の大臣で、直接人の命を奪うことが許されている大臣というのは法務大臣以外にいない。

防衛大臣は死ぬとは限らないでしょう。死刑は必ず死を迎えさせることですので。そういうことを考えると、ちょっと特別な役職なんですよ。例えば、医者でも…この番組は各地のお医者さまに見ていただいている確率が他の番組より高いと想像していますが、医師は医師法に則って治療することが出来るわけですが、人身の拘束ということに関しては精神保険医だけですよね。精神保険医は特別な権限を持った医師であって、人の肉体を拘束することができるんですね。

これはハッキリしたことです。それ以外に警察権力というのはそれが許されている人たちですよね。いや、誰でも拘束できるという意味ではないですよ。犯罪捜査の過程で裁判所の逮捕状の発給を受けての執行、ないしは現行犯ということで逮捕出来るわけですけれど。何の話か、もうおわかりですよね。そう、法務大臣。

お辞めになりました。もう既に後任、多分、今、人事の前の時間稼ぎという意味があったのかもしれませんね。ただ、総理大臣が更迭すると決めた段階でそのまま言えば、後任は誰なんだということで色々な問題が起きてしまう。時間稼ぎをしたのかもしれませんが、ただこの間の山際経済再生大臣の件、統一教会を巡る責任をまるで感じないような答弁を繰り返して辞任、事実上の更迭に追い込まれた、あれと同じような形で今回、葉梨法務大臣の、当初は否定していた解任、更迭、これを急遽せざるを得なくなった。これは時間稼ぎという意味以上に岸田総理としてはなんとしても辞めさせたくなかったんでしょうね。それはそうですよ。

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そもそも統一教会の問題で支持率が低迷している中、山際大臣の首を切らざるを得なかった。そして今度は全然違うところから火の手が上がって。葉梨さんが辞めるに至った。これは普通のことではない。これから先、支持率の上がりようがない。どんな数字が出てくるのか戦々恐々で、幸せな3年間とか、要は次の国政選挙までということなのでしょうが、選挙を行わずに政権運営が出来ると思っていた。その政権運営の出だしがなんだったかといえば、山際辞任、葉梨辞任ということですよね。で、統一教会の問題、それから葉梨法務大臣の失言で政権の信用が著しく傷ついた状態で、今日を迎えたということですね。どうなっちゃうんでしょうね。そういうことなのですが、この葉梨さんに関しては、この方なかなか面白い、いや興味深い経歴をお持ちの方です。

議員としてはそんなにベテランというほどでもない。東京大学を出て警察庁に入った。国家公務員上級試験を通っているのでしょう、警察官僚になった。警察庁のエリートコースはいくつかあるのでしょうが、各県警本部の刑事部長とか刑事局長とか、現場の人を指揮するようなポジションを次から次、転転としてやがて警察庁の大きな役どころに戻ってくるということになるのでしょうが、この方は途中で議員さんに転じた。

この人、旧姓は渡辺さん。葉梨議員という二代続いた議員がいまして、葉梨信行さんという、つい昨年90何歳かで亡くなられた方がおられましたが、その方の養子に入ったというか、三女の方と結婚して葉梨姓になったということですね。そうすると、亡くなられた葉梨信行さんのお父さんも議員でしたので、法務大臣を辞めた葉梨さんは3代目になります。養子ですが、葉梨姓の政治家としては3代目ということになります。だから世襲議員ではあるのですが、そのような由来ですね。この方、典型的なエリート畑というか、警察官僚としてのエリートの道を進み、途中で議員の娘さんと結婚して妻の父親である議員の「ジバン・カンバン・カバン」を引き継ぎ、議員になっていく。最初は落選もしているようですが、とにかくそんな経歴の持ち主のようですね。

やっぱり、ここのところ急に出てきた感じがしているのは、安部内閣の元で色々な副大臣を経験している。副大臣の印象が強かった人が、今回の岸田内閣の夏の内閣改造によって法務大臣となった。大臣になったのは初めてということになります。大臣の名がついたのは今回が初めて。で、わずか3ヶ月で辞任ということになった訳ですが、考えてみると、朝、死刑のはんこを押した経験が多分ないんだよね。

葉梨さんの発言は「朝、死刑のはんこを押したときだけ昼のトップニュースになるのは、そういうときだけという地味役職です」と言っている。しかしこれは彼にとってもバーチャルな話で、つまりこれ、この人の持ちネタなんだよね。しかも4回も別の場所で同じことをしゃべっているということでしょ。お得意のフレーズなんですよ。それ考えると、多分、警察官僚の時代にはもっと酷いことを発言していたんじゃないのかな。もっと酷いことを言っていたのではないかと思う、もちろん、想像の域を出ないけれど。

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死刑に関わる人たち…私は死刑という制度は野蛮だと思うし、殺人犯を含めて死んでいい人はいないと思っている人間なので、そのように考えますが、その死刑、現実に執行される死刑に関わっている人たちって、ものすごく悩み苦しんで、夜も眠れないような日々を過ごして判断をする、あるいは現場の刑務官、死刑を担当する刑務官にしても、大変な精神的な負担を負うわけですよ。ちょっと思い出されるのは、民主党政権の時に千葉さんという女性の法務大臣がおられて、死刑を…この方はもともと死刑廃止論者ではなかったのか、よく覚えていないのですが、死刑の執行に立ち会うということをしましたね。

で、刑場がどうなっているのか、どのような仕組みになっているのか初めて公開したのが、この千葉さんという女性の法務大臣でした。よく記憶しています。情報公開の精神だったのでしょうが、同時に死刑の執行という、自分がはんこを押すことで執行を認めた、その執行が実際にされるところを見守ったということがあった。この人、葉梨さんには、そういう気持ちはないのだろうね。あくまではんこを押すだけの仕事。死刑について自分の仕事ははんこだけ。これ、最低の官僚の発想でしょ。こんなこと考えるのは。もうね。ちゃんとやれよという次元の話ですね。総理は辞めさせて当然なのですが、なかなか辞めさせなかったわけですね、当初は。批判が渦巻いているのに。

2日前、48時間前の話なのですが、岸田派の外務副大臣の政治資金パーティーに来賓として呼ばれ、同じ岸田派から一足お先に大臣になった葉梨さんからお祝いを、という。そういうお祝いの場で言う話し(ハナシ)かね。あ、これ、駄洒落じゃないですよ。まあ、「話にならない葉梨」なんてあちこちで言われていると思うけれど。これ、持ちネタじゃないですか、おそらくは。だから予めそのことを知っている人もいるだろうし、多分、持ちネタと分かるように言っているはずなんだよね。ここ、笑うところですよ、というね。

このときの音声が録音されていて公開されていますが、その音声の中にはどっと受けて場内が笑うとか、というのは無いですよ。一説には笑いが漏れたとあるんだけど、多分漏れた程度なんですよ。その状況に敏感な人は、ここは笑うところだと心得ているから、中身如何に関わらずとりあえず受けておかなければ、あるいは「受けた」という姿勢を見せることによって、場合によっては葉梨さんに取り入ろうとかね。取り入ることを考えたり…というような人なら受ける、つまり笑うかもしれないけれど、やっぱり爆笑ということにはならなかった、多分。これ皆が爆笑していたら、そいつらみんなクビだよね。常識のある人からすれば、もうね、なんてことを言うのだという感じですね。葉梨さん、東大出て警察官僚になり、あちこち廻って議員になり大臣になっても、賢い人とは到底言えない人ですよね。

そこでもう一つ考えたいのは、この葉梨大臣の辞任を発表したときの岸田さんの言い方ですが、最初は、政治家としての説明責任を徹底的に尽くしてもらいたいと、で、その結果、辞任することになったという流れを説明しているのですが、あれさ、よく分からないよね。なに、あの、説明責任て。あるいは任命責任。それは当然ですよ、岸田さんが「私にも任命責任がありますよ」と言うのは。今後の難局に当たっていくことで職責を果たして参りたいという。言うんだよ。言うんだけど、葉梨さんの説明責任て、多分、なぜ自分がそんな発言したのかについて他人が理解できるように説明するのはとても難しいことだと思いますよ。優秀な秘書がいたらね、大臣、それを持ちネタにしてはダメですよと、とっくの前に羽交い締めにして止めていると思いますが、そういう人も今あまり多くないようで。

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せめて、こういうことで大臣を去るとなったときに、あんた、こうだったからダメだったんだよと、他人から批判してもらわなければダメですよ。それと、説明なんて出来ないんだよ、だって、面白いと思って言っちゃったんだよという話でしょ。これ、大臣でなくてもこの類いの話はダメだよね。何にも分かっていないという感じ。それで岸田さんの任命責任というのは。官邸の記者さんたち、もっと厳しく追及してほしいな。

視聴者の皆さんからいただいたメールの中にも官邸での追及が甘い、緩い、ぬるいということをどなたか仰っていました。実際そうだと思いますが、説明責任はもちろんだけど、任命責任は私にあるといったときに、「その任命責任とはどういう意味ですか」とちゃんと聞き出さなければならない。えっと、どういうことですか?よく分からないでしょ、任命責任があるというのは。普通にいえば、「私には人を見る目がなかった」と岸田さんに言わせなければならない。私には法務大臣に適切な人を選び出す力がありませんでした。私が馬鹿でした。申し訳ありませんと…そういうことでしょう。せめてそれに近いコメントを言わせないと、破壊力がないよね。任命責任という言葉を岸田氏が使った直後に、そこから先に追及の質問が突きつけられなくなってしまう。

記者さんたちも「はい、総理、任命責任認めました」で終わり…っていうね。それ、ダメでしょ。言葉の力はそこから先が勝負だと思うので。そのように意味内容を言い換えていって、本人が語るに相応しい言葉を引き出していくということをやらないと、取材が政治的な影響力を持ち得ない。影響力がどういう形であらわれるか、その言葉によって岸田さん、逆に評判を上げるかもしれないけれど、それはちゃんとしてほしいなというのが私の印象です。

死刑のはんこ発言と統一教会問題に加えてもう一つ、「法相になってもカネは集まらない」という発言。これは多分、法務省全体の悲哀というか、そういう、あるいは自虐みたいなことと関係がありそうなので、葉梨さん自身の考えというよりも、大臣になって3ヶ月、色々な法務省のキャリアーや大臣の近くにいる人々から様々話を聞いているうちに、馴染んだ考え方だったのかもしれませんが。そうはいっても法務副大臣という役職をやっているしね。ご本人だって前々からご存じのことだったのだろうと思うけれど、天下り先が少ないのですよ、法務省の関係って(特に入管)。とっても少ない。私の知る限り。それはそうですよ。産業と関わっていないからね。農水省にせよ経済産業省にせよ、天下り先には事欠かないところもある一方で、法務省あるいは財務省もあまりないかな、外務省も決して多くはない。そういう濃淡があるわけですね。その意味で法務省の役人の皆さんは悲哀を託っているところがあり、「それしきのことで悲哀を託つのか」という根本的な批判も当然あるのですが、他の省の役人に比べて美味しくない仕事だという感覚が法務省全体に行き渡っているところがあると思います。その反映なのかもしれない。

どちらにせよこの3つ、の発言で、とんでもなく法務大臣に相応しくない人を法務大臣に選んでしまった人が岸田総理であって、まもなく機中の人となり、G20などに向かうのでしょうが。どうだろうね。「大変ですね」なんて、他の首脳から気を遣ってもらえるのか分かりませんが。数字がこれからどうなるか、支持率の推移が恐ろしい11月ということになりました。

(『uttiiジャーナル』2022年11月13日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: Twitter(@葉梨康弘(自由民主党 衆議院議員 茨城3区)

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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