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年金批判のために曲解された害悪な言葉「100年安心」を発したのは誰か?

「年金100年安心」という言葉を聞いたことはありませんか? 実は、これは年金を批判するために利用されている、とても悪質な言葉なのだとか。今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座 』では、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、 この言葉がどこから広まったのか、そしてその言葉のネタとなった平成16年改正について詳しく語っています。

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年金100年安心という曲解された害悪な言葉の真相と、平成16年改正で始まった重大な事

こんばんは!年金アドバイザーのhirokiです。

1.年金を批判されるためだけに利用され続ける「100年安心」という曲解された言葉はどこから出たのか

今から18年前の年金の改正以降あたりから激しく批判されるようになった事があります。

それは「年金は100年間安心というのはウソだったのか?!」という事ですね。

よく野党辺りが与党を追及する時に使っていた言葉です。

その言葉が国民にも浸透していき、年金の改正があるたびに「100年安心だというのはウソだったのか!」と批判の対象になります。

年金はもう何もしなくても大丈夫という印象を与えるためか、何か改正があると100年安心はウソだった!と叩かれる。

この言葉から、年金はもう破綻してるとか年金はもう貰えなくなるみたいな話に発展していく。

まさに年金不安を煽るためだけに存在してるだけの有害でしかない言葉が「100年安心」。

以前よりマシにはなったものの未だにこの言葉が使われるたびに、まだそんな事言ってんのか…と白眼視してしまいます。

そういえばこの間の国民年金保険料加入期間を40年から45年に延ばすという話の時も、年金がもたなくなってきてるからとかいう憶測も飛び交いました。年金が持つとか持たないとかいうのではなく実際はそんな事より、今の若い人達の将来の年金水準の底上げを図ろうとしているからです。

その時に「昔、政府は年金が100年安心だと言ったのに許せない!」というような事がネットあたりでも言われたりしました。

結論から言うと、「年金が100年安心です」なんて事は当時の政府も言っていないし、その後も政府はそんな大盤振る舞いな事は言っていません。そんな事言ってた記憶あります?ないですよね?

そんなね、年金はそんな単純なものではなく、世界情勢もいつどうなるかさえわからないのが当然なのにわざわざ政府がそんな大見得を切るような事言うわけないです。

言ったらそれはまさに「失言」でしかない。

でも、火の無いところに煙は立たないわけで、じゃあどっからそんな100年安心ですなんて言葉が始まり、それが今も批判の常套句として使われ続けているのか。

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この「100年安心」とかいう言葉は政府が一言も言ってなくて、今の今まで言った事もない言葉がどうして発生してしまったのか。

それはもう既に結構周知の話にはなってるんですが、平成15年11月の総選挙時に公明党の議員がうっかり100年安心という言葉を使ってしまったから、一斉にマスコミやら野党がここぞとばかりに飛び付いたわけですね。

当時、舛添要一さんが当時の厚生労働大臣の時に民主党から執拗に「100年安心」という言葉で追及されました。

野党にとっては最高の批判ネタになったわけです。

だから、舛添さんがその時にそれは一体誰が使った言葉なのかと、公文書の調査などで徹底的に出所を調べた結果、先ほどの公明党議員が選挙の際ウッカリそのような発言をしたという事が判明しました。

平成21年3月の衆議院本会議の答弁では、「政府は100年安心とうたった事が無い」という事で結論が出ました。

よって、政府は誰もそんな「平成16年改正以降何もしなくても年金は100年安心です」なんて一言も言っていません。

何でもそうですが、その情報が一体どこから出たものなのかという一次情報を把握する事は本当に大切です。

誰かから聞いた、そんな噂がある…とかいう話を簡単に信じちゃいけませんよ。

そんな事を簡単に信じる人は簡単に騙されます。

散々、マスコミや野党関係者が「年金100年安心はウソだったのか」、「かつて政府が100年安心と豪語した年金…」という事を言ってきたがために、多くの人がその言葉を聞いた事が無い人はほぼ居ないかもしれません。

でも、今の今まで政府が「100年安心」を肯定した事はあったでしょうか。政府から積極的に100年安心とかいう話を聞いた事は無いですよね。

そう。言うわけがない。

言った事無いのに、そんな事問いただされても「何の話よ!?」って思いますよ。

そもそも100年安心のネタとなった平成16年の年金大改正はそういうものじゃなかったから。

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もうね、100年安心が~とかいう話を目にするたびにウンザリですよ。年金を叩くためだけに使われている言葉。

当の昔に、政府は一言も言ってない事が当時の徹底的な調査で判明してるんだから、未だに100年安心がどうのこうの言ってる人達は何も信頼に値しない。

年金って面倒くさいなあ…と思う所は、影響力ある人たちが本質とは関係ない事で議論を行い、それに多くの人々が翻弄されてしまう。だから、まずそのような誤解を解くところから始まる事も多いのがしんどいところです。

例えば年金は積立にすれば人口減少に影響がないとか、年金積立金が無くなると年金が貰えなくなるとか、今の高齢者は若い人より少ない保険料で高い年金がもらえて世代間不公平があるとか、未納者が4割で破綻してるとか…etc.100年安心とかいう言葉も本当にバカバカしい誤解で振り回してくれますよ。

まるで変な新興宗教に洗脳された人を、まず普通の感覚に戻さなければならない事に時間を取られ、本当に必要な事が後回しにされてしまう。他の社会保険はそこまでないのに、年金に関してはこういう話題に事欠かない。

まず年金は保険という所から認識してもらう必要があるのだろう。

100年安心と曲解された平成16年改正は、上限固定された保険料収入の中で、今の若い人の将来の年金の給付水準を高めようとするために必要で重大な意味があるのに意味を履き違えた批判に時間を取られる。

余談ですがふと思い出すのは昔、高度経済成長期で公害というのが大問題になった事がありますが、どこかの会社が流す有害物質が原因とわかっても、そこでいちいちどこかの学者達が「いやいやこういう原因が考えられる」と口を出してきて、それらの証明に時間が取られて公害被害が拡大し続けたという事があります。

それと似たような感覚がありますね。

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2.100年安心のネタとなった平成16年の年金大改正とは何を目指したのか

この100年安心という単なる年金批判の為に使われ続けて、年金の風評被害でしかない言葉が曲解された改正の中身とは何だったのか。

平成16年改正の経緯を述べますと、「ここから5年毎に財政の検証を行います。毎回その時点から100年先を見通して年金の財政の均衡を図ります」というわけです。

ちょっと歴史上の話をしますが、平成16年改正の時に年金の仕組みが180度転換しました。この時に年金のパラダイムシフトが起こりました。

何が変わったのかというと、平成16年改正前までの年金というのは年金受給者の年金水準(現役時代の約60%台)を維持するために、現役世代の保険料を上げていくという方式でした。

年金が約60%台を給付するという確定給付のようなものだったわけです。

このようにして年金水準を維持していくという事ですね。

従来の永久均衡方式といいますが、今後高齢化が進んでいくとそれだけ財源が必要になりますよね。更に少子化で若い人が減っていく。

でも、年金受給者の年金水準を下げたくないのであれば、現役世代からどんどん保険料を引き上げて徴収するしかない。

そのようにして現役世代の人に頑張ってもらって年金財政を均衡に保ち続ける。

まあ、「保険料支払う側からしたら大変かもしれないけど、年金受給者の年金額を維持するために我慢してね」という形でした。
年金給付水準が確定給付のようなものだから、それを確保するためには現役世代には保険料負担をどこまでも上げてでも頑張ってもらわないといけない。

それが平成16年改正前までのやり方。

これで永久に年金財政を均衡させていくつもりでした。

じゃあ、平成16年改正の時に何が変わったのか。

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従来は年金受給者の年金水準を維持するために、現役世代の保険料をどこまでも上げていく事で年金財政を維持しようという話でした。

でも、平成16年改正からは「現役世代が支払う保険料はもう上限を決めて固定しました。その限定された収入の中で年金受給者の年金を支払います」という事になったんですね。

なぜこのように保険料支払う人の保険料率を上限固定したのか。

考えてみてください。高齢者の人が増え続ける中でどこまでも保険料が上がり続けるとしたら、一体どこまで負担は上がるのだろうか…と不安になりますよね。

現代は経済成長もしないし、給料がなかなか上がらない。でも保険料は際限なく上がり続けるなんてキツイですよね。

だから、彼らの負担を際限ないものにしないために、例えば厚生年金保険料の上限(18.3%)を決めて「ここまで負担をお願いします!」というのを目に見える数字で示したんです。

国民年金は16,900円×保険料改定率(平成31年に17,000円×保険料改定率になった)。

——

※ 補足

保険料改定率とは、物価や賃金を反映させたもの。平成16年に16,900円を上限にしますと言っても、当時は16,900円の価値だったかもしれませんが時代が進むにつれて貨幣価値は変動するので、時代に合わせて金額の価値を同じにするため。

——

とはいえ保険料率の上限を固定してしまうと、毎回入ってくる収入が限度あるものとなります。

この有限な収入の中で年金の支払いをやっていこうという事になりました。

これを有限均衡方式といいます。

従来は「将来、支払われる年金給付の水準がほぼ確定」していました。それが変わって、「入ってくる将来の保険料収入がほぼ確定」してしまったのです。

確定した給付から、確定した拠出への転換なのですね。

保険料収入の上限を決めてしまったから、以前のように60%水準を維持する事は出来ないので、保険料収入と年金水準が均衡する50%以上の水準を目指していこうという事になりました。

「すいません、現役世代の負担を際限ないものとしないために、年金受給者の皆さんも協力してください」と。

厚生年金保険料率が18.3%という数字なのも、50%以上の年金水準を支払いたいという点から導き出された保険料率です。

せめて所得代替率50%は給付したいと。

この保険料上限固定で限られた保険料収入の中で、向こう100年間を50%以上の水準で年金財政を均衡させていく事を目標にするという事です。

※ 補足

所得代替率50%とは夫婦の年金が現役男子平均賃金の50%という事。

(メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2022年11月23日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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