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マラソン中の補給「水分だけでOK」は本当?糖尿病医に聞いてみた

以前のようにマラソン大会が各地で開催されるようになり、多くの市民ランナーが走ることを楽しんでいます。マラソンのエネルギー源として糖質は効率的ですが、糖質制限食を実践していてもパフォーマンスに悪影響はないという研究結果があるようです。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では、医師で糖質制限食の提唱者である江部康二先生が、米国の医学雑誌に掲載された論文を紹介。マラソン前や最中に糖質制限を継続するのは問題なく、むしろ糖質を摂らないことで効率的に脂肪が消費されると伝えています。

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マラソンに市販の携行食やゼリーは摂取すると悪影響?

Question

46歳男性。毎日5-10kmのランニングをしています。たまに登山をするときは、ほとんど何も食べずにするのですが、フルマラソン大会ではどうしても心配で栄養ゼリー等を補給します。

糖質制限をしている時も糖質の補給は不要という記事も読みました。市販の携行食やゼリーは糖質を多く含んだものばかりです。そういうものは逆に摂取すると悪影響でしょうか?水分補給のみで何も摂る必要はないと考えて良いのでしょうか?

江部先生からの回答

マラソンのエネルギー源ですが、グリコーゲンは肝臓に約100g、筋肉中に約300gしか蓄えがありません。従って、<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムでは400g×4=1600kcalしか賄えませんので、フルマラソンに必要なエネルギー量(体重60kgの男性で約2600kcal)には到底足りません。

その点、脂肪は、体重60kgで体脂肪率15%なら、9kg、81,000kcalであり必要充分な備蓄量と言えます。つまり、理論的には42.195kmの走行課程のほとんどを、有酸素運動の<脂肪酸-ケトン体>エネルギーシステムで走り、ラストスパートだけ、無酸素運動の<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムで全力疾走というのが、理想的な配分と言えます。

結論からいうと、マラソン前も最中もスーパー糖質制限食でOKです。水分も水で大丈夫で、塩は必要量を適宜補充です。

米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』という内容です。

普段から
(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人
いずれの群もエリートランナーです。

研究施設に2泊3日で滞在、最大酸素摂取量、体組成、筋生検など実施、その後トレッドミルで走った後、直後と2時間後に筋生検を実施です。

(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。

つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという研究報告です。

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[ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について](要約)

■背景
多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。

■方法
20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。

1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25)、もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70)で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。

■結果
ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。

サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。

燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (-64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(-36% from pre-exercise)において有意差はなかった。

■結論
HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。

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image by: Shutterstock.com

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(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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【著者】 江部康二 【月額】 ¥660/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火・金曜日

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