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dead tired business man taking break sleeping on desk at work

21歳のアルバイトが入社2ヶ月で突然死。会社は責任を問われるのか

年齢が高く残業が多い人が起きるというイメージがある「突然死」や「過労死」。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが紹介する判例は、21歳と若いアルバイトの突然死から端を発しています。果たして会社の責任は問われるのでしょうか?

入社2ヶ月でアルバイト急死、履歴書には「健康状態は良好」、会社の責任は?

若い頃にはできて、年を(ある程度)とるとできなくなったことと言えば、私は「徹夜」です。

学生の頃は朝まで徹夜で飲んで、家に戻って仮眠してまた次の日も飲みに行くなんてこともしてましたが、今やれと言われてもまずできないでしょう。

あの頃は元気でしたね(過去形)。

また、社会人になってからも20代でその当時働いていた会社は非常に出張が多く終電で帰って、始発で別のところに出張、なんていうのもざらでしたが普通にこなしていた気がします。

これも今やれと言われても絶対無理ですね。

このように多少の無理でも、できてしまうのが「若さ」であったりするわけですが労務管理においては注意が必要です。

それについて裁判があります。

ある雑誌編集会社でそこで働くアルバイトが虚血性心疾患と推定される症状で突然死しました。

そこで遺族が損害賠償を求めて裁判を起こしたのです。

突然死というと年齢が割と高く、長期間の残業などが原因になることが多いですが、このアルバイトは21歳と若く、死亡直前の残業時間は長かったものの、入社してから約2ヶ月しかたっていませんでした。

また、履歴書の健康状態の欄に「良好」とあり面接時にも同様に答えていた上に、死亡前に上司に体調不良を訴えたこともありませんでした。

そこで会社は「(会社には)責任は無い」と主張をしたのです。

では、この裁判はどうなったか。

会社が負けました。

裁判所の判断は次の通りです。

・長時間の労働が継続すると、労働者の心身の健康を損なう危険があることは周知の事実である
・会社は極めて長時間の残業をさせたことで、突然死を予想できたと言え、このアルバイトの年齢や入社時の健康状態、体調不良を訴えなかったことなどをもって、会社に責任がなかったとは言えない
・よって労働時間を適切に管理できていなかった会社に責任がある

いかがでしょうか。

この突然死はおそらく会社にとっても本当に「予想もしなかった」ことかも知れません。

雑誌編集の現場というと徹夜も当たり前のようなイメージがありますが、実際にこの会社にもこの亡くなったアルバイトよりももっと長時間働いていた社員がたくさんいたようです。

入社してたったの2ヶ月、しかも21歳と若いアルバイトが「まさか」という気持ちはわからないでもありません。

ただ、そうだとしても「長時間労働は許しませんよ」というのが今回の裁判のポイントです。

私自身、労働時間が決して短かったわけではありませんし長時間労働が常態化した会社にもいました。

ですので、長時間労働が「つい」発生してしまう状況は理解しているつもりではあります。

ただ、裁判になると長時間労働は非常にわかりやすく会社に不利に判断をされますし、長時間労働が発生した状況によって(「忙しかった」「人が足りてなかった」等)会社に有利に考慮されることはまずありません。

長時間労働の解消は非常に難しいです。

ある意味、労務関連の問題でいうとラスボスくらいの最高レベルとも言えます。

ただ、どこかで覚悟を決めて本気で取り組む必要があるかも知れませんね。

image by: Shutterstock.com

特定社会保険労務士 小林一石この著者の記事一覧

【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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