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参戦しなければ暗殺だ。プーチンがある国の大統領にかける“脅し”

優勢が伝えられるウクライナに対し、インフラ攻撃という人道にもとる手段を取ってきたロシア。動員兵を含め9万人の露軍兵士が戦死したと伝えられますが、この先戦況はどのような展開を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ軍の今後の動きを予想するとともに、高精度ミサイルの枯渇や将官不足などといったロシアの苦しい現状を紹介。それでもプーチン大統領が軍事的勝利を追求し続ける裏側を推測しています。

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ウ軍はどこに攻勢をかけるのか?最新ウクライナ情勢

ウ軍は、次の攻撃に向かっているが、地面は凍結してきたので、どこに攻勢をかけるのかである。ロ軍もドネツクに攻勢をかけている。今後を検討しよう。

ヘルソン州ドニエプル川西岸からロ軍は撤退し、撤退部隊をドンバスに重点的に回している。HIMRSの補給路攻撃を受けないようにするためにパブリウカへの攻撃を強化している。このために海軍歩兵部隊をこちらの攻撃に回している。空挺部隊もドネツクに配備した。

予備役を、ベラルーシで訓練したが、その戦車軍団や機甲歩兵旅団をルハンスク州に投入したが、その後の消息がわからない。

ウ軍はドニエプル川西岸の戦車隊を温存しているようであり、1旅団をルハンスクへ回した程度であり、この温存した機甲部隊がどこを攻撃するのか、今の焦点である。

南部ヘルソン州

ドニエプル川東岸地域では、ロ軍は要塞を道路の交差点などに構築している。そこに訓練なしの動員兵を配備して、点と線を守る方向のようであり、精鋭部隊は、ドンバスやルガンスクに回しているようだ。

ここの地域の中心戦力は、砲兵部隊であり、その観測を行う偵察部隊をドニエプル川の前線に貼り付けている。ヘルソン市などのドニエプル川西岸の広い範囲に無差別砲撃をしている。

キーンバーン半島のウ軍の動きが分からない。既にウ軍が奪還をしているが、キーンバン半島にドニエプル川渡河をするかもしれない。ここが、1つ目の攻勢候補のポイントである。

このドニエプル川東岸に渡河して、攻撃してクリミアの奪還を図ることが、一番早いウクライナの勝利を意味する。

しかし、ロ軍事ブロガーは、「どんな状況において我々がクリミアを引き渡すというのだ。第三次大戦もなしに。そんなことがありうるか」と述べて、クリミアを取られることになれば、核兵器使用も辞さないという。

ザポリージャ方面

HIMARSで、サポリージャの前線を叩いているために、ロ軍の損害が積みあがっている。このため、ロ軍は、ミハイリフカ、ポロヒ、インツェルンから一部の部隊を撤退させた。全前線を守れないので、兵をどこかに集中配備するようだ。

それと、ロ軍は、ヘルソン州とザポリージャ州の補給に苦労しているようである。クリミア大橋が破壊されて、揚陸艦やフェリーを利用して物資を運んでいるが、量が運べない。

このため、HIMARSで攻撃されないよう、鉄道輸送を安全にする必要があるために、パブリウカへの攻撃を強化している。ここに、精鋭部隊を投入しているが、激戦になっている。

このため、パブリウカ以外のザポリージャ州の前線でのロ軍兵力は少なくなっている。そして、ここも精鋭部隊が少なく、動員兵を入れていることで、ウ軍攻勢候補の2つ目のポイントのようである。

マリウポリまでウ軍機甲部隊が突入すると、ロ軍はヘルソンとクリミアへの陸路の補給ラインがなくなる。ウ軍の目標であるクリミア奪還がしやすくなる。私は、ここが本命であるとみている。

しかし、ロ軍は「戦力化された兵士」が多くないようであり、ロ軍の防御重要地点はそれほど多くないようである。ザポリージャ州からウ軍が進撃すると見られるのに、ここを防御するために精鋭部隊が置けないようである。精鋭部隊は、すべて攻撃に用いているようだ。

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ドネツク・バフムト方面

ロ軍は、この地域を最重要攻撃地点としている。精鋭部隊の多くをこの地域に集めている。焼夷弾などの非人道兵器も使い、ウ軍を攻撃している。そして、ロ軍の航空勢力も出て、ウ軍を空爆している。ロ軍の多くの戦闘資源をここに集めている。

このため、バフムト周辺のアンドリウカとオドラディウカをロ軍は占領したし、クディミフカ、イワノハラッド、コデマのウ軍も危ない状況である。激戦になっている。数の力で押してきている。

しかし、なぜ、バフムトに拘るのか、分からないが、HIMARSがバフムトに入ると、ルハンスク市を砲撃できることで、最重要補給拠点であるルハンスク市を守れないからだと、ロ軍事ブロガーは言う。

しかし、バフムト周辺のロ軍は攻撃限界点になり、攻撃力が弱まってきていると米戦争研究所ISWは言う。この地域はワグナー部隊が中心であり、プリゴジン氏が個人の見得のために、2万3,000もの兵士を集めて、多くが囚人兵であり、後ろに督戦隊を置き、囚人兵を突撃させて、攻撃せずに戻ろうとすると、銃撃を浴びせるようだ。動員兵に対しても、同じようなことをしているともいう。

もう1つ、ロ軍は、ポパスナへのウ軍攻撃を想定して、ポパスナに通じる道に要塞を構築しているようである。ロ軍は、ウ軍の攻勢候補と見ているようである。これが3つ目のポイントになる。

ポパスナは高台であり、この軍事的価値は高いからである。

スバトボ・クレミンナ攻防戦

ウ軍は、クピャンスクからP07を南下してスバトボに向け進軍している。とうとう道が凍結して、機甲化部隊が動けるようになっているが、機甲化部隊の量が多くない。南部ヘルソン州で活躍していたウ軍機甲化部隊の1個旅団しか、この地域に来ていないという。

その旅団以外のウ軍十数機甲旅団がどこにいるのか不明である。それと、ポーランドから供与されたP-91戦車の230両も不明になっている。ウ軍は温存している。

ここのウ軍を増強して、セベロドネツクまで攻勢に出ることも考えられる。ここが攻勢候補の4つ目のポイントである。

このスバトボ・クレミンナもロ軍は動員兵が多く、ロ軍精鋭部隊の投入は少ないようである。ウ軍は、クレミンナ北西10kmのチェルボノポピフカに到達して、クレミンナへの攻撃も継続している。クレミンナ陥落は時間の問題であるようだ。

そして、スバトボ北西約18kmのノヴォセリフスケとステルマヒフカはウ軍が奪還したが、そこへロ軍が地上攻撃してきたが撃退したという。スバトボの奪還も時間の問題のようだ。

というように、4つの攻勢候補があり、そのどこにウ軍は重点を掛けるか、現時点では分からない。

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ロ軍や世界の状況

プーチンは、ベラルーシを参戦させたいようで、ベラルーシのマケイ外相を心臓発作させる毒物を食種させて殺し、ルカシェンコ大統領に参戦の決断を迫るが、もし、それでも参戦しないなら、FSBはルカシェンコを殺すように、プーチンから命令されたという。

このため、ルカシェンコ大統領も身の安全のために、使用人を総入れ替えした。ルカシェンコ大統領は、ベラルーシがウクライナに参戦したら、負けることが明らかであり、ロシアとともにしたくないと思っている。

すでに、英国情報機関は、ロシアの勝利は絶望的であり、ウクライナが来年中にウクライナからロ軍を排除できるとした。ルカシェンコ大統領も、同様に考えている可能性がある。

今一番ロ軍攻撃で効果を上げているのは、インフラへの巡航ミサイル攻撃であり、これに対して、パトリオット防空システムをポーランドがウクライナに提供するべきだとしたが、NATOは、提供を拒否した。

その代わりに、HIMARSで打てるGLSDB弾を提供すると言う。この砲弾は、150km飛び、ロシア後方を広く攻撃できるようになる。これで、クリミア半島の中部まで届くことになる。現状では80kmであり、倍程度も距離が伸びることになる。2023年春には提供するという。

もう1つが、MQ-1グレートイーグルUAVの提供であり、これが提供されると、クリミア半島の全ポイントが航空から観察可能になる。攻撃力が、大幅に拡充されることになる。

しかし、機密度の高い部分を取り去る改造が必要であり、これも2023年の春以降のようである。

この対応として、ロ軍は、ウクライナ国境から700km離れたエンゲリス空軍基地にTU-95などの戦略爆撃機を多数配備した。この基地からウクライナのインフラを攻撃するとしても、高精度ミサイルは枯渇しているので、通常爆弾での空爆になるが、どうするのであろうか?

イラン製のシャヘドUAVもほとんどなくなっているので、どのように攻撃するのか、非常に難しくなってきている。効果があるインフラ攻撃も、欧米の防空兵器が揃い、ロ軍攻撃の効果が徐々になくなっている。ロ軍事ブロガーも「西側支援により、ウクライナは強力な防空システムを構築している。ロシア軍のミサイル攻撃は、前線の戦況改善に貢献していない」と焦りを表明している。

このため、過去1週間は、インフラ攻撃はほぼ途絶えているが、戦術の変更を志向している可能性がある。

それは、ロ軍が新しい攻撃方法として、TU-95などの戦略爆撃機での高高度からの非誘導ミサイルによる爆撃なのであろうか。これは、無差別攻撃になる。どこに行くかはミサイル任せとなる。

プーチンは、独ショルツ首相との電話会談で「ウクライナ側の挑発行為に対して、やむをえない対応をとった」とインフラ攻撃を正当化した。ウクライナへのインフラ攻撃を続けるのであろう。それを完全封鎖するしかない。

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そして、ロ軍は、大隊戦術群BTGの運用を停止した。通常戦争では、BTGは有効性が低く、もう少し大きな軍構成にした方が良いのと、将官の大量損耗で、BTGを指揮する将官の数が確保できなくなっているようである。士官数も足りない状況であり、どのような構成にするのか、ロ軍は大問題である。このため、動員兵に単純な突撃させて、無駄死にさせている。

しかし、ロ軍の戦死者数は、とうとう9万人に達している。年末までには10万人になる。それに対して、ウ軍によると、ウ軍の戦死者数は1.3万人と大幅に少ないというが、少な過ぎる感じもする。

動員兵を突撃させて、ウ軍部隊の位置を探るなどの使い方で、「砲兵の餌」としての動員兵の戦死者数はうなぎ上りである。動員兵の人権を無視した戦闘方法であり、このような用兵では、戦争反対者が増えることになるし、前線での状態をSNSで知って、母親も妻もショックを受けている。

要するに、戦場に「戦力化された人員」を配置することができていないことになり、ウ軍の攻撃スピードを緩める効果しかない。通信機も時代遅れのアナログ機材であり、ウ軍によって通信傍受が簡単にされている。これでは、どう見ても勝てない。数で押し切るしかないことで、単純な突撃である。

このため、母親と妻の会が戦争反対の署名活動をし始めるなど、戦争に忌避感を持つ人たちが増えている。

このため、ロシア国内での戦争継続賛成者が25%まで減り、和平交渉賛成者が55%まで増えている。

このため、プーチンは、外国の代理人関連法を改正して、政権に批判的な個人を締め上げるようであり、また、言論統制も強化させる。

ロシア連邦カザンでは、給与の支払いもなく、装備もなしであり、「砲兵の餌」だと言われ、交渉にも応じないので、不満を抱いた動員兵たちは、訓練兵舎を出ていった。しかし、現在のロシアには、金もなく、装備もなく、動員兵の不満を解消する手段がない。

しかし、来年1月には追加の動員令があり、70万人規模の動員になるという観測が出ている。動員兵を前線に出して、「砲兵の餌」としているが、その餌が足りなくなるからだという。

これに対して、ロシアのペスコフ大統領報道官は、併合したウクライナ東部や南部の防衛のため追加動員があり得るとの観測は否定した。

このような状況から、バイデン米大統領は、プーチンが戦争を終わらせたいなら会談をするとした。しかし、ロシア大統領府は、ウクライナからの撤退が条件なら、交渉はしないと言う。

そして、プーチンは停戦交渉に関心がなく、軍事的勝利を追求しているが、誰も本当の戦況を報告していない可能性がある。このため、当分、戦争が続行されるしかない。ロシアのぼろ負けをいつ悟るかでしょうね。

もう1つ、ロシアは、お金が欲しいので、ウクライナを通過する石油とガスの輸送の保証と引き換えなら、ザポリージャ原子力発電所から撤退するとした。

そして、同発電所はウクライナに移管するかIAEAの管理下になるようだ。これで、双方が砲撃したという非難する事態はなくなる。

しかし、ロシアが合意事項を履行するかどうかは、不明である。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年12月5日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Asatur Yesayants / Shutterstock.com

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