安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、世論の注目を集めている「旧統一教会」問題。日本の政界や法曹界が、教団の教義を実践させるためという理由で汚染され、私たちの想像をはるかに超えたところにまで浸透するなど、日常を脅かす存在になっています。この統一教会問題について30年以上にわたって取材・追及を続けているメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』発行者でジャーナリストの有田芳生さんと、かつて旧統一教会の信者でメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』発行者でもあるジャーナリストの多田文明さんの対談が、まぐまぐ!LIVEで配信されました。前回のVol.1に続き、今回のクロストークの模様をテキストにて特別に公開いたします。(この対談をYouTubeで見る | Voicyで聴く)
● 有田芳生×多田文明 Vol.1
● 有田芳生×多田文明 Vol.2
● 有田芳生×多田文明 Vol.3
● 有田芳生×多田文明 Vol.4
有田芳生×多田文明 旧統一教会「正体隠し」の悪質な手口
有田芳生(以下、有田):熊本の講演会に行った時に質疑応答があって、左側にいたお母さんに「今、子育てをやっているんですが、子どもが入らない方法はあるんでしょうか?」って言われたんだけど、多田さんはなんで入ったの?
多田文明(以下、多田):私は、統一教会のやり方として一番一般的な正体隠し(の伝道)でした。
有田:正体隠し(の伝道)っていうのは、統一教会と言って近づかないんです。
内田まさみ(以下、内田):隠しておく。
多田:私の場合は、テニスの友達から「バレーボールに来ないか」と誘われたのがきっかけなんです。まさかバレーボールが統一教会だとは思いませんからね、当然。それでバレーボールに行ってみて、何人かの学生とバレーボールをしました。楽しくやっていたら、その帰りに喫茶店で「僕たちは自己啓発の勉強もしてるから、一回来てみないか?」というふうに言われて。ちょうど大学4年の頃です。それで、「そんなのやっているのね」と、そこでは話だけだったんですけど。
じつは後で思ったんですが、僕は大学4年で、まだ就職が決まっていなかったんですよね。バレーボールをして喫茶店で話しているうちに、そのことを彼らはある程度、把握していたんです。「自己啓発して、就職に役立てたらいいよ」ということを、次にビデオセンターに連れて行かれた時に言われた。いわゆる自己啓発ですから、まだ統一教会って言われてないわけです。そこでずっと勉強したと。
有田:何のビデオを見たんですか?
多田:「創造原理」「堕落論」「復帰原理」…。
有田:最初から?
多田:そうです。「創造原理」からずっと。
内田:それが統一教会では当たり前の教えになるんですか?
多田:そうです。
有田:だけど、街頭で誰かに声をかけてビデオセンターに連れていって、みんなで見るんじゃなくて、一対一みたいなんでしょ?初めはその人の関心のある映画、例えばベンハーとか八つ墓村とかを観させるっていうのが、一般的だと思っているんですけど、いきなり教義から来たんですか?
多田:確か一番最初は「目覚めの時」みたいな、この世の中は何でこうなっているの?みたいな短い2〜30分ぐらいのビデオを見た気がしますけども、その後からすぐ「総序」でした。私もビデオセンターの所長をやっていたからわかりますけど、相手によって見せるものは、ちょっと変える感じはあります。
内田:ということは、相手の素性も調べてっていう時も、あるわけですよね?多田さんはやっぱりそういうパターンだったのかなと。
多田:今、有田さんが言われたように、たとえば「手相の勉強をしています」「アンケートをしています」と、街頭から引き入れる時点で、もう全部個人情報が分かっていますから、そうすると中に行った時には、もう説得しやすいということです。
内田:悩みを知っておく。そこに近づいていく、踏み込んでいくことになるのかもしれないですね。
有田:だけど、ビデオセンターに行って、いきなり「創造原理」「堕落論」「復帰原理」だよね。
多田:そう思いますでしょ。うまいんですよ。
有田:向こうからすれば「この人はすぐ入るぞ」と思われたんじゃないの。
多田:私もそのあと(教団相手に)裁判を起こして、色々と自分のことを整理しながら考えてみた時に、やっぱり統一教会の手口が上手いなと思ったのが、私の就職不安に付け込んできたことですね。
「あなたにとって何が必要だと思う?」と聞かれて「これからは国際人にならないといけない」と言われたんです。「そのためには何が必要だと思う?」と言われて、「なんなんだろう?」と。「じゃあ世界で一番読まれた本はなんだと思う?」と言われて「分からない」と答えると、聖書だと。「世界の人のほとんどはクリスチャンですよ。みんな聖書を読んでいる。それを理解しないで海外に行こうなんて、あなた無理でしょう?」って言われたんです。そうか、聖書は何も知らないなと。
当時は商社も受けていたんですけど、それも分かっていたのかもしれません。「世界に行って、そういう人たちと話を合わせるために聖書を知っておかなきゃね」と言うので、そういうことかと。元々この自己啓発の勉強は、聖書を元にしたアメリカからやってきた内容なんだってわけです。
有田:韓国なのに。
多田:今思えば「クソー、嘘ついたな!」って思うんですけど、これはアメリカから来た内容だと。そうかと。だから聖書とか出てくるけど、でもあなたの理解に必ず役立つからって言われて。だから「創造原理」「堕落論」「復帰原理」、これは聖書の正当な教えなんですって言われて、ずっと勉強してきたんです。
有田:それで、どのぐらいで入っちゃったんですか。
多田:普通のビデオセンターだったら、大体1ヶ月、2ヶ月、ツーデーって呼ばれる2日間のセミナーに行かせるんですけど、私の場合は、大学4年でお金が無かったので、もうビデオを全巻見ちゃった。珍しいタイプ。自分でビデオセンターを運営していて分かります。こんな人いないんですけど。4~5ヶ月ぐらい経った時に、初めてワンデーっていう一日のセミナーに参加させられて、そこで初めて「この教えは統一教会です」と言われて。
当時は知らなかった「統一教会」の存在
内田:その時は、統一教会ってものがあるのは知っていた?
多田:いやあ、ごめんなさい。多分、当時、有田さんは色々やってくださっていたと思うんですけど、新聞も読んでいなかったので全然知らなくて。
有田:文鮮明夫妻はいつ出てくるんですか?
多田:いわゆる、そのワンデーで文鮮明っていう名前が出てきて「世界基督教統一神霊協会だよ」っていうのを教えられました。ここって宗教団体だったんだと思った時には、もうビデオを全部勉強していますし、霊界の恐怖はインプットされているので、もう逃げられないです。そうなんだっていうふうに思う状態になってから、多分4~5か月経ってから。
有田:でも、文鮮明夫妻が再臨のメシアであるっていうあの写真を見たら、何だこのおっさんは?と思うような雰囲気じゃないですか?
多田:うーんその通りですね。
有田:思わなかった?
多田:私のケースで言えば、思いました。それで実は私、ワンデーが終わった時に、いやこれで終われるのかと、じゃあもういいやって本当にその時そう思ったんです。それで辞めようと思っていたんです。それから10年ですけど。その後に久保木修己初代会長の講演会に連れていかれたんです。そしたらものすごい人がいて、もうあまり覚えてないですけど、政治の話とか何か語っていて、とにかくすごい盛り上がりで。統一教会っていうのはこんなに人がいて、すごいところなのかなって思いながら、一回はそこで話が終わったんです。行かなかったんです。そしたら、しつこいんですね、勧誘が。
有田:しつこいし、優しいんです。
内田:そうなんですか?
有田:優しいんです。断りきれなくなる。
多田:友達じゃないですか。ずっと言われてしょうがないので、もう一回ぐらいビデオセンターに行くかと。そこで初めて家系図をとられたんです。いきなり家系図。
有田:キリスト教系だと言っておきながら家系図ですからね。家系図に、印鑑、念珠、多宝塔、壺。
多田:そこで家系図を取られて。病気で亡くなった人がそれなりにいて、母方はずっと女系なんです。ところがやっぱり刷り込みって怖いですね。悪因縁とかサタンとか全部入ってるんです。
有田:因縁話が先に入ってて、その次に家系図だったんだ。
多田:ビデオセンターで勉強している時に、さっきおっしゃられたようにビデオを色々見せられるじゃないですか。エクソシストの首がくるっと回るところなんかを見せられているから、恐怖心がすごくあるわけです。それがもうインプットされた状態で統一教会と明かされて、その後、家系図と。家系図を見せた時に「家族とか親族、このままだと酷いことになるよ?いいの?」って言われたんです。「あなたが統一教会の教義をちゃんと勉強しなかったら、今後も不幸が訪れるから、ちゃんと勉強した方がいい。もう一歩先に進んでみよう」と。これがね、統一教会は上手いんです。これで終わりかな、これで終わりかなって、どんどん進んでいって、永遠に終わらないんです。
有田:その時、最初のビデオからそこまで行く間にお金は取られたんですか?
多田:学生でお金が無かったので、3000円か5000円ぐらいです。だから私の時はお金は取られてないです。献金っていうのは無かった感じでした。
内田:さっきお話を聞いたら、センター長であるとか、教育係であるとか、支社長的な位置づけに10年間でなったわけじゃないですか。エリートですよね。
多田:私のいたところは青年部という、いわゆる教育担当の部署でした。ここの「信者システム」っていうのがすごいんです。ビデオセンターに連れ込めさえすれば、その後、2日間セミナーを行い、そのあとはずっとライフトレーニングが続いて、信者になっていく。この過程に乗せちゃえば信者になっていっちゃうんです。
私が中にいて一番長かったのが、ライフトレーニングの講師をしていた期間です。なんで幹部の言葉を色々覚えているかっていうと、それを伝えないといけないからです。咀嚼しながら講義をしていたので、色々と覚えています。ライフトレーニングの時に一番驚いたのが、1992年のことです。自分もその時に合同結婚式を受けたんですけれども、当時、有田さんもテレビに出ていて、テレビをつければ合同結婚式が報道されている頃でした。
その日は講義の最終日で、文鮮明教祖を明かさないといけないのですが、その直前に、ライフトレーニングに参加している受講生たちとお昼ごはんを食べたんです。そこでテレビをつけると合同結婚式をやっているわけです。この後、自分は合同結婚式だって言わないといけないんです。テレビをつけた瞬間、受講生7、8人が、「気持ち悪い」「誰がこんなのに入るんだ」と散々言ったわけです。
この後、テレビを切って、私が「さあ皆さんがこれまで勉強してきたところは、世界基督教統一神霊協会です。先ほど皆さんが観ていた統一教会です」って言った瞬間に、シーンとなって、ギャーとか、うわーとかって声が聞こえるんですけど、そこにいた7、8人全員が、次のフォーデイズ(4日間)に行くっていう。このシステムはすごいなと思いました。
内田:段階的に教えていただいても、徐々にマインドコントロールに入っていくってことなんですか?
多田:そうなんです。マインドコントロールされているんです。一人一人の受講生の情報は、手相を勉強するところから、ライフトレーニングで統一教会を学ぶところまで、全部カルテになっているんです。何で悩んでいるか、統一教会のどの部分に引っかかっているか、そういうところも全部知られているので、「この人は統一教会って言ったら、どういう反応するんだろうか?」というのは、全部裏で会議されている。対策を立てちゃっているんです。7、8人がどういう動きをするかは大体分かるので、危なそうな人がいたらすぐに個別で裏に連れていき、さっきも言いました霊の親が説得したりとか。全部そういうふうにしてやるので、全部次の4日間(フォーデイズ)セミナーに進んで、ほぼ信者になっていく。
統一教会に引っかからないための注意点は?
有田:多田さんの入るプロセスは大体わかったんだけど、熊本のお母さんに「どうやったら引っかからないかの注意点」を教えてあげてください。
多田:まず、統一教会は正体隠しをするということを知っておいてほしいです。何かのサークルだとか、ボランティアだとかに行っても、そこがどういう所なのかというのを知ってから参加しないと、本当に危ない時代になってきている。まずそこを調べて欲しい。それから、講師をやっていたから分かるんですけど、親に相談する人は、基本的に入りません。親に相談しない人は、ほぼ全員入ります。
有田:多田さんは相談しなかったんですか?
多田:はい。親子関係があまり良くなかったんです。僕は良い家族だと思っていたんですが、自分が統一教会を辞める時に、家族みんなで話し合ったときに、全然よくなかったのがすごくわかりました。
有田:家族も大事だけど、友達に相談っていうのは「あり」でしょ。
多田:おっしゃる通りです。「あり」です。統一教会は、家族にも友達にも相談させないようにしてきます。友達にも相談する。親にも相談する。そういうふうにする子は、基本的には入ってこないなっていう印象が強いです。
有田:そこからさらに一歩入った人には、どういう歯止めがあるんですか?
多田:厳しいですけど、私の例で言えば、おかしいなと思う兆候があったんです。例えば、親が家に電話をかけたのに出なくなった。3日に1度電話をかけても、全く通じないと。どこか旅行にでも行っているのかなと思っていたけど、あの時に気づくべきだったと、親が言っていました。そのタイミングで声をかけるとか、何かしらアクションをしておけば、引き戻せたかもしれないと。
内田:その電話は、あえて出なかったんですか?
多田:家にいないんですもん。ホーム(教団の施設)に2週間泊まり込みをさせられていたので。そういった兆候はあるので、もしその先にいってしまった時には「こういう理由かなぁ」と思ってしまうのではなく、一歩進んで、聞いてみるということも、必要かもしれないです。今の時代は本当に危ないので。
内田:SNSなんかも発達していて、友達とかの発信がなければ、連絡をとってみるとか、そういうことって大事かもしれないですよね。
有田:そうですね。逆にSNSの時代にそれを利用して統一教会が勧誘を始めているっていうのは、最近の特徴の一つなので。巧妙だよね。
多田:本当ですね。さっきのお母さんのご質問にもう一つ答えるとすれば、これは詐欺・悪徳商法もそうなんですけど、彼らは自分の身元を言わないんです。これまで色んなマルチ商法に誘われてついていったんですが、マルチ商法も統一教会のやり方にすごく似ていて、彼らは正体を聞いても言わないです。なので、まず正体を聞いてみて、言わないところには行かない。聞けたら、それをまずネットで調べてみる。そうすると大体批判的なことが書いてあるので、そういうふうにして相手の目的や正体を知るということが、防げる一番のポイントです。
内田:多田さんが入会された時って、まだインターネットがそれほど広がっていない時期ですもんね。
有田:1992年の、多田さんも参加された桜田淳子さんの合同結婚式の時はインターネットっていうのはまだ。
内田:無かったですよね。
有田:まだ特殊な世界だったからね。
内田:だから、テレビで報じられて初めて知ったっていう方々が多かったと思いますけど。ただ入った方全員が多額の献金をするってわけでは決してないわけですよね。みんなするんですか?
多田:基本的には献金しないといけない。ただ、私みたいなお金のない人は「献身」といって、身も心も全部教団にささげて無料奉仕の活動をすることもあります。その場合は、お金のある人を連れてくるよう指示されます。
有田:さっき初めに商品は言わなかったけれど「これ、みんな飲んだことありますか?」と言った、お二人も知っている商品を販売している会社は、年商が54億なんですよ。ところが純利益は1900万円なんです。おかしいでしょ。54億売り上げて、1900万円。
これはね霊感商法も同じなんだけど、信者が販売会社に所属するでしょ。そこで霊感商法で、壺とか多宝塔とか、人を不安に落とし入れて、ものすごく莫大で不当に高額な値段で販売してお金を儲けるでしょ。そうすると、その販売会社の社員の信者たちは、まあだいたい3倍くらい、30万円給料として計上されていたら、自分の手に来るのは10万円ぐらいになるんです。あとは全部献金するんです。冒頭の会社が54億も売り上げがあって、利益が1900万円というのを知って、そういう体制は、今でも続いてるんのではないのかと思った。
内田:そういう企業って言うのは、日本にもいっぱいあるんですか。
有田:いっぱいあります。
Vol.3 爆笑問題・太田光が擁護する統一教会の不都合な真実。軍事訓練、赤報隊事件、日本破壊計画の深層 につづく