MAG2 NEWS MENU

米国で90歳女性が大学卒業。人生100年時代を日本人は楽しめるのか?

アメリカで90歳の女性が71年の“休学”を経て復学し、大学を卒業したと話題になっているそうです。日本でもシニアの学び直しが注目されることはありますが、90歳の大学生はあまり聞きません。このニュースを取り上げるのは、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で健康社会学者の河合薫さん。通学が難しい高齢者でも、コロナ禍前の時点でリモート受講可能な体制があったことや周囲の環境などを伝え、日本にもそうしたサポートや後押しする制度が広がれば、人生100年時代をより楽しめると、期待を示しています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

海の向こうのちょっといい話。続ける力、忘れてませんか?

今回は「海の向こうのちょっといい話」を取り上げます。先日、米国である記事が話題になりました。タイトルは「71 years after starting college, a 90-year-old woman is graduating」。90歳の女性が大学入学から71年経って、やっと卒業を果たした、というのです。

2020年にイタリアで96歳の男性が史上最高齢で大学を卒業し、海外メディアを中心に話題を呼びましたが、今回は71年間の“休学”を経ての復学ですから。どちらも「ブラボー!!」ですよね。

話題の女性の名はジョイス・デフォーさん。1951年に北イリノイ大学に入学し、3年生の時に「運命の人」と出会いました。主婦と学生の両立は無理と通学を断念し、結婚して3人の子供をもうけ、幸せな日々を過ごしていました。

ところが、夫は若くして他界し未亡人に。シングルマザーとして子育てをするデフォーさんでしたが、5年後に再婚を決意。家族は増え続け、現在では17人の孫と24人のひ孫がいる大家族になりました。

そんなある日、孫たちに「大学を卒業してないのが心残り」と話したところ、「だったらもう一度行けばいいよ!」と背中を押されて、2019年に復学を決意します。「孫たちはWhyではなく、Why notと言い続けた。日曜学校の先生をしたこともあるし、学ぶのも好きだったので、孫の言葉を信じました」(by ジョイスさん)

大学に通うのは少々難しかった為、入居先の高齢者ホームでリモートで講義を受けることになりました。パソコンを使った経験がなかったので、長男に丁寧に教えてもらったそうです。奇しくも、その後コロナ禍になりface to face の講義が制限されましたが、デフォーさんにはお手のもの。それまでデフォーさん仕様だった講義が全ての学生のノーマルに変わったのです。

一方で、デフォーさんが暮らす老人ホームは面会が制限され、子供や孫の助けを借りられなくなり、パソコンをすべて自分で操作しなくてはならくなった。何度も「もう無理!辞めたい」と投げ出しそうになリましたが、家族や友人、大学の関係者がたくさんの励ましのメッセージを送ってくれたり、電話をくれたので「これらもすべてプロセスの一部なのだ」と、自分に言い聞かせ踏ん張りました。

そして、71年間のブランクを経て、彼女はキャップとガウンを身につけ、今週末に大学から一般教養学士号を授与される予定です。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

“Don’t give up,” she said, “I know it can be difficult, but everything in life has its ups and downs.”(河合訳:「あきらめないで」と彼女は言います。「そりゃあ大変よ。でもね、人生は山あり谷ありだから」)CNNのインタビューは、こう結ばれています。

“Never give up”もいいけど、“Don’t give up”もいい言葉ですよね。つい「年だから~」だの「通うのは無理だから~」だのと言い訳をしがちですが、周りの傘を借りながらでも「やればいい」。大切なのは死の入り口らしきところで、「あれやっときゃよかった」と後悔しないように生きること。

自分から動こうとしない人には周りは何もできないけれど、何が何でも前を向いて歩こうとする人には、手をさしのべる優しさが「人」にはあります。自分を信じて具体的に行動しなければ、一生幸せになれません。そして、何よりもいったんレールから外れても、「戻ることができる」社会は素敵ですよね。

日本の大学では中退する学生が年々増えていて、7%前後と言われています。中退する理由はさまざまですが、年齢を重ねると「大学で学び直しをしたい」と思う人は少なくありません。

最近は社会人大学院に進学するシニア社員が増えていますが、復学ができたり、あるいはなんらかの理由で会社を辞める選択を余儀なくされた人が、復職できたり。「続ける力」を後押しする制度が広がればいいなぁ、とつくづく思います。

今回は少々ゆるネタになりましたが、時にはこんなのなのもいいかな、と取り上げました。人生100年時代って、やり残したことをやり遂げるための猶予期間を医学の発展がつくってくれた、と考えれば、歳をとるのが楽しくなりそうです。みなさまのご意見、お聞かせください。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: shutterstock.com

河合 薫この著者の記事一覧

米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』 』

【著者】 河合 薫 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け