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残る手段は核使用のみ。プーチンが国家の存続に関わる賭けに出た

西側諸国から最新鋭兵器の供与を受け続けるウクライナの攻勢に、多数の戦死者を出しているロシア軍。もはや戦術核の使用しか事態を打開する手立ては残されていないようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、両軍の激戦が続く各地域の戦況を詳しく解説。さらにロシアを代表する国際政治学者がインタビューで口にした衝撃発言と、「唯一の停戦手段」を紹介しています。

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冬に攻勢へ転じるはずが…ウクライナ軍まさかの停滞

ウ軍は、冬に攻勢に転じるはずが、まだ攻勢になっていない。凍結が十分ではなく、戦車などの移動がまだできないようである。今後を検討しよう。

冬になり、道の凍結するはずが、まだ泥濘の状態で、機甲部隊も動けないようである。このために、前線が、あまり動かない。

前回述べたウ軍の機甲化部隊が動かない理由は、まだ泥濘の状態で動けないことである。しかし、徐々に、ウ軍の戦略の方向性が見えてきている。温存の機甲化部隊の進軍はどこかを推測したい。

ザポリージャ方面

メルトポリ周辺のロ軍基地、補給基地、橋などをHIMARSの砲撃、パルチザンの破壊工作などで、破壊している。特にマリウポリと繋がるM14道路のモロチナ川の橋をウ軍特殊部隊が破壊した。その後、銃撃戦も起こっていた。

この橋は、メルトポリとマリウポリを結ぶM14道路の橋で、ロシアのロストフ・ナ・ドヌーとマリウポリとメルトポリ、そして、クリミア、ヘルソンを結ぶ補給のメイン道路である。このメルトポリは補給の拠点でもある。

このため、メルトポリには、この一帯の重要な拠点として、ロ軍兵の基地や補給拠点などが密集している。その基地や拠点をHIMARSで砲撃されて、多くのロ軍に死傷者を出ている。

そして、ベルジャンスク市でも、ウ軍特殊部隊が、変電所を爆破したようである。同州エネルホダルやトクマクなども攻撃したと報告。この攻勢で総数150人を負傷させ、砲門の陣地3カ所に被害を与えたとした。ザポリージャ州の補給の要衝を複数個所に攻撃しているようである。

ウ軍の狙いは、補給を止めて、撤退せざるを得ない状態にロ軍を追いやることだ。南ヘルソン州でのロ軍撤退のような状態を作り、その上で冬にメルトポリへの機甲部隊による攻撃を計画しているのであろう。

このため、攻撃の数週間前に、ロ軍基地や橋などの重要な基地・補給ラインを切ってきたというようである。

しかし、ロシア本土からアゾフ海をフェリーや揚陸艦で渡り、物資を運ぶ方法で、クリミアへの物資輸送はあり、陸路での補給ということになる。

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北部ヘルソン州

ドニエプル川東岸の川の近くには、塹壕が掘れないので、川から10km程度離れて、塹壕を掘っている。このため、渡河する空間はあるという。この可能性があるので、ロ軍はドニエプル川の中州ポチェムキン島に拠点を作り、渡河をさせないようにしている。

しかし、ウ軍は米国から58隻の河川艦船を供与されているので、ドニエプル川を渡河する可能性はあり、それに対して、ロ軍は、クリミアまでの間に複数の塹壕を掘り、防衛網を築いている。

ドネツク・バフムト方面

ロ軍は、この地域を最重要攻撃地点としている。精鋭部隊の多くをこの地域に集めている。ロ軍の多くの戦闘資源をここに集めている。とうとう、損害無視で波状攻撃を仕掛けてきて、バフムト市内に取りつくことができたようである。しかし、大きな損害が出ている。

この方面のロ軍は昼夜の別なく攻撃を仕掛けてきているようだ。もう1つがバフムト市を回り込む攻撃もあり、そちらもウ軍との激しい戦いになっている。

このような攻撃で、ウ軍も多くの犠牲者が出て、ウ軍もヘルソンから多くの部隊を増援部隊として派遣、ロ軍の攻撃を防いでいる。塹壕戦もあり、前線が動かないのに、双方の犠牲者だけが増えている。

クデュミフカでは、ウ軍は運河の閘門を奪還したが、市内の半分をロ軍が占拠し、この閘門を取りに攻撃してくるが、ウ軍は撃退している。

もう1つ、ウ軍は東部ドネツク市内に対し最大規模の攻撃を実施したようである。市内中心部を攻撃した。ここが補給の拠点であり、そこをたたかないと、ロ軍の攻撃強度が下がらない。

スバトボ・クレミンナ攻防戦

ウ軍は、クピャンスクからP07を南下してスバトボに向け進軍して、いる。

ウ軍はクゼミフカやキスリフカに前進しているが、その奥に高台があり、そこを取ろうとしている。この高台を取るとスバトボの街が見下ろせるので、正確な砲撃でできることで、スバトボを奪還できるからである。

しかし、ロ軍もそれを知っているので、ここに戦力を集めて、攻防戦が激しくなっている。

そして、ロ軍は、昔ながらの塹壕を掘るが、最新鋭の精密誘導間接射撃に対して脆弱である。それなのに、ロ軍は、スバトボを中心とする北部方面を優先して、塹壕の大規模な防御線の構築しているが、それでは守れない。このため、精密誘導間接射撃でロ軍の塹壕にいた兵士の半分程度が戦死したようである。

このため、ロ軍劣勢でも、ウ軍奪還地に攻撃してくることになっている。

もう1つのクレミンナもウ軍は攻撃して、市内直近まで迫っているが、ロ軍も激しく抵抗している。反対にロ軍が、クレミンナ北西10kmのチェルボノポピフカを攻撃している。

そして、スバトボ北西約18kmのノヴォセリフスケとステルマヒフカにもロ軍が攻撃してきている。すべてウ軍は撃退している。

しかし、どこも泥濘で、機甲部隊が自由に動けない状態で、本格的な攻勢ができないようである。

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ロ軍や世界の状況

プーチンは、2022年末の恒例の年末記者会見と年次教書演説を中止するとした。クレムリンから出ずに、人前に出たがらないようである。出ると戦争の行方を聞かれて、それに答えられないからのようである。

どうも、プーチンが気弱になっているようであるが、ロシアの孤立化を防ぐために、インドのモディ首相と電話会談した。

この中で、モディ首相は、、プーチンに対話と外交で問題を解決して、戦争を中止するべきと述べたが、聞く耳を持っていないようである。

今は、1つにバクムト攻撃とウクライナへのインフラへのミサイル攻撃の2つの攻撃をして、後は防御で推移しているが、プーチンは16日、特別軍事作戦本部を訪れ、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長、スロビキン司令官らと司令官複数の会議を開き、やや手詰まり感がある戦況で、軍幹部たちに「新たなアイデア」を求めた。

要するに、劣勢を挽回する奇策を求めている。それしか、勝つために、核使用しない方法がないからである

もう1つ、ベラルーシのルカチェンコに最後の参戦要請をするために19日に首都ミンスクを訪問する。それでも参戦しないなら、暗殺になるのであろう。しかし、民主化を要求するベラルーシ解放戦線は、ベラルーシの内乱を誘導する準備をしている。ルカチェンコはどうするかである。来年1月のウクライナの首都キーウへの再攻撃にベラルーシ軍も参戦させられるか、プーチンも正念場である。

しかし、その攻撃を米戦争研究所は、ウ軍の準備しているので失敗すると見立てている。

その中、ロシア併合4州の発展計画を作るように政府に指示を出している。まだ、負けるとは思っていないようだ。予備役がロシアに250万人もいるので、動員をかけ続ければ、数の上で優位にあると思っているようだ。しかし、今は劣勢だが、秋の動員兵の訓練が終われば、攻勢に出られるとみている。

今の時点で、一番ロ軍攻撃で効果を上げているのは、インフラへの巡航ミサイル・イラン製UAV攻撃であるが、ウ軍に米国からパトリオット対空ミサイルが供与されることになり、この攻撃も防御される可能性が高くなる。

今後、イランから短距離弾道ミサイル「ファテフ110」を提供されるようであり、この攻撃を防止するには、パトリオットが有効である。

ということで、この攻撃も無効化できるようである。

ロシア国内では、s300やs400の対空システムが全土をカバーしていないので、ウ軍のUAVでの攻撃を防げないようである。

特に、軍需会社ウクルオポロンプロムが開発した航続距離1,000kmのUAVが完成して、実戦配備の段階にある。このUAVは2017年にプロトタイプができて、TB2の半分程度の大きさであり、75kgまでの爆弾を搭載できるという。

このUAVを用いて、12月末にはロシア国内の高価値目標を空爆する準備をしているという。ということで、ロシアに安全な場所がなくなっている。

対して、ロ軍は、後3-4回の大規模ミサイル攻撃しかできないようである。ミサイルの在庫が300発程度であるからだ。イラン製UAV攻撃は撃墜率が100%になってきている。12月14日の13機UAVをすべて迎撃したという。

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また、12月16日にロシアは、空から発射されたKh-101とKh-55、海から発射されたカリブルミサイルなど76発の巡航ミサイルをウクライナに撃ち込んだ。このうち、16発が着弾し60発は迎撃された。迎撃率約80%である。しかし、内9発が、ウクライナ複数州の電力施設へ着弾し、各所で緊急停電が起きている。

前回のサラトフ州エンゲリス空軍基地とリャザン州ディアギレボ空軍基地での空爆は、Tu-141UAVを使用したようである。ジェットエンジンの音がした後、空軍基地で爆発したので、間違いがない。

ということでソ連時代のTu-141UAVを使用できるようであり、すべてウクライナにあり、残存数は100機程度であるというので、これも使えることになる。

ということで、ロシアの防空能力が低いことが判明している。ロシアにあるべきS300をウクライナに持って行った咎が出ている。

このほかにも、ロシア国内では、多数の大規模火災があるが、パルチザン活動かウ軍特殊部隊もあり、FSBも国内での取り締まりも強化する必要になっているようだ。

もう1つ、ロ軍は、秋の30万人動員のうち、半数をすでに前線に配置しているが、多数の死傷者も生じていることで、戦場でも劣勢であり、単純な突撃をさせて死亡させている。後の半分は冬場に訓練して、1月以降の攻撃に備えている。このため、ウ軍ザルジニー司令官は、ロ軍の大規模攻撃が1月に首都キーウ制圧を再び試みる可能性があるとしている。

それと、ロ軍も動員兵だけの部隊の防御力が弱いことがわかり、戦闘経験がある将兵と動員兵を組み合わせて、部隊編成するようになってきた。しかし、それでもウ軍に対して守勢である。

精密誘導弾を使われると塹壕戦では十分な防御ができないし、逆にウ軍は普通の爆弾を精密誘導にするJDAMを供与されることになり、ロ軍を追い詰める武器が追加された。

このような状況で、ロ軍司令官も、勝利のためには核兵器を使う必要性があると述べ始めている。ロ軍が勝てる方法は、戦術核しかないというようである。

しかし、ゲラシモフ総参謀長官は、核使用に反対なのであろうか、またもや更迭という噂が出ている。ショイグ国防相も、プーチンに低出力の核兵器を使用したいと述べている。徐々にロ軍内部でも核使用を述べる軍人が多くなっている。

NATOは、核を使用したら、クリミアのロ軍を全滅させると述べていたが、それに対してロ軍は欧米に核ミサイルを打つと脅しをかけ始めた。長距離ICBMヤルスを発射台に移動させて、欧米に脅しをかけるようである。

この状況で、ロシアを代表する国際政治学者のドミトリー・トレーニン氏は、「仮にロシアが敗北すればすべてが失われる」と述べ、プーチン政権は国家の存亡にも関わる賭けに出ているとし、そのうえで、軍事侵攻の終結に向けて「解決できるのは2人だ」と述べ、最終的にはロシアとアメリカの首脳による決断によってしか、停戦などは望めないという見通しを示した。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年12月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Sasa Dzambic Photography / Shutterstock.com

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