メルマガ『施術家・吉田正幸の「ストレス・スルー術」』著者・吉田さんのもとに舞い込んだ相談には「熟年離婚」に関する深い悩みが綴られていました。昨今、50代や60代で離婚する人が多くなっているといいますが、いったい何が原因なのでしょうか。吉田さんはその原因やメリット・デメリット等についても解説しています。
定年後の夫が毎日家にいるということが堪えられそうにありません
50代後半の主婦です。
一度だけ吉田先生の施術を受けたことがあります。その後、すぐに引っ越してしまって、そこからTwitterやBlogなどを拝見していました。メルマガは最初から読ませていただいております。
今回は、読むだけでなく思い切ってメールさせていただきました。
実は、最近、私の周りでは離婚する方が多いです。
友人や知人などと話しているとその周りにも離婚された方がいて、50歳から60歳代で多いです。つまり、熟年離婚です。
私自身もここ最近ですが、夫と口論することが頻繁にあり、何度かうっすらと離婚を考えてしまっています。
経済的なことが無ければ、恐らく決めていたかもしれません。
こんな夫が、定年後に毎日家にいるということが堪えられないのです。
どのように考えていけばよいのでしょう?
吉田さんからの回答
ご質問ありがとうございます。
どのように考えていけばよいのでしょう?・・・・ということですね。
ありきたりな返答としては、「いやいや、経済的に考えても苦労することは目に見えていますし、更に年取ったら、独り身は辛いですので、マイペースで、のらりくらりいきましょう。」
なんていう答えになりそうでしたが、それはあまりにもありきたりなので、もっと別な切り口からできる限り考えていきたいと思います。
実は、当院に来られる方々からも「熟年離婚」を最近した人がいるとか、あるいは現在進行形で「熟年離婚」を考えているという人も意外といます。自分の周りでも3組くらい出てきました。
第二の思春期・・・の時期なのか、人生の終焉間近に夫婦としての醍醐味を味わえないということは、ある種残念なことではありますが、夫婦仲良く人生最後まで過ごすことは案外難しいのかもしれません。
熟年離婚という言葉を聞くことが珍しくなくなってきましたが、熟年離婚に定義があるわけではありません。
熟年離婚というと、熟年者の離婚を意味するにも聞こえますが、一般的には、結婚して一定の長い期間連れ添った夫婦が離婚することをいい、およそ20年以上結婚生活の後に離婚することを指すと言われています。
厚生労働省の統計(「人口動態統計月報年計(概数)の概況」)によると・・・
離婚件数は、平成14年をピークにやや減少傾向ないし横ばいに推移していますが、同居期間ごとの離婚件数をみると、同居年数が20年以上の夫婦の離婚件数は横ばいないし増加傾向にある・・・、とのこと。
コロナ禍で加速している気もします。
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女性側から見た熟年離婚の原因としては何が考えられるのでしょう?
女性が熟年離婚を検討し始める理由の一つに、定年後に夫が家にいるという点があります。
夫からすればショックな話ですが、それまでは平日の夜と休日しか家にいなかった夫が、ずっと家にいるために、これまで気にならなかった夫の性格や生活習慣が妻のストレスになるということが妻に離婚を考えさせるきっかけになるようです。
また、当然、熟年離婚においても、通常の離婚と同様、夫の浮気や浪費等が問題になることがありますが、それまでであれば子どものことを考えて離婚にまで踏み切れなかったのが、
子どもが成人していることから離婚に踏み切りやすくなるというのも熟年離婚の特徴といえるのでしょう。知り合いもこの時期に離婚しました。
さてさて、では、男性側から見た熟年離婚の原因とはなんでしょう?
熟年離婚といえば、夫が、長年連れ添った妻から突然離婚も求められて途方にくれる、というイメージがあります。しかし、近年は夫から熟年離婚を切り出すことも珍しくありません。実際に知り合いも夫からの申し出でした。
夫が妻との熟年離婚を検討するきっかけで特徴的なのは、妻の些細な言動にその原因があることが多いということです。
妻が自分を思いやってくれない、文句しか言わない、子どもばかりに興味があって自分の方を見てくれない、家庭内で居場所がない等、自分が妻から大切にされていないのではないかという不安。
そんな毎日の中で、老後の人生について考え直しはじめるということが夫に熟年離婚を検討させるきっかけとなるようです。
特に、夫の場合、離婚しても経済的な不安が少ないということが、離婚を後押しすることにもつながっているようです。
熟年離婚の最大のメリットは、結婚生活による悩みから解放されることにあると思うのです。
結婚生活は、赤の他人が同居するわけですから、多かれ少なかれどのカップルにも悩みはあると思います。
夫側への不満・悩みとしてよくあるのは、浮気や家庭内暴力、浪費等、また、妻側への不満・悩みとしてよくあるのは、家事をやってくれない、女性らしくなくなった、金銭的に管理される等です。
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熟年離婚を検討される夫婦の場合、子どもが成人していることが多いことから、このような配偶者に対する様々な悩みや不満から解放されるのでしよう。
そして、その後の人生を、自分らしく自由に生きることができるという点に熟年離婚のメリットがあるように思います。
また、熟年離婚のメリットとして、配偶者に対する直接の関係だけでなく、配偶者の親族との関係にも悩まなくてよくなるという点も挙げられます。
熟年離婚を検討する夫婦は、その親の介護等の問題を抱えていることが少なくありません。配偶者の親の介護という点からも解放されることも、熟年離婚のメリットといえるでしょう。
さらに、これは熟年離婚に限る話ではありませんが、離婚後は自由に恋愛したり再婚したりすることができるようになります。
熟年離婚が増えてきている昨今、熟年者同士の恋愛の場も増えてきているようですから、新たな出会いを求めることも不可能ではなくなっているようです。実際にマッチングアプリでの熟年結婚も多いと聞きます。
しかし、残されてしばらくは、離婚後の生活面における孤独感は想像以上に大きいと自分は思います。
このように、熟年離婚のデメリットの一つが、離婚後に孤独感を感じることが多い、ということが挙げられます。
熟年離婚の場合、子どもも成人していることが多く、既に独り立ちしていることが多いため、離婚して配偶者と別居すると一人で生活することになります。
仕事を持っている方であればまだ良いのですが、定年退職された方や専業主婦であった方が熟年離婚すると、一人で生活することになって自由な反面、孤独を感じることも多くなってしまうのです。
若いうちであれば、独身の友人等も多いと思いますが、熟年離婚の場合、友人は家庭を持っている場合も多いことから、なかなか普段友人と一緒に出掛けたりすることが難しくなってきます。
特に、趣味がない方や、もともと友人が少ないという方は、熟年離婚後に孤独感を感じることが多くなってしまうというデメリットも十分に考えて、決断せざるを得ません。
ここまでは、当たり障りのない、表向きの話となります。
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さてさて、結婚の原点を顧みてみましょう。まずは、恋愛から始まります。
あくまでも雑誌のSPAのアンケートデータなので詳細は不明なのですが、「5年以上交際中の恋人または結婚相手がいて、エッチにつまらなさを感じている、20~30代の女性200人」にアンケートの実施結果です。
約50%の人が交際を始めてから3~5年で「つまらない」と感じるようになっている。
セックスの頻度は「1年以上していない」との回答が一番多く、5人に1人にのぼった。また、1か月以上性交渉なし=セックスレスに約半数が陥っていた。ということです。
これは、恋愛初期はフェニールエチンアミンという神経伝達物質が分泌されるため、盲目的に相手を求めるようになりますが、非常に残念なことに、継続は無理のようです。
このホルモンは覚醒剤アンファタミンに近い構造を持つと言われています。
そして、恋愛中はセロトニンが4割減ります。
安心感を持たせるセロトニンが減るということは不安になる、よって「この人と一緒にいなくちゃ」という感情が生まれるのだといいます。恋愛初期ですよ。
そしてノルアドレナリンで血流が増えてドキドキとしてくるわけですね。脳の面から考えると、脳は初めてのことに対しては警戒しますが、だんだん合理化しようとするのです。
実は『脳の合理化』が問題にもなるのです。
つまり、同じ行動をしているうちに初めてのことに警戒的に対処する余裕がでてきます。これが、倦怠期やマンネリの原因になります。
あくまでも、ホルモンや脳の仕組みからのことですが。
自由自在にホルモンをコントロールすれば、相手をずっと好きでいられたり、セックスレスも解消できたりするわけですが、そううまくはいかないのが人間界のおもしろさです。
アクセル的なホルモンが出過ぎると人体に負担がかかる。それを軽減するための物質も出てくるわけですから、ホルモンの葛藤と戦いが繰り広げられるわけです。
結論として、ドキドキ恋愛の目的というのは究極、生殖です。「恋の賞味期限は3年」といいますが、まさにそうなのですね。しかも、人間の脳は、手に入らない相手にこそ燃える仕組みになっているようです。
手に入った相手(結婚)には興奮しない、萌えない、以前ほど大事にしない。「釣った魚に餌をやらない現象」。なんとも残酷な話です。勿論、そんな方ばかりではないと思うのですが。
生物学的に、「純愛はない!セックスが重要」ということなので、このように、ホルモンや脳の観点から言えば、簡単にいうと誰でも同じ人とのセックスは3年から5年で「飽きる」ということです。
どんなに愛していても、肉体・脳は下落していくということです。そして、熟年離婚に関しては、すでに肉体的に下落し始めていかにスキンシップを取っていくのか、ということに尽きると思うのです。
もう、昔のように、意気盛んとした若いもの同士の肉体のぶつかり合いは、熟年期には物理的に無理なのです。
芸能ゴシップを見ても、夫でも、妻でもどちらかが性欲旺盛、上昇真っただ中であれば、夫婦の欲求バランスは崩れて「不倫」という結果になってしまうわけです。ネットニュースでも不倫記事があとを絶たない理由もここにあります。
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それでは、夫婦になって長く一緒に生活している二人は、生物学的に、「純愛はない!セックスが重要」という始まりのストーリーから、この脳とホルモンの変化を経て、一体どのように路線変更をしていけばいいのでしよう。
それは、「枯れていく過程」をいかに二人で楽しめるのか、ということに尽きると思うのです。
「純愛を探り出し!セックスは下落」していく始まりから、長い時間の流れの中で、具体的な性交は少なくなっても、“愛している”ならば、愛の表現をし続ける義務が、「結婚という契約」には双方必要だと感じます。
その表現こそが、スキンシップ。
「愛するということ」の著者、エーリッヒ・フロムは「愛するためには技術が必要だ」と述べています。
- 「ほしければまず自分が与える」、「人がしてほしいことを先にしてあげよう」、それらが「愛そのもの」だということ。
- 自分時間の余剰をつくり、その空いた時間を大事な自分のために、自分自身を考える事にじっくり腰を据えてみる。
- 孤独でいられる人だけが人を本当に愛することができる、逆に群れる者に人を愛することはできないということ、群れているのは「孤独と向き合う事、自分に集中すること」から逃げている症状だということ。
- 愛はスポーツや楽器と同じく、スキルである、また、小さな頃から一つのスポーツや習い事を続けている人は、人を愛するスキルがかなり身についている可能性が高い。
つまりは、好きな相手よりも、さらにその奥に目線を持っていく、ということ。そして、つまらない事で一喜一憂せずに、自分自身をよく観察して、深く、広く、正直に、素直になれることが大切ということです。
この自分づくり自体が「愛するということ」なのですね。よろしければ、一読ください。長い期間読み継がれている意味がお分かりになると思います。
その自分改革の上で、素直に「好き」であれば、真正面から夫と関わっていくことです。逃げないで。
その表現こそが、スキンシップ。
そっと触れる、ハグする、そして、キスまで。
聞こえてきそうです。いまさらそんなことできないと(笑)
この技術を上げていこう、という気持ちが全く無くなったのならば、たぶん難しいです。「熟年離婚」に覚悟を決めて進んでください。
しかし、まだ何とかしたい、という気持ちがあるならば、夫にもこの「愛するということ」を読ませてもよろしいですし、一緒に愛する技術を磨くことです。
埃や塵にまみれてしまった部分もあるでしょう。
素直にそれを認めて、更に原点に戻れるのかどうかの人生最大の瀬戸際です。その最終段階はご夫婦でしっかりと本音で、正直に話し合うこと以外は無いのです。このまま継続するにしても、離婚するにしても、です。
これができない夫婦がほとんどです。話している最中に心がギザギザと固まってきて、イジワルな気持ちになってしまうのです。だから、挑戦してください。
「愛するということの根底にあるのは、人間として自分が自分を愛せていなければそれは嘘である。」
自分で自分には嘘はつけません。
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