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ChatGPTへのアクセスを制限。賢すぎるAIを警戒する中国政府のジレンマ

昨年12月の公開以来、ネット界隈の話題の中心となっているChatGPT。この対話型AIの登場により、AIの開発競争でもしのぎを削ってきた米中に、決定的な差がついてしまう可能性が指摘されています。どういうことなのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では、著者の大澤先生が、AI開発に取り組む中国企業の動向を伝えるNYタイムズの記事と、ChatGPTに対する中国政府の警戒ぶりを伝える香港英字紙の関連見出しを紹介。中国政府が抱えるジレンマについて解説しています。

ChatGPTに戸惑う中国

ChatGPTの勢いが止まりません。マイクロソフト社の出資する米国OpenAIが開発したチャットボットです。2022年12月1日に公開されて5日後にはユーザー数が100万人に達しました。1月のユーザー数は1億人を超えたといいます。

話し言葉で質問を入力すると自然な文章で回答が出力されます。例えば、「お母さんの誕生日に家族で行けるレストランを横浜駅周辺で教えて。その理由も。」などと質問することができます。

「校長先生の卒業生向けの感動的なスピーチを作って」などと打つと見事な原稿を作ってくれます。「AIに代替されない人の特徴を表にまとめてください」「英語の試験問題と模範解答を作ってください。」なんて質問もできます。

それどころか、音楽、小説、詩、歌詞などのクリエイティブな活動も行えます。すでに米国アマゾンではChatGPTを使って作った本が多数販売されています。

あらゆる分野に大きなインパクトをもたらしそうで「ChatGPTはAI界の月面着陸だ」と評する報道もあります。国際関係にも大きな影響を与えそうです。とくにAI分野で米国と覇権を争う中国の動向が注目されています。以下、ニューヨークタイムズの2月23日の記事です。

ChatGPTの成功を追いかける中国

 

今、テクノロジー業界で最もホットな話題は、ChatGPTの台頭と、MicrosoftやGoogleなどのテクノロジー大手による、A.I.を活用した独自のサービス提供の競争です。しかし、AI競争は米国に限ったことではありません。他の国々も自分たちがビッグプレーヤーであることを示そうと躍起になっています。

 

中国はその代表です。中国の巨大インターネット企業、バイドゥは昨日、ChatGPTに似たErnieを来月に展開する予定であると発表しました。バイドゥのCEOロビン・リーは、Ernieは1,000億以上のデータポイントを使って訓練され、中国の顧客にサービスを提供することに重点を置いて構築された、と自慢しています。

 

中国のハイテク企業でAIへの取り組みを強調しているのは、バイドゥだけではありません。Tencent、Alibaba、NetEase、JD.comは、具体的なスケジュールを明示しないものの、ChatGPTスタイルの製品に取り組んでいると述べています。しかし、彼らはまた、自国の政府という大きなハードルにも直面しています。

 

中国政府がブレーキを踏んでいるのです。規制当局はインターネット企業にChatGPTの閲覧を許可しないよう伝えたと言われています。中国政府が消極的な背景には政府の課した検閲から逃れるかもしれないという懸念があるのです。

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解説

ChatGPTで生成される回答は予測が不可能です。だから中国政府は自国のイデオロギーに反する回答がでてくることを懸念しているのです。それがAI競争で中国の足を引っ張るだろうというのです。この点において、サウスチャイナモーニングポストも以下のような表題の記事があります。

2月17日/中国警察、ChatGPTの「噂」や「詐欺」に警告

 

2月20日/ChatGPTが話題を呼ぶ中、香港は倫理観に基づいたAI規制を整備する必要がある

 

2月20日/ChatGPTが注目を集めるも、中国の開発には検閲、コスト、データの課題がある

 

2月23日/中国本土のユーザーにOpenAIのChatGPTへのアクセスを提供していた複数のWeChatアカウントが停止または運営を停止

 

2月25日/中国政府にとってChatGPTは進歩かもしれないが、「倫理的問題」もある

解説

どれもChatGPTのようなAI開発において中国のジレンマが伝わってくる表題です。清華大学の教授は「米国が強力なAIを対中イデオロギー戦争の新兵器として利用することを懸念している」と述べています。現在の外交・戦争は情報戦になってきています。ChatGPTは大きな影響を与えるでしょう。

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image by:T. Schneider/Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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【著者】 大澤 裕 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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