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「エホバの証人」元信者の男女6人が射殺。なぜ“かつての仲間”は狙われたのか?

かつては輸血拒否による死亡事故が社会問題となり、つい先だっては教団内の虐待行為が明るみに出た宗教団体「エホバの証人」。ドイツでは現地時間の9日夜、集会に集まっていた信者たちを元信者が銃撃し6名が命を落とすという事件が起きています。このショッキングな事件を受け、カルト教団が過剰に敵視される理由を考察しているのは、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さん。多田さんは自身のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で今回、強い敵愾心を抱かれても「自業自得」と言わざるを得ない、カルト教団に共通する複数の特徴を列挙しています。

「エホバの証人」6人死亡銃撃事件の深い闇。なぜカルト団体は敵視されるのか?

1.自らの行動のブーメラン。カルト宗教団体が過剰に敵視されるワケ

なぜ、カルト団体といわれるところは敵視されてしまうのでしょうか。

3月9日夜、ドイツのハンブルクで「エホバの証人」の施設で銃撃事件があり、男女6人が死亡しました。

銃撃したとされる容疑者は1年半前に教団をやめた元信者とされており、すでに自殺をしているとの報道です。

組織に恨みを持ったための犯行なのかはわかりませんが、いずれにしても、元信者でこれだけの人を殺害したのですから、少なからずエホバの証人を敵視して犯行に及んだとみて良いかと思います。

昨年7月にも山上徹也被告による安倍元首相の銃撃事件もありましたが、もともとは旧統一教会の韓鶴子総裁を狙いましたが、それが難しいために教団とのつながりが深いと考えた安倍元首相を狙ったといわれています。

なぜカルト思想を持つ組織は、強い敵愾心を抱かれてしまうのでしょうか。

結論からいえば、自らが一般の人たちを敵視して行動するゆえ、その逆の結果を生んでいるのだと考えます。

2.「自分が救ってやらなければ」。上から目線のカルト教団

多くのカルト団体は「自らの組織の人間こそが、神に選ばれた存在と考えて、一般社会の人たちを救わなければならないという、下に見たような行動を取ります。いわゆる「選民思想」です。

また、敵か味方と物事を二分して考える傾向もあります。「二極思想」ともいいますが、自分たちの思想に沿う考えの人は「善」(神の側)であり、反対する者は「悪」(サタンの側)であるとして排除します。

旧統一教会の教えでいえば、文鮮明教祖夫妻の教えを受け入れた者こそが、神の側の人たちであり、その他はサタン側としています。サタン世界の人間は、万物(もの)以下の存在であり、救われなければならない存在であるとしています。

旧統一教会の田中富弘会長は年頭の信者に向けた言葉のなかでも「我々がぶれない限り、サタン側が必ず崩れていく」とも話して、教団に反対する者たちを「サタン」と呼び、敵視させる方向に信者を持って行っていることからも、彼らの真意がわかると思います。

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3.サタンになら何を言ってもOK。平気で他人を傷つける信者たち

反対する人たちをサタンとみた彼らの言動は、多くの人の心を傷つけ、社会との軋轢を生む結果に

常に自分たちが上の立場であり、サタンの側の私たちは下の立場なので、相手の心を傷つけるような言葉を信者らは平然と話します。ネット上などでも、教団に反対する人や、教団を脱会した人に向かっての容赦ない言葉も多く、心無い言葉を受けて傷ついてしまう人もいます。ひどいのは、自らが教団信者でありながら、それを(正体を)隠して、一般人のフリをして発言、攻撃する人たちです。

私も信者時代は、自分の家族は教団に反対していたので悪魔の側として捉えて、家族には本当に心を傷つけるような言葉を吐いてきました。相手がサタンであるととらえているゆえに、何をしても良いような行動してしまうのです。

そうした一つ一つの言動が、一般人たちの心を傷つけていく。その結果、教団はどんどん敵視される方向に行ってしまいます。しかし当人たちは、自分たちは善行をしている思っているので気づきません。しかし必ずや、そうした心無い言葉や攻撃的な言動は、自分たちのもとに跳ね返ってきてしまうものです。「サタン分別」などといいますが、人と人との心の分断を指導することはやめてほしいと思います。

4.この世の法より自らの教義を優先するカルトの人々

エホバの証人の教えでは、近い将来にハルマゲドンが起こり、エホバの証人の教えを信じた者以外はすべて滅びるという思想があります。ここにあるのも、神(エホバ)に選ばれたという選民思想です。元信者の話を聞くと、自分たちのコミュニティの人たちの交流を優先させられて、一般社会の人たちとのかかわりを制限されていくといいます。

旧統一教会においても同じです。

私も信者時代は、一般社会に勤めながら教団に通った時期がありましたが、信仰の篤い人ほど仕事が終われば、ホームという教団の施設に一目散に帰ってきて、街頭での伝道や、電話によるアポイント活動をさせられました。つまり、教団の活動を優先にしなければなりません。土日は街頭に出ての伝道活動をしました。教義を信じれば信じるほどに、しだいに、社会の人たちとの人間関係は疎遠になっていきます。

エホバの証人の方は伝道活動にも熱心ですので、この辺りは、非常によく似ています。

外界の人たちの交流を断たれていくことは、カルト団体の特徴であり、社会性を失い、周りの人たちとの軋轢を生む大きな要因になっています。

カルト団体に向けられて起きる悲劇を防ぐためにも、法律などを通じて、社会的に教団の行き過ぎた行動に歯止めをかけてあげることです。そして社会の人たちとの軋轢を生じさせないように促すことこそが大事になります。

そうしたなかで、旧統一教会問題のような高額献金を規制する救済新法もできました。しかし、この世の法律より、天法(自らの教義)を優先するのが、カルト思想の常なので、まったく意に介していないと思います。ですので、組織に対して、いかにして法律を遵守させるか、カルト思想を持つ団体を宗教団体として認めている日本人が真剣に考えていかなければならないことです。

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5 .宮台真司襲撃犯を引きこもりにしたのもエホバの証人なのか

社会学者の宮台真司さんが刃物で切り付けられ襲われた事件は、昨年死亡した倉光実容疑者(41)が殺人未遂容疑で書類送検されて、捜査は終結しました。

男の犯行動機はわからないままです。ですが、一部、男の母親はエホバの証人の信者であったという報道が流されています。

男が宗教2世だった可能性もありますが、教義上「自殺はダメ」とのことので、おそらく信者ではないだろうと思われます。

気になるのは、近所の方の話として、容疑者の男は「野球部にいたが、高校2年ごろから、学校へ行かなくなった」というものがあります。子供が学校にいかなくなって引きこもりになったから、エホバの証人に母親が入ったことも考えられますが、それ以外の可能性もあるのでではないかと、エホバの証人・元2世信者ベリタスさん(30代・仮名)と話すなかで感じさせられました。

「部活は原則禁止の家庭がほとんどでした。なぜなら常にエホバの証人の集会など行事を優先させますので、母親が熱心な信者になったとすれば、本人の部活は休みがちになり、行けなくなると思います。そんな事情もあったかもしれません。男性は中学から野球部を続けていたということですから、その時点では、母親はエホバ信者ではなかった可能性は高いと思います」(ベリタスさん)

となれば、やはり母親が入信したことにより、子供への何らかの影響もあったことも捨てきれません。

エホバの証人の機関誌のなかで、ある人物が語るスタイルで「部活を始めたものの、巡回監督が部活を辞めるように誘導している事例が載っています」とベリタスさんは教えてくれます。

巡回監督に助けられました。監督から「兄弟はバレーボールのことを話すとき熱が入りますね」と言われました。「それを聞いてはっとしました」「のめり込みすぎていたことに気づきました。すぐに部活の友達との交友をやめ、会衆内で友を探しました」(中略)「自分が学校での活動によってエホバから遠ざかっていないかどうか、気づいたことを教えてほしい、と友達や親や会衆の長老に頼んでください」(出典:ものみの塔2011年6月号一部抜粋)

こうした公式の文章から、エホバの証人の多くが「部活はしてはいけないもの」と捉えて、「部活禁止」のルールが定着した可能性も指摘します。

6.山上徹也被告とどうにも重なって見えてくる宮台真司襲撃犯

襲撃事件の真相は藪の中ですが、男の心に対して、エホバの証人の教えの影響はゼロではなかったと考えています。安倍元首相を銃撃した山上徹也被告も、多額の献金による金銭苦を受けて、教義にも若干ですが触れていたとのことで、少なからず、母親の旧統一教会の信仰の影響は受けていたので、どうにも重なって見えてきてしまう部分があります。

今も信者の子供たちの多くが学校の部活よりも、エホバの証人の行事を優先させられていることが考えられます。その結果、社会の人たちとの交流が妨げられていることは非常に心配なところです。

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悪徳業者などへの潜入取材した数は100ヶ所以上。数々の現場経験と被害者への聞き取り取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして一線で活動し、多数のテレビ・ラジオに出演している。現在はヤフーニュースのオーサ・公式コメンテーターとして、コメントやニュース記事を執筆中。消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」(2017年~18年)の委員も務めた。雑誌「ダカーポ」にて、悪徳商法に誘われたらついていく連載を担当。それをまとめた著書「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)はフジテレビで番組化され、ゴールデン枠の特番で第8弾まで放送された。新刊11月予定「信じてみたら、ダマされる。~元統一教会信者だから書けたマインドコントロールの手口」(清談社清談社Publico)

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【著者】 多田文明 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 14日・28日

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