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Patient using nurse alarm button for emergency belled on sickbed at hospital

なぜ、現役精神科医は尊厳死や延命治療を良しとしないのか?

「健康で長生きする」。そのために、さまざまな制約を受けることが本当に幸せなのか。そんな疑問をつきつけるのは、現役医師で作家の和田秀樹さんです。今回のメルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』では、長生きや健康について自身の考えを語っています。

「患者が可哀想」という嘘

久しぶりに桜を見に行った。

スポーツに熱狂するより、桜を愛でるほうが、日本人的だと思ったからだ。

確かに桜というのは、日本人の心を湧き立たせる。

ただ、私の聞いた話では、日本人が桜を好きなのは、パッと咲いてパッと散るからだという。

いつまでも引退しない人が老害と言われたり、晩節を汚すといわれたり、往生際が悪いと言われるのはそういう価値観からだろう。尊厳死の問題だって、たらたら生きていることが日本の価値観に合わないからだという考え方もある。

私自身は尊厳死の考え方は好きでない。

醜い姿で生きているのが可哀想だということで延命治療をやめるわけだが、本人は通常、意識がないので可哀想ではない。周りの人間が可哀想に見えるので、すんなり逝かせてあげてくださいというのが真相だ。医者の側から言うと、あるいは政府の側から言うと、まず治る見込みのない患者さんに治療を続けるのがもったいないというのが本音だ。

そういう話を正直にしないで、患者が可哀想という嘘をついて、自分の責任を逃れようとする姿勢が好きになれない。

ただ、私自身は延命第一主義ではない。

食べたいものをがまんし、飲みたい酒をがまんし、薬を飲んでだるい思いをしてまで長生きしたいとは思わない。

これは家族が決める尊厳死と違って、患者さん自身が選べることだ。

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人間の尊厳とはなにか

今は、家族が延命を求め、患者の幸せを考えず、酒を取り上げ、タバコを取り上げ、しょうゆを取り上げ、お饅頭を取り上げる。そんなことをしても長生きできないことを渡辺徹さんが教えてくれたのに、人間の尊厳を認めて、高血圧や糖尿病の治療拒否とか、控えめの治療が許されない。

頭がはっきりしていて、元気に旅行に行けるうちの尊厳は認められず、死にかけになってから尊厳が大事という。本当に不思議な国だ。

いずれにせよ、コロナ禍で、パッと散っていいから、老い先短いのだから仲間と酒を飲みたいとか、残りの人生で旅行に行きたいという考えは否定された。

パッと散ることはいけないこととされ、だらだらと家に閉じこもって生きていることが大切、そうでない人間はわがままということでバッシングを受けるようになった。

命が大切だから、自由なんてどうでもいい。移動の自由も、人と話す自由も、会食の自由も奪われた。そして、それが自由の危機という人はほとんどおらず、いてもテレビには絶対に出られない。

桜のようにいきたい価値観はどこに行ったのだろう?

それを考えると野球は桜のようなものだ。

現役の黄金時代はそう長くないし、みじめな晩年を送ることも少なくない。比較的長い間、幸せな時期が続く勉強ができる人より、野球型の人生に魅力を感じるというのは日本人的だ。

私は、桜もいいが、歳をとっても幸せという考え方が大事だと信じるようになった。ただ、それは命が長ければいいというのとは違うことは明言したい。

※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2023年3月25日号の一部抜粋です。

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image by: Shutterstock.com

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