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閉鎖的な体質が問題。日本で働きたくないアジア人が増えている訳

海外から多くの人々が日本に職を求めてやってきた時代も今は昔。近年は、日本で働きたくないというアジアの人々が急増しているというのが実状のようです。一体何がこのような状況を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』で、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者ののもときょうこさんが、その原因を探っています。

「日本で働きたくない」アジアの人が増えている背景を解説します

NIKKEIリスキングの記事によると、日本で働きたいアジアの人の数が減っているそうです。

ホウレンソウに不信感 日系企業はアジアで人気低下|NIKKEIリスキリング

同研究所所長の大滝令嗣教授は、中国やインド、インドネシア、タイなどアジア主要8カ国を対象に「日系企業は海外でどう見られているか」をテーマに22年に調査を実施。

アジアのホワイトカラー人材が働きたい国を調べたところ、日本企業で働きたい人が減っているそうなのです。

22年の調査では米国は67%、欧州は58%、日本は40%。それぞれ下がったが、日本の落ち込み幅が特に大きかった。一方で急伸したのは自国の企業で、14年は58%だったが、22年に82%でトップとなった。

東南アジア式「まあいっか」で楽になる本』の「ビジネス編」にも書いた通り、マレーシアでも同じ現象が見られます。

90年代には出会う人々から口々に「どうすれば日本で働けるのか」と聞かれた時代がありました(年配の方には今もこの感覚のままの人が多い気がします)。

2000年後半くらいからこの率がガクンと減り、今は「観光に行くのはいいけど、働くのはちょっとね、カローシしたくないし、差別もされたくない」という人が多数。うちのクラスでも日本に留学する子はいないです。

マレーシアには欧州や米国、日系企業がそれぞれ進出してきており、転職している人たちはその文化の違いを肌で感じているようです。厳密には、オープンな文化の日系企業ももちろんあるのですが、イメージ全体が悪くなっているのは残念です。

閉鎖的な雰囲気が苦手である

問題は言語だけではなく、閉鎖的な体質にあると言われます。

かつて日系企業で働く障害は圧倒的に言語の壁だった。しかし、22年は言語に次いで、閉鎖的な雰囲気、限定的な昇進、低い報酬を問う声が高まっている。日本の会社の課題は言葉の問題以上に「島国根性」とも呼ばれる閉鎖性なのかもしれない。

少し前に話題になった「地方から逃げ出す人」と似ているかもしれないです。ダイバーシティがまったくないというわけです。

【関連】この“不寛容”が地方を潰す。移住者が逃げていく土地に共通する特徴

パネリストの1人、日系メーカーのインド人マネジャーは、「日本企業のダイバーシティは言葉だけ。男女比や外国人の比率ばかりを気にして、ダイバーシティがなぜ必要なのか、そこから何が生み出されるのかを理解していない。インドでは某日系自動車メーカーのプレゼンスが高く、多くの優秀なインド人エンジニアたちの憧れでもあるが、入社後、日本的風土を目にするとすぐに他のインドや欧米系のメーカーに転職するケースが目立つ」と指摘する。

同セミナーに参加したもう1人の中国人女性、シーメン・チーさんは、日本企業の採用面接で「なぜ中国の女性が日本で働くのか」と問われてショックだったという。人事担当者にとっては何気ない質問だろうが、多様性を是としているグローバル企業ではそもそもこのような問いかけは出てこない。

日本に憧れて日本企業で働いたり、協業した人の多くから似たような話を聞きます。地方移住の問題と似ていて、実は制度ではなくて、一人ひとりの心のありようが受け入れを難しくしている――これが日本の昨今の問題だと思う。

「多様性」がお題目になっていて、実際に外国人と働いたことも、友達になったこともない人が多いから、悪気はなく「日本人中心」の発言をしてしまう。

この「国民性」を変えるのは、難しいだろうと思います。

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不評な「ホウレンソウ」

もう一つ、不評なのが「ホウレンソウ」など、日本独特のやり方です。

「日本企業はホウレンソウ(上司への報告・連絡・相談)が大事だと言うが、外国人を信用していない、任せてもらえていないと感じることが多い」とも語る。アジアの日系企業は現地社員が新規事業などを提案した場合、現地法人の上司に報告された後、本社で検討、協議されて承認を得るケースがほとんどだ。これではどんなに優れた提案でも、事業開始には大幅な時間がかかる。

ぶっちゃけ、とっても慎重に物事を決める日本企業に対し、イライラするんだと思います。

「持ち帰りして検討」「一旦決めたら変えない」文化も不評です。新興国であるマレーシアは毎年のようにダイナミックに変化しており、物事が早く変わります。数年前とはまったく違うことを言い出したりします。学校の卒業式も日程がジャンジャン変わります。「やってみてワークしなればやめる」です。

これが日本人にとっては「テキトー」「いい加減」に見えてしまうのですね。逆にみると、日本だけが世界の中で不思議な会社文化を持っているように見えてしまうのです。

それでもグローバルに行きたい企業は、どうしたらいいか。付け焼き刃の「セミナー」とか教育機会でわかった気分になるよりも、一旦、日本の外で外国人の中で働く機会を持つことがいいように思います。欧米だけではなく、アジアの企業がどうやっているかを観察すること。そこから「なるほどこれもありか」と学ぶことが重要かもしれません。

※ 本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』2023年3月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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image by: rweisswald / Shutterstock.com

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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