4.デジタルプリントに駆逐される手描き友禅
例えば、手描き友禅はデジタルプリントに駆逐されようとしています。成人式の振り袖の多くはデジタルプリントです。データさえあれば、どんな柄でも再現できます。データを蓄積しておけば、いつでも柄が再現できるのです。
デジタル技術を駆使しても、顧客に合わせて、一点ずつオリジナルの柄を描いたり、絞りや絣や刺繍を組み合わせて高度な織物を作ることはできません。顧客の見る目も商品の品質と共に退化しているので、単純なモノで満足しているだけです。一般の人は、デジタルプリントを技術革新と呼んでいますが、あくまで効率が上がっただけです。作品の質は退化しています。
5.AIも効率化を進めるツール
これはAIにも共通しています。AIが職人の手の動きをコピーして、再現することはできますが、温度や湿度の変化に伴う調整、原料のコンディションに伴う調整はできません。ざっくりとコピーするだけです。
AIに仕事が奪われると心配している人は、元々大した仕事をしていません。効率を上げ、利益を上げることしか考えていません。効率の勝負ではAIには勝てないでしょう。
経済優先の仕組みは、高度なモノ作りの技術を淘汰していきました。しかし、日本にはかろうじて伝統的な職人仕事が残っています。
アナログのモノ作りの人間にとって、AIの影響は産業革命ほど大きくはありません。AIが普及することで、産業革命以前の手工業的な技術が見直されることは価値あることかもしれません。
編集後記「締めの都々逸」
「チャットGPT 凄いと言うが 言葉を覚えて 話すだけ」
チャットGPTは嘘を言います。でも、嘘を言わないと、言葉を使えるようにはなりません。嘘でも何でも思いついたことは話してみる。そうやって人間も言葉を使えるようになりました。
現在はその段階です。今後、チャットGPTの頭脳を育てるには、ネット上の情報をもっと増やす必要があると思います。それも建前ではなく、本音の情報です。ビッグテックのように情報を検閲しているようでは、頭の固いAIしか育ちません。AIを生かすも殺すも我々次第だと思います。(坂口昌章)
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