政府が推進本部を設置し、多くの自治体が手を上げたカジノを含む統合型リゾート(IR)の開発。なぜ日本は国を挙げてまでIR誘致に力を入れるのでしょうか。今回のメルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』では人気コンサルの永江さんが、読者から届いたそんな質問に誰もが納得できる回答を明示。既存の公営ギャンブルがカジノの代わりになり得ない決定的な理由についても解説しています。
国や自治体がカジノ誘致に力を入れる理由
Question
今はもう下火になってきましたが、どうして国や自治体はカジノ誘致に力を入れるのでしょうか?私はギャンブルなら既存の競馬、競輪、競艇、オートをもっと充実させることに力を入れればいいのに、と考えます。
カジノはIRとしても潤うのはせいぜい地元の自治体だけです。しかし競馬は畜産業の振興につながるし、競輪はオリンピックにつながるのですそ野が広がります。競艇、オートは少し特殊ですが、それでも広大な敷地を有しているので、そこを活用して家族連れのレジャー施設を作れるはずです。
で、購入は窓口販売をやめてすべてオンラインのみとする。そうすれば、儲かったときの脱税対策にもなります。実際高知競馬はインターネット販売を始めてから素晴らしく売り上げが伸びてます。
今まで窓口で手売りしてたおばちゃんたちは仕事を失いますが、これはレジャー施設の方に回ってもらえば雇用は維持できます。近年競馬はドバイや香港で日本馬がGIを勝つようになって世界の注目を浴びています。海外でも馬券を売るようにすれば外貨の獲得にもつながりますし、競艇、オートは外国にない分だけ希少性で外国でも舟券、車券が売れるのではないでしょうか?
既存の公営ギャンブルを充実させた方が、カジノよりはるかにメリットがあるのは明白だと思うのですが、なにかこれを妨げているものがあるのでしょうか
?
この記事の著者・永江一石さんのメルマガ
永江さんからの回答
これはとても面白い質問ですね。カジノは国内の公営ギャンブルとは狙っている層が全く違い、外国から観光客を呼び込むために作られているものです。海外の富裕層に観光に来てもらって、旅客・宿泊・飲食・サービス業を潤すためのものなので、地方自治体の公営ギャンブルとは違う大きな経済効果が期待できます。大阪のIRも面積ではカジノは5%くらいのはずです。
まず日本の公営ギャンブルって(言葉は悪いですが)日本の労働者階級に向けたものです。競馬や競艇、競輪などがCMを打って設備をきれいにして伸びてはいますが、外国人に向けているものではありません。
競馬はどの馬が勝つか日本のレースの戦績や血統など見て予想しなければ楽しめませんし、オートレースはくじで決まるエンジンの性能や選手のメンテナンス能力まで評価しなければならず玄人向きです。しかも大穴ばかりで、どちらも外国人が観光で寄って楽しめるようなものではありません。実際、東京競馬場に外国人なんてほぼいませんし、我々がスペインに旅行に行って毎日闘牛場に通いたいかというとそうではないですよね。
その点カジノなら、世界共通のルール・遊戯ですし、現地の労働者にまみれることなく楽しめるので海外観光客・特に富裕層の需要が期待できます(日本人の入場料で6,000円取るのも、パチンコ屋にいるような客層がカジノに入ってきてほしくないからです)。
カジノで大金を使ってもらうことが目的ではなく、カジノもあることを一つの魅力として日本に来てもらい、旅客・宿泊・飲食・サービスなどを利用してお金を落としてもらうことが目的です。日本人が旅行するときも、ラスベガスやマカオに行ったらずっとカジノに入り浸るわけではなく、1日だけカジノに行ってその他の日程は観光しているのと同じです。カジノはインバウンド需要獲得の一手段なんです。
日本は人口減少で内需も減り、メーカーも製造拠点を海外に移して空洞化し働き手の若者もいないので、インバウンドの観光業を事業の柱にしようとしてコロナ前から進めています。その中で、カジノ設置は、他の海外都市に観光の魅力が劣らないようにする(香港もマカオもタイもシンガポールも韓国も台湾も中国も韓国もオーストラリアも、北朝鮮でさえどの国もカジノがあるので、カジノがないからと日本を忌避されないようにする)必要があって進められているものですね。
長くなりましたが、今の日本の自治体がやっている公営ギャンブルをどれだけ磨いても外国人観光客を呼び込むことにはつながらないので、カジノ設置が進んでいるのだと思います。
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