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恐ろしい同調圧力。神戸市が17年間も隠蔽し続けた凄惨いじめ全真相

市の公式HPで「こどもっとKOBE」を謳い、子育てしやすい街をアピールする兵庫県神戸市。しかし「いじめ対策」に関しては杜撰極まりない状況のようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、凄惨ないじめ事案を17年間に渡り隠蔽し続けてきた神戸市教育委員会を糾弾。彼ら公務員が犯し続ける「違法行為」と、その保身のために使われた血税の金額を白日の下に晒しています。

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4千万円の血税。神戸市が17年間のいじめ隠蔽ごまかしに使ったムダ金

神戸市教育委員会と言えば、やはり「17年間」いじめ隠ぺいという前代未聞の不祥事であろう。

2005年当時小学5年生だった男子児童が総額にして50万円ものお金を、都度で脅し取られ、「死ね」「きしょい」など言葉の暴力は当然に、K1ごっこと称して殴る蹴るの暴行や、廊下を引きずるなどいじめ行為(犯罪行為)をやりつくされたという事件があった。

残酷ないじめ行為のオンパレードであるが、問題はこれだけではないのだ。

いじめの加害者7人がいじめ行為を認め、裁判所が「いじめ」認定をしても、神戸市教委は、「被害者本人から聞き取りができなかった」としていじめを未だに認めていないのだ。

「不存在」のはずの重要資料で明らかになった「聞き取り16回」という事実

さらに、2022年報道によれば、被害側がいくら開示請求をしても「不存在」とされていた重要資料が、出てきており、そこには、合計16回に及び被害男児から話を聞いたことが明らかになっており、いじめと強く認識していたことがわかる証拠類が、極めて分かりやすい形で記録されていた。

さらに、学校の記録として「調査報告書」が存在するが、通例作成されない市教委作成の「調査報告書」が存在しており、悪意の改ざんと言える神戸市教委による不正があったことも明らかになっているのだ。

テレビ局の取材では、いじめ発覚の前の2004年まで教育長であった人物が「率直に隠ぺいがあった」と発言し、この原因として、2005年にあった体罰死でのバッシングで続けざまにいじめがあったとしたくなかった神戸市教委による「自己保身」と役人特有の「同調圧力」であろうと証言している。

2023年となっても、神戸市教育委員会のみが、「いじめ」の事実を認めようとしていない。

被害者側によれば、裁判所に虚偽の回答書を提出したり、議会でも虚偽答弁を行ってきたという。さらに、問題のすり替えを行い、マスコミをも騙して逃げ切りを図っている様子だという。

ここまで読んで、気分が悪くなった読者もいるだろうし、さらっと他人に起きた不幸な事実程度に感じている読者もいるかもしれない。

しかし、よくよく考えて欲しいのだ。

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公務員が堂々と違法行為。民主主義を蹂躙する神戸市教委

問題はあまりに多岐に及ぶので、筆者が特にここを考えて欲しいということを取り上げると、

いじめの酷さは然ることながら、この隠蔽の深さと、国民の権利と言える情報公開制度への挑戦である。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律
第1条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

つまり、情報公開制度は、国民主権と民主主義の根幹ともいえる法律であるのだが、神戸市17年間いじめ隠ぺい事件においては、この法律が公務員である市教育委員会の職員らによって、蹂躙されているのだ。

本件では、被害者家族も支援者も、さらには取材に当たる報道も、行政に対して、「情報公開」としての開示請求手続きを行ってきた。

そして、上にもあるように、学校が調査し報告書として提出していた文書などは、「不存在」と回答されてきたのだ。ところが、これは存在しており、勉強会と称した神戸市教育委員会幹部による会議でも使われていたはずなのだ。

ある意味、公然の秘密状態であった資料が、市教委が行った隠ぺいをあからさまに表すものであるから、無かった事にしたわけだ。

つまり、公務員が公務上も法律上もその存在を認めなければならないことを、自己保身と同調圧力、神戸市教委のお家芸なのか隠ぺいを引き継ぐという伝統によって、国民の権利も民主主義の根幹も一切を無視しているのである。

報道によれば、神戸市教委は「資料が公文書に当たるかどうかの判断は誤ったが、故意に行った隠ぺい行為には当たらない」と回答している。

さすがは、独立した行政委員会である。自己の行為を結論まで決めつけ、安っぽい詭弁で自らの非行を無かった事にしようとしているのだ。

そもそも、当時はある事を知りつつ「不存在」としていたわけで、今となって、「公開か非公開と言えば非公開」とするのは、問題のすり替え以外のなにものでもない。

もはや神戸市教委のお家芸。止まらぬ隠蔽の連鎖

そして、さらに筆者が恐怖を覚えるのは、脈々と続いた隠ぺいの連鎖だ。

そもそも教育長という名誉職は、数年で代わる。代々その地域の教育委員会の事務局などが教育行政エリートを送り込むのだ。

いや違うよ、首長が任命するんだよという人もいるだろう。確かに法ではそうだ。そして、実際に任命を受けて教育長になっている人もいる。しかし、多くは、首長が選挙で決まると、その先の人事で、次の教育長人事が伝わり、認めるか認めないかを決めるだけだ。

まあ、異論もあることだろうからこの辺にしておくが、現実なんてこんなもんだ。

話を戻すが、本件、神戸市17年間いじめ隠ぺい事件は、その名の通り、事件発生は2005年であり、すでに被害男児は成人しているほど時間が過ぎている。

その間に何人の教育長が替わり、何人もの責任者が替わっただろうか。この17年間、隠ぺい問題の問題提起がなかった時期はない。常にその時の担当者がいて、最高責任者であろう教育長がいたわけだ。

議会でも問題になっている。その都度、この隠蔽文書やその事実が目先にあったはずなのだ。

しかし、隠ぺいは脈々として引き継がれてきたのだ。

これはあまりに恐ろしいことだといえるだろう。自浄作用も機能もない組織が行政であったら、その決定に従わざるを得ない市民は、どんなに間違っていようが、右だと決まれば右、左だと決まれば左にならざるを得ない。

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自死事件に発展した事案も。いじめと隠蔽、体罰が後を絶たない神戸市

今回は、教育委員会の不正が脈々と続いたことから、その最大の犠牲者は、「こども」になるだろう。

その証拠に、神戸市では、『伝説の探偵』が公開した神戸市小学生いじめ隠ぺい事件以外でも、市教委が教員らに隠ぺいを指示したといういじめ自死事件など、いじめと隠蔽、そして体罰が後を絶たず起きているのだ。

つまり、いじめの隠ぺい事件から始まったが、その実、法を順守するはずの公務員が法を破り、自己保身と同調圧力の中、これを脈々と続けても、のうのうと仕事をしたふりをして、市民の権利も民主主義の根幹も無視しても何のお咎めもないどころか、隠ぺいなどの不正が明らかになったのに、未だに認めないで許されている状態が現実としてあることは、もはや、神戸市だけの問題ではなく、全体として大丈夫ではないと思わざるを得ないということだ。

市教委の保身のために使われた異常な金額

さらに続けると、

神戸市17年間いじめ隠ぺい事件では、いわゆる「調査委員会」が発足しているが、報道機関のミスリードもあって、被害者側が要望してのことだと思われているが、実はそうではないのだ。

被害側が要望しているのは、「いじめを隠ぺいしたことを認めろ!」という一点であり、むしろ、調査委員会設置には、反対だという。

理由は、すでに明らかなことを、血税を使って調べないでも、単に市教委が認めさえすればいいだけのことだから。

報道によればすでに3,600万円、経費なども入れればすでに4,000万円近い税金が、市教委の保身のために使われているという。

明らかになっている調査委員会の経費_開示2023年4月

被害者側は続けて、「この調査費用は隠ぺいした教職員らに全額求償すべきだと考えます」という。まさにその通りだろう。教育長一匹、頭を下げて、「どうもすみませんでした隠ぺいして!」というか、このまま何千万も税金を投入し続けるか、神戸市民はよくよく考えた方がいいだろう。

さて、次回は、被害側に今起きていること、そして、これまで報じられなかったことを話してもらおうと思う。

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問題の先延ばしのためにはどんな無茶もする教委

いじめ問題をやっていて、焦るのは、学生には期間がある事です。小学生なら6年間、中学高校なら3年間。一方、隠ぺいをする側は、これが免罪符のように感じている面がある。

こちらは、卒業までには、教委の管轄が変わる前には、と、その間に仕上げられるように考えたり、期間的に無理だというときは別の策を講じたりするわけですが、逆の立場は、引き延ばそうと必死に、無茶苦茶なことをしてくるわけです。

例えば、調査委員会立ち上げを大々的に発表して、何もしないとか、そんな事案がゴロゴロあるわけです。

ただ、17年間隠ぺいは、さすがに長過ぎます。当時小学生だった被害者も加害者も成人しているし、結婚して、こどもがいるということもあるでしょう。

隠ぺいで、どれだけの人が苦しみ、そして、受けられるはずの教育を受けることができなかったか、その期間は、まっくろなときだったはずだし、正されるはずが正されないことで、多くの犠牲が払われたのです。

その1つ1つに、きっと幸せだった、楽しかったはずの人の人生があるのです。その「1」は、単なる数字の「1」ではない。

費用も莫大と言える額が掛かり、期間もずいぶん経った、調査委員会がどういう報告をするのか注目すべきところですが、私はさらに、この報告を受け、神戸市教育委員会が何と答えるのか?に注目しています。いつも通り、「以後気を付けます」で終わりなんでしょうか。

その可能性は高いんじゃないかな…と予想しています。

それほどまでに、期待できない、期待するのが馬鹿くさくなる、そんな思いです。

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image by: AfriramPOE / Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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