ゴールデンウイーク明けにやってくることが多いと言われる5月病ですが、どんな状態になってしまうのか?なったことがない人は想像ができないと思います。今回はメルマガ『バク@精神科医の医者バカ話』の著者で、現役の精神科医・内科医としての実績を持つバク先生が、誰もがなる可能性のある5月病について話しています。(この記事は音声でもお聞きいただけます。)
5月病ってそもそもなんじゃい
みなさんこんにちは!バクです。ゴールデンウィークはいかがお過ごしだったでしょうか?今年はマスクが解除されたり、コロナの分類が変わるなどがあり数年ぶりに帰省や遊びなどを満喫された方も多いのではないでしょうか。
私は特に普段通り(祝日も追加で)お仕事をしていました(働けど働けど……)。
今回はそんなゴールデンウィーク明けに相談が増える「5月病」的なアレの解説をしたいと思います。
なんとなく聞いたことがあるような無いような「5月病」ですが名前の通り「5月に不調になる」状態を指すことが多いですが病名ではありません。
日本人の多くが4月から新学期や新年度を迎え、4月から新しい環境に身を置くことになる人がとても多いと思います(9月も異動の時期ではありますが、ほとんどが4月に集中してるんじゃないかと?)。
新しい環境、新しい仕事、新しい教室……第一志望でもそうじゃなくても気持ちが切り替わって「よし!ここから頑張るぞ!」と心機一転気合が入るタイミングでもあります。
問題は「新しい環境」で「気合が入る」状態です。
人間は自分の周りの環境が変化するとかなり脳での消費エネルギーが増えます。例えば引っ越しなどはストレス指数で見ると……ふぁ!?20(100点満点で)しかないやんけ!?(注意:これは30年前の統計データなので、最近のものだと引っ越しは45点くらいになっています。なんでや)
それより結婚の方がストレス指数50もあるのか……結婚は人生の墓場とはこのことか……と他所に目が行きがちですが、よく見ると退職で45、仕事の再調整が39、その他転職や仕事上での責任の変化などでもかなりストレスを受けることがわかります。
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3月4月は退職や転職、新しい職場や役職に就いたりとこれらのストレス指数の高めなイベントが目白押しになっています(個人的には別のストレス指数でもクリスマスってストレスなんや……とそっちにビックリしてます)。
そんな中最初は「慣れない環境」に人間は期待と興奮と緊張でなんとか適応します。ここで適応し切れない人が第一次適応障害として4月早々しんどくなり始め、受診にこられたりします。正直向いてない仕事に無理やり長く勤めようとしても、メンタルが折れた時に回復まで時間がかなりかかりますから早めに「あ、これ向いてないわ」と思ったら受診する前に仕事をさっさと退職したほうが正直その後元気に過ごせると思いますが基本的に受診にこられる人は真面目なのでそんなことは考えません。
「4月から働き出して……まだ10日なのに……」と診察室で泣き崩れる人もおられますが人間のメンタルは3日もあればへし折れますので気にしないで欲しいなと思います。
で、5月病です。
5月病は4月に折れなかったものの、期待と興奮と緊張が緩み出してから一気に襲ってくるしんどさになります。例えば第一志望の難関大学に合格したとか、憧れの仕事に就くために故郷を離れて就職したとか。そんな感じで実家を強制的に離れた人が4月からの環境の激変に色々その人なりに適応していたとしましょう。いきなりの一人暮らしは新しい環境だから最初は寂しさよりも開放感とか自由とかそういうものにばかり目が行きがちです。でもメンタルは地味にボディブローを食らっています。
そんな状態に気付かずにゴールデンウィークに帰省をしたとしましょうよ。ああ、故郷の訛り!故郷のソウルフード!オカンの小言はうるさいけどゴロゴロしてたら出てくる飯!地元に残った友人と今何をしてるのかをちょっと盛り気味に報告しあったり!そんな数日を過ごしている間にゴールデンウィークは終わります。
帰りの電車や飛行機の中ではまだ「うわ~1ヶ月しか経ってないのに懐かしかったかもw」程度だった望郷の気持ちが、一人暮らしの自宅に帰って誰もいない部屋に向かって「ただいま」とか言ってしまった瞬間に一気にホームシックになる人もいます。
いやいや、一人暮らしは気楽だよ、大好き!自由!と思っていても、ふと気付くと眠りが浅くなったような気がしたり、皆と囲む食卓を思えば食事の量が落ちていたり(面倒くさくて一食抜いたり)……となってくると通学通勤へ向かう足取りが重たくなってきます。
このタイミングで発症する適応障害を昔から「5月病」と言ってきました。つまり「5月病」というのは「5月に発症する適応障害」ということになります。
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5月病ってどうしたらいいの
今これを読まれている人の中にはドキッとした人もいるかもしれません。配信のタイミングも丁度ゴールデンウィーク明けの水曜日。私はTwitterでもよく言っていますが週5フルタイム勤務土日休みの勤め人にとっての水曜日って一週間で一番しんどい曜日だと思うんですよ。この配信日は私のまぐまぐ配信開始後最大のストレス指数の高い水曜日だと確信してます!どうでしょうか。
特に上記のように生活条件が大きく変わった人だけではなく、同じ学校職場に継続して在籍していても下に後輩が発生したり、上司が変わったりしていることも多い時期です。気に食わない後輩だけならまだしも、変わった上司が最高に性格が合わない場合かなりストレスはかかります。
ストレス指数としては「人事異動」「労働環境の変化」「同僚との人間関係」「上司とのトラブル」という順で50点台をつけているサイトもありました。めっちゃストレスやん!同僚との人間関係。上司とトラブル起こすより高いんかい!って思いましたけど、冷静に考えたら上司といるより同僚といる時間の方が圧倒的に長いでしょうしストレス指数としては高くなるのかもしれませんね。
因みにどうやってストレスを点数化してるのか各サイトを見ていてもちょっとよくわかりませんが、「ストレス指数」と検索してみて色んなストレス指数を見てみると「あ、自分思ってたよりしんどい環境に今いるんやな……」と納得できることも多いんじゃないでしょうか。
ここで最初の見出しに戻りましょう。
5月病ってどうしたらいいの?
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まずは原因をストレス指数表を見ながら突き止めることをお勧めします!
ズコー!ってなられた人もいるかもしれませんが、私は著書や連載で常に同じことを言い続けています。それは「自己の客観視」です。
自分が今何に対してしんどいのか?を知らずして対策は取れません。なので5月病かも……と思うような日々をこの数日過ごしておられる方は是非自分のストレス源を探してみましょう。
そこで「あ、これがもしかして今のストレス源なのかな?」という心当たりを見つけられたら5月病はもうほぼ問題解決です。
例えば「4月から入ってきた社員(年次的には同僚)に仕事の引き継ぎをしている最中なんだけど、やたら相手が気に食わない(言い方が嫌味ったらしいとか、顔が生理的に嫌い(こればっかりはもうマジでどうにもならない)とか、教えてるこっちに仕事をあわよくばやらせようとするズルイヤツだったりとか……)からめっちゃしんどいんだな?」と気付いたら気に食わないポイントに焦点が合わないように目を逸らしながら仕事を引き継ぐように工夫したら大分ストレスは減ります。
上司がこれまた嫌(どんなかは上を参照)な人でも同じように全てを直視しないで気持ち寄り目な視界(ピンぼけ)で物事に対応したらなんぼかマシになるでしょう。
実家が恋しいならスマホの待受を家族や愛しいペットに変えたり、帰宅してから通話してみたり、なんなら通話しながらご飯を食べるようにしてもいいと思います。
詰まるところ原因不明な時点で対策が立てられないから何が原因で今自分がしんどいか?を早く見つけた方がいいぞ!という話です。
でも何が何だかわからないししんどい……もう疲れたよパトラッシュ……みたいな状態になってしまっていたらどうしましょう。ーー(メルマガ『バク@精神科医の医者バカ話』2023年5月10日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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