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若者の失業率が20%超えの中国。習近平が本気で恐れる「天安門事件の再来」

天安門事件が起きてしまった6月4日まで今年もあと1週間あまり。あれから34年の月日が経過しましたが、中国当局は今、その再来を高い緊張感を持って警戒しているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、その事情を詳説。習近平政権にとって「最大の脅威にして敵」が中国人民である理由についても併せて解説しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年5月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

近づく6月4日。若者の失業率20%超の中国で習近平が本気で恐れていること

中国、若年層の失業率が20%突破-過去最悪更新し危険水域

中国国家統計局が5月16日に発表したところによると、4月に中国の若年層の失業率が20.4%となり、過去最悪を更新しました。

労働人口の減少にもかかわらず若者の失業率が悪化している背景には、新型コロナによる経済の低迷と、少子高齢化が響いているとのことです。

自由時報の記事では、新型コロナ前の若者失業率は9.9%程度に過ぎなかったが、中国政府が行った厳しいゼロコロナ政策により多くの中小企業が倒産し、失業率を押し上げたとしています。

5月20日(520)は、「ウォアイニー」(愛してる)という言葉と発音が似ているということで、中国では結婚する日として人気がある日ですが、昨年に比べて入籍するカップルが大幅に減少し、広東、復権、四川では前年比30%以上、貴州省は50%以上も減少したとのことです。

中國青年失業率飆破20%》共同富裕破滅 中國網友稱存款剩5元

また、別の自由時報の報道では、中国における製造業の低迷、そして外国からの投資が激減していることが若年層失業率の悪化に繋がったと分析、失業状態は公式発表数字よりも悪い可能性が示唆されており、20歳から30歳の中国の若者へのインタビューでは、「寝そべって(躺平=タンピン)いたほうが楽だ」という声が多く聞かれたそうです。

中國青年失業率飆高 畢業生嘆「躺平還比較容易」

ここ数年、中国では「躺平(タンピン)主義」「躺平族」という言葉が流行していました。「躺平(タンピン)」とは「寝そべる」という意味です。日本語では「寝そべり主義」「寝そべり族」などと訳されていますが、中国の激しい競争社会(内巻といいます)に疲れた若者が、出世や住宅購入、結婚、出産などを放棄して、無欲なライフスタイルを貫くことを意味します。

【関連】夢も希望もない。いま中国で激増中の「寝そべり族」「ネズミ族」とは?

自由時報の記事では、建設現場で人材の需要が供給を下回っているため、給料がどんどん安くなっており、仕事が見つからない若者の割合は実際には40~50%にもなっているだろうという声を紹介しています。

今年、中国の大学卒業者は1,158万人で、6月以降の就職状況はさらに厳しくなると見込まれています。長期失業している青年は、「啃老族」になるといわれています。「啃老族」とは、年老いた親のスネをかじる若者のことです。

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習近平政権が始めた「精神の洗礼」キャンペーン

先週のメルマガでは、中国からアメリカに密航する中国人が増えていることについて解説しましたが、中国から逃げ出す隠語として「潤」という文字が流行しています。これは「潤」の発音が、英語の「run」に近いことからきています。いかにして中国から脱して、アメリカやその他の国に移住して潤うか。そうしたことを研究する「潤学」というものが、いま中国で流行しているのです。

「この国に未来はない」 いま中国からの“脱出”を意味する「潤学」という言葉がホットワードに
【関連】TikTokで「密航ルート」を検索。いまアメリカに密入国する中国人が激増している理由

また、中国の若者のキーワードについては、「躺平」から「倦怠」へと移り変わりつつあるという指摘もあります。これはソウル生まれでドイツ在住の社会思想家、韓炳哲(Byung-Chul Han)の著書で中国でも翻訳され好評を博している『倦怠社会』から来ているもので、中国の若者に不透明な倦怠感がまん延している現状をえぐり出しているといいます。

現代中国社会のキーワード、“内巻”“躺平”の次は“倦怠” 菱田雅晴

習近平政権は「共同富裕」(みんなで豊かになる)というスローガンを掲げていますが、これが完全に破綻していることは、若者たちは体感しています。しかし独裁体制ですから政権批判も許されず、現状を変えるために「民意」を政治に反映させる仕組みも中国にはありません。それだけに、若者たちには諦念や倦怠感が蔓延しているわけです。

このような状況下、中国当局が警戒しているのが、若者の政権への不満の高まりです。SNSなどを使いこなす彼らが連帯し、政権に歯向かうことを恐れています。ゼロコロナ政策に反対した「白紙革命」も、若者たちが主導したものでした。

そこで中国の警察は最近、暗号化通信ソフトの取り締まりを強化しています。「密聊(秘密の会話)ソフト」として、テレグラムやWhatsApp、Twitter(ツイッター)などを名指しし、情報漏洩や犯罪の温床になると警告。そのうえ、福建省福州市、四川省大洲市、海南省、青海省、広西チワン族自治区賀州市、内モンゴル自治区通遼市、甘粛省蘭州市などでは、親が子どものスマホにこれらのソフトが入っていないかをチェックし、発見した際には最寄りの公安当局に子どもを連れて行って、犯罪に手を染めていないかどうか調べるよう、親に対して勧告しているのです。

中國打撃加密通訊軟體 要求家長帶孩子到警局受訊

表向きは子どもの犯罪抑止のためとしていますが、明らかに若者たちが連帯したり、あるいは海外の人権派団体などと連携することを警戒しているのです。

一方で習近平政権は、ゼロコロナ政策による信頼低下を挽回するため、今年3月から大規模な「習近平思想」学習キャンペーンを展開しています。学校、病院、銀行、裁判所、警察、軍隊、宗教の場で、習近平思想を学習することを推し進め、これを「精神の洗礼」だと強調しています。

模仿毛澤東挽形象 習近平發起大規模「學習」和「調研」運動

こうした行動は、習近平の危機感の表れとも見てとれます。経済の低迷や失業率の悪化により若者の不満が高まっており、それを押さえるためにスマホソフトの検閲と、習近平思想の徹底をせざるをえない現状があるわけです。6月4日が近づいていますが、天安門事件の再来を心底警戒しているはずです。

習近平政権、そして中国共産党にとって、最大の脅威であり敵であるのは中国人民です。人民をいかにして押さえつけるかということが、中国共産党の「核心的利益」なのです。

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