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「自分たちは迷惑な存在」日本の子どもを萎縮させる大人たちの大問題

厚生労働省は昨年1年間に生まれた子どもの数が、統計開始以来初めて80万人を下回り、77万747人だったと発表。これまでにもさまざまな子育て支援策が取られてきましたが、少子化に歯止めはかかっていません。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』で、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさんは、日本に蔓延する「ある意識」が子どもを萎縮させているとする証言を紹介。その意識を持って大人になると、次世代を作ることに積極的になれないと指摘し、手当てや子育て環境などとは別の、対策し難い問題点を浮き彫りにしています。

日本の子どもは自分のことを「迷惑な存在」だと思っているらしい

日本で電車に乗ったり、商業施設に行くと、目立つのが、家族連れが少ないことです。土日や休日にはいるにはいるのですが、大抵母子(か父子)が多く、どこみても「家族づればかり」の東南アジアとはちと異なります。

そして、「静かにしてね」「他の人の迷惑にならないようにね」と諭している姿を見かけます。あー私も子育て中はこうだった……と、懐かしく思い出しました。が、子どもをガミガミ怒りすぎたことは、あんまりよくなかったと反省しています。

「迷惑をかけない」が至上命令になるとどうなるか?

「公共の場所に、親子の存在は迷惑」意識があるんではないか、と思っていたら、実際にNHKの調査に出ているようなんです。
日本の子どもは、自分のことを「迷惑な存在」だと思っている…? 1万4000の「子どもの声」から見えたこと(現代ビジネス編集部) | 現代ビジネス

全国の10代、20代から集まった1万4000の声をじっくりと読んで印象的だったのは、子どもたちが『自分は親や大人に迷惑をかけてしまっている』、あるいは『迷惑をかけてはいけない』という意識を強烈に抱いているように見えることでした。

そりゃそうなるな……、と思うのです。親にずっと「迷惑かけるな」と言われてきて、そもそも、子どもは迷惑をかける存在ですから。

少子化の中、肩身が狭い親子の姿が見えてくるようですが、政府が子どもを奨励する一方で、子どもが「自分は迷惑な存在だ」と思いつつ大きくなると、自己効力感(自分はできる、という気持ち)が下がり、いろいろと問題が出てしまいます。さらに、「子ども=迷惑な存在」と思ったら次世代を作ることに積極的にはなれないでしょう。

これは、海外在住者には今ひとつ見えない現実かなと思いました。マレーシアでも少子化は進んでいると言われますが、モールもレストランも、どこもほぼ家族づれがいっぱい。「迷惑かける、なにそれ?」状態です。

だからか、マレーシアに来た日本の親からは(特に幼児を抱えた親)、「子育てが楽になりました!」と聞きます。社会にもう少し、余裕があるのです。外遊びする環境とか、公共サービスとかは日本の方が整っているんです。が、圧倒的に違うのがソフト面、というか、人々の思考だと思います。

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「ちゃんとしなきゃ」が子どもを苦しめていると思う

日本に来て感じるのは、「正しい情報」が溢れすぎていること。そして、学校現場でのマナーやルールが、謎にどんどん厳しくなっていることです。言いにくいけど、みんな真面目すぎるのです。

最近では黙食やら、「ドリルは汚してはいけない」ルールやら、新たに登場したルールも増えています。私が子供の頃の日本、こんなに「ちゃんと」してなかったです。綺麗になったのはいいんだけど、その分、子どもには生きづらい。

海外から日本を見ていると、帰るたびに新たなルールが増え、息苦しさがましています。親も子供も大変そうです。以下はNHKのスタッフの方の感想です。

とくに後半の10年、子育て中の親の悩みに答えるタイプの番組を担当していて感じたのが、すごくたくさんの親御さんが「正しい子育て」を「立派な親としてやらなくてはならない」という意識を強く持っているということです。

 

子どもや若者にまつわる大型企画をやるということで、教育情報番組や子ども向け番組をつくっているディレクターやプロデューサーが集まって話したのですが、メンバー全員が共通して肌で感じていたのが、「子どもたちの自己肯定感の低さ」でした。

 

ディレクターやプロデューサーは取材現場で、多くの子どもたちが「自分は役に立たない」とか「自分はこのままでは、立派な大人になれないのではないか?」とか「どうせ自分なんか…」といった感覚を抱いていることを強く感じていました。

これやばいですよね。「どうせ自分なんか……」と思う人ばかりの国。今やってる教育学ではこの「どうせ自分なんか」を減らし「自己効力感」を持たせることが、大きなテーマです。この「自己効力感」が学習に良い影響を与えることは、よく知られているんです。インクルーシブになると、ルールはどんどん減っていきます。ルールにこだわる東アジアの国では逆行しているわけです。

各種の調査にも日本の子どものこうした現状はよくあらわれていると思います。たとえば、内閣府の調査では「自分は役に立たないと強く感じる」と答えた15~19歳が35.1%に達しています。ほかにも、2020年度のユニセフの調査によれば、日本の子ども・若者の「精神幸福度」が先進38ヵ国中37位」でした。

これ本当に、なんとかした方がいいと思うのです。これで少子化が進まない方がおかしい。かといってどうしたら?と思うと日本国内での答えが難しいです。少なくとも私の知識の範囲では。

この10年で、外から見ていると、なぜかどんどん「ちゃんと」が加速する日本社会。「ちゃんと」した学校で「ちゃんと」した子どもが増えていき、強化される価値観の第一が「迷惑をかけないこと」なので、ものすごく難しいだろうと思います。

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image by:Shutterstock.com

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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