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完全に孤立した独裁者プーチン。敗戦濃厚で加速する国際社会の“ロシア離れ”

ついに開始されたウクライナ軍による大規模な反転攻勢。西側諸国から大量の武器供与を受けたウクライナの優勢を予想する声もありましたが、想定を上回るロシア軍の抵抗に思わぬ苦戦を強いられていると伝えられています。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、最新の戦況を詳しく解説するとともに今後の展開を予測。さらにロシアの敗戦を見越した国際社会の動きを紹介しています。

ウクライナの本格攻勢に徹底攻勢の露軍。プーチンは核を使うのか

ウ軍は、形成作戦を終え、本格的な攻勢のフェーズに入ったようである。3つの地域で攻勢に転じている。バフムト、ドネツク西部、ザポリージャ東部であり、特にザポリージャ東部がメインのようである。

ハルキウ方面

ベルゴロド州ノバヤ・タボルジョンカとシェベキノに親ウ派軍団がウクライナ領に撤退した。

ロ軍は、大規模な増援部隊をシェベキノやノバヤ・タボルジョンカに送ってきたことを確認して、撤退した。

この侵攻目的がロ軍の分散を謀ることであり、目的は達したことになる。

バフムト方面

ウ軍はバフムト北西郊外で、M03号線を市内方向に進撃して、ロ軍は潰走して、市内に向かっている。M03号線の北側にもウ軍は攻撃して確保している。ウ軍戦車がバフムト方面への攻撃でロ軍を断ち切って前進を続けていると、シルスキー司令官は言う。

ベルキウカ貯水池に向けて攻撃してるウ軍は、ベルキウカ市内に到達して、市街戦になっている。一部ウ軍部隊は、パラスコビウカに向けて攻撃中である。

ロ軍はこの地域に増援を送っているが、ウ軍戦車の前進を止められないでいる。

トリボボバシュリフカにいるロ軍は孤立する危険性があり、撤退するべきであるが、オリホボバシュリフカに攻撃して、ウ軍に撃退されている。

ベルキウカに向かうウ軍の一部が、ヤヒドネに攻撃をしている。

バフムト市内のロ軍は攻撃なしで、防備を固めている。

バフムト南西のウ軍第24と第3突撃旅団はクリシチウカやアンドリウカ方向に攻撃しているが、とうとう、クリシチウカからバフムトの連絡道路を切断した。このため、ロ軍は、ウ軍攻撃部隊にテルミット焼夷弾を撃ってきたが、野原では効果が薄いようである。

毎日1km程度の前進をしているので、バフムト包囲が近いようである。

ボハレダラ方面

ボハレダラ南東のノボドネツクをウ軍は奪還して、オキチャブルスクに向けて攻撃をしている。もう1つがウ軍はブラホダトネを奪還している。

そして、ドネツク州の州境に近いヴェリカ・ノボシルカ付近のロ軍の防衛線が、およそ約20kmが後退したというが、攻撃開始は6月4日であり、1週間での成果である。しかし、今のところ、ここがメインではないようである。

しかし、まだ、メイン部隊が投入されていないことで、まだ、分からない。

ザポリージャ方面

ロ軍陣地が準備している3重構成防御網のザポリージャ東部にウ軍は攻撃した。このため、大きな損害を出している。ウ軍のザポリージヤ攻勢に伴い失った兵器は、現在のところ

であり、防御の厚い所を攻撃するので、損害は出る。まだ、初期段階で、この被害であるから、今後も大きな損失になることが確実である。

放棄車両は、砲撃でやられた車両のそばを通り、地雷でやられたが兵員装甲車は、対地雷対策があり、兵士は生存している。最初の部隊は、地雷原突破で地雷除去後で塊になって進撃中に砲撃を受けたことが原因である。しかし、レオパルド2の1両はロ軍戦闘ヘリの対戦車ミサイルを受けた可能性がある。

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F-16の供与遅れでウクライナが被った大損失

攻撃地点の1つが、ウ軍はストジョベを南を進行中で、機甲部隊と機械化部隊が進撃している。

もう1つが、リビノピリを攻撃中であるが、ロ軍の踏ん張りでウ軍は陣地を突破できずに、苦戦中。

もう1つが、ノボダリウカの南にウ軍が攻撃して、ロ軍陣地を攻略中。

もう1つは、ロボティネを突破して、市内に入った。ネスチリアンカとコパニはロ軍陣地を突破できていない。

もう1つは、ロワコベに入り、夜襲をかけて市全体を奪還した。

最後に、オリヒウから東に向かったウ軍であるが、マラトクマテから南東に向かったが、8日、逆襲に合い、電子戦でレーダーをかく乱され、無人機を無効化され、ウ軍防空部隊を叩かれて、砲撃着弾点に入ったところで砲撃に会い、装甲車両を4両、レオパルド2を2両、地雷除去車2両を失った。

それと、戦闘ヘリがスティンガーの射程外から対戦車ミサイルを打ち、もう1両のレオパルト2戦車が被弾して、乗員も戦死したようである。砲撃と地雷損傷のブラッドレーの乗員は逃げられたようだ。このため、2個小隊の損害が出た。

8km先の多数の戦闘ヘリからミサイルが飛んできた。ウ軍の想定外の数であり、電波妨害のレベルも高く、防空システムのレーダーを無効化されたようだ。ドローンの運用もできなかったようだ。

このため、部隊を後退させたようで、この方面での第1攻撃は失敗であったことになる。プーチンも「ウ軍を撃退した」と述べている。

その後9日は、この陣地を迂回して、夜間攻撃などでノボカリウカ、ノボクロフカ、ベルボブ付近で、激しい戦闘になっている。

今の所、この方面がメインようであるが、一番難しいコースであり、ここを進むと、トクマクからベルジャンスクのルートになる。

ロシア側から見て、ザポリージャ戦線でウ軍の車両約50両が前進してきているとの報告がある。

このため、ロ軍は、増援部隊として、第10軍団の9個機甲旅団を送ってきている。ポロフィーに到着したという。

このため、戦車戦になり、大激戦になることが確実である。

ウ軍は航空優勢がなく、攻撃するのでロ軍戦闘ヘリの待ち伏せ攻撃に合い被弾した。これはF-16の供与が遅れて、損害が大きくなることは事前にわかっていたが、それでもウ軍に大きな損失を与えている。

もし、F-16数十機のエアカバーがあれば、ロ軍戦闘ヘリなど前線から数十km以内に近寄れなかったのですが、残念ですね。

トクマクは鉄道の拠点であり、トクマクを奪えば、ロ軍の東部からザポリージャやヘルソン南部への補給を断つことができる。トクマクの奪還は大きいことになる。よって、ロ軍も全力で反撃してくる。

この状況で、プーチンは9日、ウ軍の大規模な反転攻勢が「間違いなく始まった」とし、しかしロ軍の応戦によりウ軍は「どの戦線でも目標を達成できていない」と強調し、撃退に自信を見せた。ウ軍は予備兵力を投入し、反攻が続くとみて兵器増産を急ぐと表明。

また、攻勢をかけるウ軍に、ロ軍の3倍を上回る「著しい損失」を与えたとした。

しかし、「確かに現代的な兵器が足りない」と述べ、ロ軍に高精度のミサイルや新しい戦車などが不足していることも認めた。

一方、英国防省は10日、過去48時間に同国の南部で大規模な作戦を実施し、「いくつかの地域では前進し、ロシアの第1防衛線を突破した可能性が高い」とした。

ゼレンスキー大統領も10日、「ウクライナで反攻と防御の軍事行動が取られている」と述べ、ロシアに対する反転攻勢を開始したことを初めて認め、作戦に自信を示したが、一方で「どの段階にあるかは明言しない」とも述べ、作戦の詳細には言及しなかった。

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証明されつつあるロシア軍のダム破壊

カホフカダムが、6月6日に破壊された。ウクライナ保安局は9日、カホフカ水力発電所のダムをロシアの「破壊工作グループ」が爆破したことを証明する通話を傍受したとし、証拠とする1分半の音声データを投稿。2人の男がダム破壊についてロシア語で話し合っている。

また、米当局者は、赤外線センサーを搭載した衛星が大爆発と一致するレベルの熱を検知していたという。

さらにノルウェーの研究財団によると、ルーマニアの地震観測所のデータは爆発があったことを示しており、ダムが決壊したという報道と一致するタイミングという。

ダム破壊には内部からの爆発が必要と米構造専門家は言うので、どんどん、ロ軍が破壊したことが証明されつつあるようだ。

このダム破壊で4万5,000人が避難必要となっているが、ウクライナ側の住民は避難ができるが、東岸のロシア支配地オレキシの住民の避難が、ロシア占領当局の外出禁止でできない事態になっている。

その上、ロシア非常事態省は、ロシア占領地ヘルソン州オレシキへのボランティアの立ち入りも拒否している。

さらに、洪水中で避難したヘルソン市内の人に対して、ロ軍は砲撃をしているため、少なくとも2人が死亡し、9人が負傷した。ウ軍はロシア占領地オレキシの住民の避難も進めているが、砲撃があり苦渋している。

今後、このダム破壊で、クリミアやヘルソン南部の農業地帯に水がなくなり砂漠化する危険性と、ザポリージャ原発の冷却水が数か月後になくなることが心配である。

このダム破壊で、ザポリージャ戦線での反攻に合わせて、ウ軍は渡河作戦を計画していたが、当面渡河ができなくなるが、10日も過ぎれば水は引くので、その時はロ軍陣地もなく、前線突破ができることになり、ウ軍はザポリージャの前線より、こちらの攻撃の方が成功率が高くなる可能性もある。

その上、ドニプロ川の渡河はできないと、ヘルソン州に展開するロ軍をザポリージャ州に回すので、狙い目ではある。

また、キエフ市長クリチコは、「大型飲料水タンク、フィルター、食料キットなど、1億フリヴニャの量でヘルソン地域への財政援助の割り当てに関する決議案を提出するという。

日本も約7億円の被害援助をすると表明した。赤十字や国連もこの災害に援助をするになるが、一番のネックがロ軍の砲撃であろう。

露軍サイドに配備されていた中国製装甲車

クピャンスク方面で、ロ軍はマシュティフカを占領後、南に攻撃を続けているが、撃退されている。

リシシャンスク方面では、ロ軍は、ビロホリフカへの攻撃を中止した。ここの部隊をベルゴロド州の防衛に転用した可能性がある。

反対に、ウ軍がヤコブリフカに攻撃をしている。ロ軍は撤退しているので、T1302号線を通り、バフムト方向に向かう可能性がある。

アウディーイウカ方面で、ロ軍は要塞とプレボマイスクに攻撃したが、撃退されている。

マリンカに、チェチェン軍を投入して攻撃したが、撃退されている。チェチェン軍に大きな損害が出ている。そのチェチェン軍には、中国製の「タイガー」という11人乗りの装甲車が配備されている。中国はウクライナ侵攻に対し中立の立場を強調していて、ロ軍にもウ軍にも武器を提供していないと主張している。

ロ軍占領地である港湾都市ベルジャンシクでは、連日大規模な爆発が複数回、発生している。8日は燃料備蓄所が爆発・炎上した。

ルハンスク市では、工業地帯をストームシャドーで攻撃されて、軍車両の修理工場が爆破された。

ロシアのウファでは鉄道駅付近で火災が発生、約60立方メートルの燃料が燃えている。

逆に、10日朝未明のロ軍によるウクライナへのミサイル、ドローン攻撃で、ウ軍は巡航ミサイル6発中4発、イラン製自爆ドローン16機中10機の撃墜を報告した。キーウの防空は相当なレベルに達しているものの、他は西側の防空ミサイルも足りず、被害が大きくなっている。

イランで製造されたドローンはカスピ海に面するアミラバードから、ロシア南部のマハチカラに海上輸送され、ウクライナの北部と東部に近いロシア領内の各拠点に運ばれ、首都キーウ(キエフ)への攻撃に使われているという。この輸送経路を空爆しないと、ロ軍の空襲はなくならない。

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ロシア領内攻撃のためミサイル独自開発に動くウクライナ

ウ軍へ米国は、最大21億ドル相当の新たな支援策を発表。パトリオット、防空システム、HAWKミサイルの追加弾薬、砲弾、プーマドローンが含まれる。しかし、一番必要なのが、F-16などの戦闘機である。

ウ軍の大攻勢は、7月のNATOサミットまでには、成果が欲しいが、現時点で見ると、ザポリージャ戦線の突破は、そう簡単ではないように見える。

カナダのトルドー首相がキーウを訪問し、76両のセネター装甲車を含む5億ドルの援助のほかに、カナダがロシアから差押さえたAn-124輸送機をウクライナに引き渡すとのこと。

また、ロシア領内を攻撃するために、ウクライナは、射程1,000キロ以上のミサイルを独自に開発製造するという。西側兵器の供与にはロシア領内への攻撃に使用しないという条件があるためだ。

ロシアの負けを見越し進む各国のプーチン離れ

ベルゴロド州知事が、ロ軍の増援部隊がなく、プリゴジンに援助依頼をしたことが問題視されて、6月4日にクレムリンで会議が開かれ、地方自治体に対する完全な統制が導入されることになった。自由な発言もできなくなったことになる。

プーチンは、ベラルーシへの核兵器の配備は7月7日から8日の準備完了後に開始されると述べた。その代わりに、ルカシェンコ政権は、年間で131.5千トンの弾薬をロシア連邦に渡した。

アイスランドは、モスクワの大使館を閉鎖するとした。国交断絶ということになる。ロシアの負けが近いので、多くの国がロシアから離れていく。

ドイツのショルツ首相は10日、プーチンと近々話をするつもりだと発言した。同時に同氏は、公正な平和の前提条件はロシアによるウクライナ領からの軍の撤退でなければならず、それは理解せねばならないことだと強調した。

ザポリージャでのロ軍の負けが確定したら、停戦交渉になるということである。どこかで、停戦の交渉を開始しないといけない。

ウ軍は、今の兵器を用いてはロシアへの本格的な侵攻はできないことで、ロシアを全面的に負かすことはできないので、ロ軍がウクライナ領内からいなくなれば、停戦となるしかない。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年6月12日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Asatur Yesayants / Shutterstock.com

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