自分たちにとって不都合な発言を行う弁護士や文化人に対し、次々と訴訟を起こす旧統一教会。ワイドショー「ミヤネ屋」でのコメントを名誉毀損として訴えられた紀藤正樹弁護士の裁判でも現在、激しい攻防戦が繰り広げられています。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さんが、そんな裁判の場で起きた「ハプニング」とも言うべき一幕を紹介。教団側が期せずして公にしてしまった分派名を記しています。
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旧統一教会への7回目の質問権行使、「ミヤネ屋」裁判での激しい応酬
1.文化庁から7回目の質問権行使。真摯に対応しない回答は、自らの首を絞めることになるとみる理由
7月26日、文化庁により旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への7回目の質問権行使が行われました。
今回は、組織運営、財産、収支の状況について、また信者団体とされる「信徒会」の活動実態など97項目にも及ぶということです。裁判を提起した際、確実に解散命令の判決がとれるように、証拠固めをしていると考えられます。
一方で、7回もの質問権が行使されること自体、異常な状況だと思います。
当初、教団は文化庁の質問に際して「真摯に対応する」と言っていましたが、蓋を開けてみれば、何度も質問をしなければならない事態になっており、いかに教団が国の質問に対して、真摯に答えていないかがわかります。
解散命令において、組織性、悪質性、継続性が要件とされていますが、7回も質問が続くこと自体、教団の解散命令の可否を遅らせようとする、悪質性がみえていることにつながるのではないかと思います。
今後、解散命令請求の裁判が提起されれば、教団がどう文化庁からの質問に答えたかが明らかになってくると思います。もしそのなかで、質問に正面から答えずに誤魔化そうとするような回答が数多くあったら、それこそ、組織的な悪質性を補完するものとなってくると考えます。
つまり真摯に答えない姿勢を取り続けることで、教団は墓穴を掘っていることになります。
2.共済金を詐取していた疑いで、母親が逮捕。虐待防止を改めて考えるきっかけに
9歳の小学生の娘に食事を与えないどころか、下剤まで飲ませ血糖値を下げさせて入院をさせるなどして、共済金を詐取した疑いで、大阪府大東市の34歳の母親が逮捕されました。
2018年から今年まで同じ症状で40回以上も入院させ、共済金や保険金、合わせて約570万円を不正に受け取っていたとされています。
なんともひどい事件で身体的、精神的虐待を受けていた子供を思うと、とても悲しい思いになりますが、今後、児童虐待をどのように防止していくかを考えるきっかけになってほしいと強く願います。
さて昨年の10月の時点で、匿名の通報メールが、市に2回も寄せられています。
しかし市は容疑者から聞き取りをして、学校からも「娘は難病指定の持病を持っている」との話を受けながらも、入退院の経緯を詳しく聞くことは避けて「虐待ではないと判断した」という報道がなされています。
子供への虐待を防ぐためには、いかにその実態に早く気づけるかが鍵となります。しかし第三者が勇気をもって、異変の前兆に気づいて通報メールをしていますが、それをいかせなかったのは、とても残念でなりません。
一方で、医療関係者が、娘にかかってきた電話から聞こえる母親の異常な言動に気づき、虐待を防いだことは、すばらしいことだと思います。
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3.マインドコントロールされている子供の実態に気づくこと
一般論として、騙そうとする者は外面がよいので、嘘を見抜くのは極めて難しくなります。
性善説で対応していてはダメで、当事者は嘘をつくことを前提で聞き取りをしなければなりません。「隠していることがあるかもしれない」という疑いの眼で接することにより話の矛盾やおかしさに気づけます。
今回の件では、子供を守るために欠けている点が二つあると考えています。
一つは、市は「病気(難病)については繊細な話なので、突っ込まなかった」と説明をしていますが、結局は聞き出せなかったところに原因があると思います。
時折「役所には聞き出すための十分な権限がないから」という話も耳にしますが、理由はそれだけではないと思います。ルポライターとして活動している私は何も権限はありませんが、取材のなかでいろんなことを聞き出しています。
要は、スキルの問題です。
前提として、虐待を受けている子供は嘘をつかされています。そこから真実を見抜く目を持つ必要があります。
私自身、取材などで悪質業者や詐欺師と話しますが、基本、彼らは嘘ばかりを話します。その時、相手の話す100のうち90%は嘘だと思って聞いています。
そこで様々な角度の質問をしながら、相手の嘘まみれの話のなかから、10%の真実を見つけていきます。この作業は大変ですが、質問の仕方で、できないことはありません。
子供は虐待だと気づいていないけれど言葉は発しています。サインは出ているはずです。その声のなかから、真実を見抜くスキルこそが、子供を守るために求められています。
そのためにも、二つ目の「マインドコントロールをされているかもしれない」という視点は大事になります。
報道のなかで「お菓子食べていいですか」と、子供は母親に敬語を使って許可を仰いでいたということです。
児童虐待に詳しい教授は「見捨てられるという不安を慢性的に抱えていたのではないか」という見立てをしています。子供の「従わなければ罰があるかもしれない」という恐怖心は相当なものだったと思います。
こうした母親への絶対服従のなかに、私はマインドコントロールの手法をみました。
強い不安感のなかで、母親に指示を仰ぎ、絶対服従せざるをえない状況で行動していますが、これはまさに、旧統一教会の組織のなかで信者らに行われていたマインドコントロールの状況とよく似ています。
教団では、衣食住(お金を含む)を規制して、相手の行動を支配していきますが、子供も同じ構図での行動を操っています。
外界と接する機会のある大人でさえマインドコントロールにやられます。子供はさらに籠絡されやすくなります。
本当に被害を防ぐことを考えるなら、マインドコントロールの議論を進めなければなりません。
コントロールされている本人にいかに気づいてもらうのか。
被害をいち早く防ぐには周りの目が大事ですので、その兆候にいかに気づいてもらえるのかも考えなければなりません。
宗教2世への組織的教義、思想による宗教的虐待を防ぐためだけでなく、個人の親による身体的、精神的虐待も無くすためにも必要なことだと思います。
二度とこのような事態が起こらないよう、子供たちが受ける虐待に気づける目を多くの人が持てる状況を作る必要があります。
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4.7月26日のミヤネ屋裁判では、激しい言葉の応酬が繰り広げられる
旧統一教会は、読売テレビと紀藤正樹弁護士に対して「2,200万円の請求と謝罪広告」を求めた裁判を起こしています。その傍聴にいきました。
昨年の「ミヤネ屋」(読売テレビ)の放送にて、紀藤弁護士は番組にて、分派団体のなかには、「信者に対して売春させていた事件まである」という発言をしましたが、教団は当法人を誹謗中傷する発言だとして、名誉棄損の訴えを起こしています。
今回の裁判のなかで、期せずして教団の弁護士から、これまで伏せられていた分派名が公にされました。
「名前出しちゃったよ」と思わず、私は傍聴席でつぶやきました。
その名は「ソロモン」です。
教団側は「ソロモン(という団体)は特定していない(知らない)」としています。
しかし紀藤弁護士は「3万双(92年開催の合同結婚式)の信者の方で、お子さん(2世)もいるのですから、調べればわかるでしょう」と反論しますが、教団は「(幹部に聞いても)わからない」としています。
この点、私も疑問を持ちます。教団は3万双など本部会員になった信者は把握しており、徹底的に管理しているはずです。
本気で調べようと思えば、わかるはずだからです。しかしこの先も教団は詳細を調べる様子はないようでしたので、今後、紀藤弁護団の側で証拠をあげながら裁判を進めることになりそうです。
しかし、教団は裏では「ソロモン」の存在を調べ尽くすだろうと思います――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2023年7月28日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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image by: Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で