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さらに掻き立てられる日本への憎悪。中国で成立した「愛国主義教育法」とは

これまでも事あるごとに反日行動を繰り返してきた中国。そんな隣国で、またも反日教育に力を入れる動きがあるようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、現在開催中の全人代で可決された「愛国主義教育法」が日本にもたらしかねない悪影響を解説。その上で、中国に進出中の日本企業に対して一刻も早い撤退を呼びかけています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年10月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

全人代で露呈した習近平政権内の対立と反日教育の再燃

中國通過《愛國主義教育法》 台灣也被點名納入(中国が「愛国主義教育法」を制定、台湾の名もその中に)

10月20日から中国では全国人民代表大会(全人代)が開催されていますが、日本ではこの全人代の常務委員会で李尚福国防相国防相の解任が決定されたというニュースが大きく報じられています。

7月に秦剛外相が解任されたばかりですから異常事態といっていいでしょう。習近平政権内での権力闘争が熾烈化している可能性が高いと言えます。

経済の衰退に加えて、一帯一路もイタリア脱退は確実と言われており、加えて、夏の北戴河会議で習近平主席は長老から「民衆の心が共産党から離れ、統治が危うくなりかねない」と厳しく批判されたと言われています。

習近平、“破滅”への大暴走…「長老からの叱責」と「G20ドタキャン」で中国が向かう「逆ギレの選択」がヤバすぎる!

2022年10月の共産党大会では、胡錦濤前国家主席が会場から強制退席させられる映像が世界に流れ、大きな衝撃を与えました。それから1年、権力中枢の幹部たちが次々と失脚する様子は、反習近平派との熾烈な権力闘争があることを示唆しています。

加えて、かねてから主張しているように、こうした政治的、経済的不安定さを覆い隠すために、中国では外敵をつくり、民衆の不満を外に向かせることを常に行ってきました。福島原発の処理水に対する日本への不当な非難と嫌がらせも、その一環だといえるでしょう。

そして今回の全人代では、もうひとつ大きな決議が可決しています。24日、全人代常務委員会が「愛国主義教育法」を可決し、来年の元旦から施行することが決定されたのです。その内容は、習近平の思想に基づき、青少年への政治や歴史文化などの愛国教育を進めるというものです。そしてその教育は香港や台湾の「同朋」も対象にすることが定められました。

冒頭に掲載した台湾の「自由時報」によれば、「愛国主義教育法」は北京が初めて愛国教育に関する法規制を提案するもので、草案には思想と政治、歴史と文化、国のシンボルと紋章、祖国の美しい川と山、民族の団結と連帯、国家の安全と防衛、殉教者と模範的人物の行いなど5章40条が盛り込まれているそうです。

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また、愛国教育の対象として、香港、マカオ、台湾の人々や華僑なども含まれ、「伝統的な文化的アイデンティティを強化し、愛国心の精神を強調し、意識的に民族の団結と国家の連帯を守る」と主張しているとのこと。

少なくとも香港や台湾には自分たちを「中国人である」とみなす人々は減少の一途を辿っています。2020年の調査によれば、台湾で「自分は中国人」だと考えている人はわずか2.4%しかいません。その一方で67%が「自分は台湾人だ」と考えているのです。

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力と歴史の捏造によって無理やり「中華民族」を捏造し、多民族をもそのカテゴリーに押し込めようとする意図は明らかです。

草案では、愛国教育は中国共産党が主導し、中央および地方当局は、全国または地域単位で関連業務を「指導、監督、調整」する責任を負うべきであり、教育行政部門のほか、文化・観光、ジャーナリズム・出版、放送、テレビ・ラジオ、映画撮影、インターネット情報、文化財などを担当する部門も関連業務を行うべきであるとしています。つまり、あらゆる教育現場、メディア、社会において愛国教育が展開されるということです。

しかも、そのなかで再び反日教育が強調されることが懸念されています。

香港『星島日報』は、香港の李嘉秋行政長官が25日に発表する施政方針演説の中で、香港政府は愛国教育法に対応し、「愛国教育調整チーム」と「中国文化促進弁公室」を設置し、香港で沿岸防備博物館の再建や「香港抗戦記念館」の設立などの関連業務を行い、香港市民、特に若者の対日抵抗戦争の歴史に対する理解を高めるだろうと報じています。

2020年6月に香港国家安全維持法が施行されて以来、香港で急速に反日教育が行なわれるようになったことについては、過去のメルマガでも解説しました。今回の愛国主義教育法の施行により、さらにその動きが加速し、「香港抗戦記念館」なるデタラメな反日教育基地が作られる可能性すらあるわけです。

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実際、10月25日に講演した香港政府のトップである李家超行政長官は、中国が成立させた愛国主義教育法を念頭に、現在の香港海防博物館を香港抗戦海防博物館に改修して抗日戦争の歴史に重点を置くことを表明しました。戦後すでに約80年が経過しているのに、これから再び反日教育に力を入れるというのは、あまりにも時代錯誤でしょう。

香港に抗日戦争テーマの博物館整備へ、さらに強まる中国の「愛国主義」統治

この法律の適用範囲を台湾にまで広げた意図は明らかです。「台湾統一」後に、同様の反日愛国教育を台湾にも行うことを宣言しているわけです。中国にとって、台湾の親日は非常に苛立たしいものです。台湾で反日気運を高め、なんとか日台を離間させたいと躍起になっています。

ただ、台湾では蒋介石時代にも反日教育が行なわれていましたが、それがほとんど台湾人の親日意識に変化をもたらしませんでした。学校でいくら「日本の非道」が教えられても、家に帰れば日本統治時代の体験者が、「本当の歴史」を語るからです。

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一方で、中国大陸では愛国主義教育により、反日気運が高まっていく可能性があります。これまでも大規模な反日デモにより、日本企業の店舗が襲われ、甚大な被害を受けることが何度もありました。

三菱自動車が中国からの撤退を決定しましたが、中国国内での自動車販売不振もさることながら、こうした愛国反日教育が行なわれることへの警戒心が撤退を後押ししたのではないかとも考えられます。「三菱財閥」といえばゼロ戦をはじめとするさまざまな兵器・武器を開発した企業として知られており、愛国反日教育により標的にされる危険性も少なくないからです。

近年、スパイとして摘発される、政治的理由で輸出入が止められるなどのチャイナリスクが顕在化していますが、これに改めて愛国反日教育というリスクが加わるわけけす。日本への憎悪がさらに掻き立てられ、誣告(ぶこく)により日本人が中国当局に逮捕されたり、日本人や日本企業に暴力的行為が加えられたりするケースが増えることが懸念されます。

中国から一刻も早く撤退すべきときなのです。

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